★ ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』 ★
今日は勢いで行く。
久しぶりにベートーヴェンの交響曲を聞き続けていると、改めてこの偉大な作曲家の楽曲に対する緻密な構成力や、主題の扱い方(第1主題と第2主題の関連性・経過句での繋ぎ方、調性の持ち方)などに、う~んこれはすごいと唸らざるを得ない・・・。
このシンフォニーはあまりに有名すぎて、語り尽くされていると思う。
だが、私の思うところをチョコっとだけ書き記しておきたい思う。

〇 『運命』 〇
まず、この曲の場合、この『運命』というニックネームが問題だ。
ここでも、また例のシントラーが出てくる訳だが、この人はとにかく怪しい。

曰く:
シントラーがベートーヴェンに対して、このハ短調シンフォニーの冒頭の4つの音は何を表しているのか?と聞いたところ、「運命はこのように扉を叩くのだ」と答えた。

というものだ。
例の、「ジャジャジャジャーン」(または、「ダダダダーン」)は、運命が扉を叩く音だとベートーヴェン自身が言ったという訳だ。
私も子供の頃からこの逸話を聞かされて、少しも疑うことが無かった。
そのぐらい、この曲からは「運命」と呼ぶに相応しい重みと緊張感を味わった。
しかし、大人の知恵が少しだけ付いてくると、このアントン・シントラー(シンドラー)のイカガワシサが鼻についてくる。
彼の虚言癖や性格の悪さについては、ベートーヴェンも書簡で甥のカールなどに語っているし、後の研究では彼の著書に記された内容の殆どが作り話であり、ベートーヴェンとの筆談ノートすら、自分の著書と折り合いが付かない部分は破棄してしまったことが判明しており、まことにイカガワシイ人物と言うしかない。

そもそも日本では『運命』で通っているが、海外では単に「ハ短調交響曲」が通り相場だ。
(しかし、近年ではドイツですら「Schicksalssymphonie(運命交響曲)」の呼称を使う場合もあるようだ。日本の逆影響なのだろうか・・。)

従って、あまりこの「運命」という呼称に引き摺りまわされない方が良いのだが、だがしかし、山ほどある「ハ短調交響曲」の中でのアイデンティティを確保するよりも、全てのシンフォニーの中での「ただ一つの運命」こそがこの曲に相応しいと思うのだが・・・。

〇 ジャジャジャジャーン 〇
この冒頭の4音、俗に「ジャジャジャジャーン」(または「ダダダダーン」)の鳴らし方が、昔から演奏上では大問題だった。
一頃は、この冒頭の鳴らし方に、指揮者としての技量や見識までが問われるような世情があったほどだ。
このフェルマータ付きの4音X2回を、往年のマエストロはフェルマータを強調して一区切り付ける傾向にあった。
近年では、ここで腰を使わずに素早く鳴らし切る演奏が主流のようだ。
どちらにしても、この序奏なしで提示される第1主題は、旋律なのか?その方が私は気になる。
旋律を和声で装飾していくホモフォニーの概念からすると、これは主題と言えるような音ではないように思える。
にもかかわらず、ベートーヴェンはこの和音をいきなり提示し、展開し、まるでライトモチーフ(正に運命の動機)のようにこの曲中に配置し命を与えているのである。
ここからして新機軸。

だが、ベートーヴェンはこの冒頭だけでも何度も書き直している。
第1楽章を譜面に起こしながら、頭の中で第2楽章を作曲していたという天才モーツァルトと違い、ベートーヴェンは努力の人、このような新機軸を音符にするのにかなりの呻吟を繰り返したのである。
ベートーヴェンの心血が注がれた音楽がこれなのだ。

〇 オーケストラ編成の新機軸 〇
さらに、この曲にはオーケストレーション上も画期的な編成が行われている。
第4楽章に3本のトロンボーンを採用し、ピッコロやコントラファゴットも使用している。
オーケストラでそれらの楽器を使用することは珍しかった訳だが、ベートーヴェン以降そうした編成は、音の華やかさや厚みを求める際に、作曲上も一つの前提になっていくのである。


【ベートーヴェン 交響曲第4番】
交響曲第4番
【ベートーヴェン 交響曲第3番『英雄』】
交響曲第3番『英雄』
【ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第5番『春』 】
ヴァイオリンソナタ第5番『春』



<今日の一枚>
この余りにも有名なシンフォニーには、古今東西数々の名演と言われる演奏が残されている。
フルトヴェングラー、トスカニーニ、クレンペラー、ベーム・・、どれも全て個性的で素晴らしい。
こうした名演の、私はそのほんの一部しか触れたことは無いわけだが、その中でも今日選ぶのはこれだ。
クライバーの名演がSHM-CDで蘇った。音がいい!
クライバーの明快な指揮はウィーン・フィルを力強く牽引しており、鮮烈な音を聞かせてくれる。
■ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第7番 [Limited Edition, SHM-CD]
 カルロス・クライバー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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<推薦盤1>
あまりにも名演が多すぎて、ほんとに推薦盤には迷う。
そこで、最近特にお気に入りの古楽器での運命をお奨めしたいと思う。
フランス・ブリュッヘンだ。
古楽器だけに、音に締りがあって、この曲の緊張感と隙のない構成感を良く表してくれていると思う。
■ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、第5番「運命」
  フランス・ブリュッヘン指揮 18世紀オーケストラ

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2013.06.26 Wed l ベートーヴェン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ベートーヴェン 交響曲第4番 ★
今日は、ベートーヴェンの交響曲の中で、近年一番良く聞く1番、2番、4番の中から4番でいこう!
交響曲第4番変ロ長調 作品60 は、ベートーヴェンの9つの交響曲の中で、オーケストラの規模としては最も小さい(基本2管編成でフルートが一本少ない)のだが、シンプルだからこそベートーヴェンのオーケストレーションの巧みさや、主題の処理の鮮やかさが目立つ傑作だと思っている。

さて、この曲には良く使われるフレーズがある。
曰く:
かのロベルト・シューマンがこの曲を評して『北欧神話の二人の巨人に挟まれたギリシアの乙女』と言った。
二人の巨人とは、第3番「英雄」と第5番(日本では良く「運命」と言われる)のこと。

というものである。
う~ん、なかなか尤もらしい評論だ。
これについて博識な先輩にお伺いをたてたことがあるのだが、その方によるとシューマンがどこでそのような事を言っているのか知らないが、彼の音楽評論集にこの第4番を評して「ギリシャ的」という言葉は見つけたことがあるとのことだった。
そこで、その「ギリシャ的」という解釈について私なりに考えてみたことがある。
ギリシャ的であると言う第一は、やはりこの序奏にあるのではないだろうか。

〇 序奏 〇
第一楽章は変ロ長調なのだが、この長い序奏は変ロ音から始まって、変ニ長調で不気味に進行していくが、今にも変ロ短調に堕ちそうだ。
一歩一歩暗い森の中を手探りで進んでいくような音楽が続く。
調性も不安定で、管の巧みな使い方と弦のピチカートが不安な足取りを表すかのようだ。
その後変イ長調で進むのだが、下属調にも聞こえたりする不安定さは相変わらず残る。
この序奏の部分が、神秘的でいかにも古代ギリシャを思わせないだろうか。
しかも、和音進行は極めて古典的と言っていいドミナント指向なのだ。
私は、シューマンのギリシャ的という指摘の一番嵌る箇所はここだと思っている。
しかも、このシンフォニーの中でこの箇所が一番好きで、色々なCDのこの部分だけを何度も聞いたりするのが大好きだ。
ここは、私としては演奏にも拘りがあって、茫漠とした不安と何が起こるか分からない不確定さがどうしても欲しい。
このシンフォニーの醍醐味が正にこの部分に集約している。

〇 第2楽章はクラリネットの美音 〇
第2楽章Adagio は弦で始まるが、クラリネットが主役で、恐らくハイドンやモーツァルトの時代にはまだ新しかったこの楽器をベートーヴェンは意識的に勉強して活用している。
ここはほんとにどこまで行くのか分からない程終わりのない旋律が続く・・。
これもこの頃では珍しいことだと思う。

〇 指定は無くてもスケルツォ 〇
第3楽章はスケルツォだ。(特に指定はない)
この楽章は速度が速いのであまり気づかないが、モーツァルトも試みた、拍子を敢えて暈す様な曲創りをしていると思う。
舞曲的ではあるが、2拍子っぽかったりもする。

〇 この曲の特徴 止まらない音楽 〇
第3楽章から第4楽章は、勢い付いた音楽は滞ることを知らない。
一気に駆け抜ける爽快さが身上だ。
だから当然、私としては第1楽章で模索していた心象的ターゲットをここで追い詰めて手にするような演奏が欲しいと思うのだ。
ここに迷いがあってはならない。


【ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』】
交響曲第5番『運命』
【ベートーヴェン 交響曲第3番『英雄』】
交響曲第3番『英雄』
【ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番】
ピアノ協奏曲第4番



<今日の一枚>
さて、そのようにベートーヴェンの工夫と創意に溢れたこのシンフォニーを誰で聴くか?
クライバーのライブ盤は素晴らしい!
フルトヴェングラーのやはりライブ盤、も序奏の素晴らしさが特筆ものだ。
しかし、今日はカラヤンで行く。(60年代全集盤)
音がいい! それに2番とカップリングされている(好みというだけ)、ベルリン・フィルがうまい!いかにもドイツの音。若い頃の覇気溢れるカラヤンが蘇る。
■ベートーヴェン:交響曲全集
 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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<推薦盤1>
この第4シンフォニーの推薦盤ということになると、やはりクライバーのライブ盤を避けることは出来ない。
序奏の神秘性と、それに続く連続性のある音楽での躍動感はクライバーならではのものだと思う。
■ベートーヴェン:交響曲第4番 [Import]
 カルロス・クライバー指揮 バイエルン国立歌劇場管弦楽団

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<推薦盤2>
もう一枚となると迷う。
フルトヴェングラーもいい、ベームもいい・・。
ブルーノ・ワルターが端正な音楽を聞かせてくれる。
モーツァルトでも抜群の解釈を温かい視線で私たちに与えてくれたワルターが、この曲でとても良い。
カップリングがハ短調シンフォニーというのも良い。こちらも必聴ものなのだ。
■ベートーヴェン : 交響曲第4番&第5番 「運命」
 ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団

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2013.06.23 Sun l ベートーヴェン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ベートーヴェン 交響曲第3番 『英雄』 ★
今日は、大ベートーヴェンのシンフォニーの中でも中期の始まりを飾る傑作『英雄』を聞こう。
ベートーヴェンは生涯において、全部で9曲のシンフォニーを完成させているが、全てが素晴らしく独創的なアイディアに満ちている。

〇 英雄 〇
さて、この英雄と言うニックネームだが、これに関する逸話は子供の頃から色々と聞いてきた。
一番有名なお話が、

■--------------------------------■
時はフランス革命後の混迷するヨーロッパでのことであり、ベートーヴェンはナポレオンを『自由の戦士』と尊敬していた。そこでナポレオンに捧げるべくこの雄大なシンフォニーを作曲し表紙にはナポレオンへの献辞を記した。
しかし、ナポレオンが帝位に就くと
「おお!奴も所詮俗人に過ぎなかったか。これから、人々を踏みにじり誰よりも暴君になるであろう!」(という感じ)
と叫んで、既に出来上がっていた第3シンフォニーの表紙を破り捨てた。
■--------------------------------■

というものである。
子供の頃より永らく、私の中ではこれが真実であったが、どうやらこれは怪しい・・。
そもそも、ウィーン学友協会に現存する浄書スコア(自筆譜は紛失)にはちゃんと表紙が付いているし、怒り狂って破り捨てた形跡は無い。
代わりに、「ボナパルト」という献辞が消され、イタリア語で加筆されている。
『 Sinfonia eroica,composta per festeggiare il sovvenire d'un grand'uomo 』
(英雄的な交響曲、ある偉大な人間の思い出に捧げる)

非常に短気で一徹であったベートーヴェンらしい過激な逸話だが、実際には「ボナパルト」の文字はかなり感情的に消された形跡があるが、その程度であり、むしろ彼は生涯に渡ってナポレオンを尊敬していたというお話も聞いたことがある。

〇 作曲の経緯 〇
このシンフォニーが作曲されたのは、1803年~1804年なのだが、ベートーヴェンがナポレオンに捧げるシンフォニーを書こうと思ったきっかけは、1795年頃にウィーン駐在であったフランス公使ベルナドット将軍から『ナポレオンに新作を献呈しては』との薦めによるものだという。
だがしかし、この話は例の悪名高い伝記作家シントラーによるもので、作り話ではないかと言われている。
つまり、良く判っていないのだが、ベートーヴェンがナポレオンをフランス革命の精神を受け継ぐ英雄だと信じていたことは疑いなく、そうした気持ちを彼があらわす方法がこの献辞であったことは間違いないだろう。

〇 第3番『英雄』の特徴 〇
さあ、この曲にはベートーヴェン自身第1番、2番からの飛躍的な変化があるのだが、その目立った特長を私なりに挙げると

・冒頭は終結を思わせるトゥッティ2連発
・第1楽章の異様なほど長い展開部
・第2楽章は葬送行進曲
・スケルツォ楽章の確立(第3楽章)
・第3楽章のトリオでのホルン3重奏
・終曲は展開部とコーダを持った7つの変奏曲

〇 第1楽章(Allegro con brio) 〇
冒頭は少しびっくりする。
この主和音2連発は、この後にもう一つしかるべき和音を鳴らせば目出度く終われるものだ。
その後、チェロに第1主題が現れるが、このシンプルな主題はこの楽章の中で手を変え品を変え様々な貌を見せてくれる。
短い第2主題の提示のあと、コデッタを経て展開部に入る。
この展開部が異様なほど長いのだ。
200小節を優に超える展開部では、提示した主題をどんどん展開して行き、まるで永遠に膨れ上がっていくかのようだ。
コーダも第2展開部と言えるほど長いもので、この楽章全体が雄大な量と質を誇る楽章に仕上がっている。

しかし、私はこの楽章はベートーヴェンの腕力でグイグイ進んでいく印象が強くて、葬送行進曲や全体構成の点からは少し平衡感に欠けるような気がしている。
この異様な長さの展開部も、モーツァルトの後期シンフォニーなどと比べると、楽章間のバランスを崩しているようにも感じるのだ。
だが、この力技こそベートーヴェンがハイドンやモーツァルトの影響からの脱皮や、少し前にハイリゲンシュタットの遺書まで書いて尚生還した己の病苦への宣戦布告など、そうした自分を取り巻く殻を破った原動力なのだろう。

〇 第2楽章(Marcia funebre: Adagio assai) 〇
ここはハ短調の葬送行進曲。
ここが何故葬送行進曲なのか?
ナポレオンへの献辞があったからと言って、これを「英雄の死」=ナポレオンの死 と捉えるのは、全体を標題音楽と考えることに繋がっていくことにもなって、少し違うだろう。
私はもっと観念的な「葬送」のように考えている。
第1楽章が「英雄(思想)」の勇壮な戦いを象徴しているとしたら、第2楽章はその戦いには常に(英雄自身や英雄思想も含めて)「死(崩壊)」があるというような観念的な音楽表現。

〇 第3楽章(Scherzo: Allegro vivace) 〇
通常はメヌエットなどの舞曲が置かれることが多かった第3楽章に、ベートーヴェンは第2番のシンフォニーからスケルツォを置くようになっていた。(実は第1番もメヌエットとはなっているが実質的にはスケルツォ)
スケルツォの原意はイタリア語で冗談やおふざけを意味するそうで、日本語ではよく諧謔曲と呼ばれたりする。
音楽で使われる際には、原意を離れて、第2楽章の緩徐楽章と対照的な「テンポの速い曲」「リズミックな曲」を意味しているように思う。
結果的にメヌエットのように舞曲的であったりもする。
この第3楽章にはトリオで、ちょっと珍しいホルンによる3重奏がある。
この為の3本ホルンのオーケストラ編成になっている。

〇 第4楽章(Finale: Allegro molto) 〇
ここは変奏曲形式で、主題と7つの変奏曲からなっている。
2つの展開部とコーダを変奏に含めれば、10の変奏とみることもできる。
この主題は、バレエ音楽『プロメテウスの創造物』のフィナーレ舞曲からのもので、それをベートーヴェンは大変シンフォニックで巧みな変奏曲に組み上げている。


数々の画期的な試みを含んだ、勇壮な曲想のこのシンフォニーは「ベートーヴェンの」というより、全てのシンフォニーの中でも燦然と輝く正に金字塔となった。


【ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』】
交響曲第5番『運命』
【ベートーヴェン 交響曲第4番】
交響曲第4番
【ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番】
ピアノ協奏曲第4番



<今日の一枚>
英雄のベストは何と言ってもフルトヴェングラーだろう。
葬送行進曲は、弦による重く沈鬱な曲想と、フッと救われる様な木管による対比が見事だ。
第1楽章の特徴もフルトヴェングラーならばこその「腕力」がとても魅力的だ。
1952年の録音の割には音質も良い。(スタジオ録音)
■ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1952年録音盤

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<推薦盤1>
私の第1の推薦盤はフルトヴェングラーだが、バーンスタインがウィーンフィルを振った盤も、ある意味素直な音楽創りでいつもの癖が無くて流麗だ。
大きなスケール感をもって、この曲に立ち向かっている好演だと思う。
これは全集にもなっている、バーンスタインのライブ盤。
■ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、「レオノーレ」序曲第3番
 レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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<推薦DVD>
「カラヤンの遺産」と銘打ったDVDがある。
これはベルリン・フィル創立100周年を記念して行われたコンサートの模様を収録したDVDで迫力たっぷりのカラヤン+ベルリン・フィルの熱演が楽しめる。
私はベートーヴェンの交響曲全集もカラヤンのものを良く引っ張り出すが、このDVDもスタイリストのカラヤンが観れる貴重なものなので演奏会気分で音楽に浸りたい時にはこれだ。
■Karajan / Beethoven : Symphony No.3“Eroica” - Jubilee Concert 100 Years 1882-1982 [DVD] [Import]
国内盤は、仲介業者によって値段の吊り上げが行われているため、このインポート盤がお奨めだ。
日本語表示に拘らなければ、こちらが安くてお得だ。

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2013.06.18 Tue l ベートーヴェン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番 ★
さて、今日は大ベートーヴェンのピアノ協奏曲だ。
それも皇帝ではなく、第4番が聞きたい気分。
交響曲でもそうだが、ベートーヴェンという人は奇数番号と偶数番号で曲調に共通性があるように感じている。
奇数番号の曲はおしなべて豪快・豪華絢爛・偉大というイメージな曲が多いが、偶数番号になるとベートーヴェンのセンシティブな面が強調されている曲が多い。
この第4番のコンチェルトも、厳しく引き締まった中にも、ベートーヴェンの柔らかく繊細な部分が表出した高貴な曲になっていると思う。
出来ることなら、一人で部屋に籠り、しみじみ聞きたい音楽だ。

〇 出だしが重要 〇
どの曲でもそうだと毎回言っているような気がしないでもないが、いや、やっぱり第1楽章の出だしはとても重要だ。
この第4番の場合、形式上の顕著な特徴としても第1楽章の冒頭が独奏楽器から始まるという事が挙げられる。
あの印象的なピアノの同音連打(無論和声付き)で始まる冒頭、私はここがこの曲の中でも一番好きだし、CDを聞く際にも一番緊張し括目して聞く箇所だ。
かのドイツが生んだ名ピアニストであるヴィルヘルム・バックハウスもこの第4番を愛し、冒頭の箇所を何度も何度も練習したと述懐している。
しかも晩年残した言葉では、結局満足いく演奏は一度もできなかったとまで言っている。
単純であるが故に、至極困難な同音連打。
そうなのだ、ヴィルトオーソと言われる人ほどシンプルなメロディに慄く。
少ない音で、万感を表現し、人をして感動せしめる程難しいことはない。

独奏楽器が最初から活躍する例は、モーツァルトの記事でも触れた。
モーツァルト ピアノ協奏曲第9番『ジュノーム』 なのだが、曲の繊細さでも共通項があるように思っている。

ベートーヴェン、このおっかない顔の作曲家がこんなにも華奢な指で私たちの胸をノックする、冒頭の同音連打、心して聞きたい。

そして、このピアノの囁きにオーケストラが応えるのだが、ここがまたいい!
ト長調に対してロ長調に転調しているのだろうか、転調効果抜群である。
ここがこの曲のありようを語り尽くしている。
つまり、独奏ピアノとオーケストラが親密に内省的な会話を全曲に渡って繰り広げるのである。

〇 決然としかも繊細に 第2楽章 〇
ここは弦による決然とした始まりに背筋が伸びる。
それを受けて、ベートーヴェンとしては少し珍しいかもしれない程の繊細で瞑想的な応答をピアノが演じる。
ここはピアニストのロマン性が遺憾なく発揮される箇所だと思う。

 爽やかに 第3楽章 〇
宙を漂っていた魂が己の身体に戻ったかのように、明るいメロディに乗って爽やかな会話が始まる。
しかし、時に密やかに、時には晴やかに、メリハリのある展開でベートーヴェンやはり巧みだ。


【ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』】
交響曲第5番『運命』
【ベートーヴェン 交響曲第3番『英雄』】
交響曲第3番『英雄』
【ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第5番『春』 】
ヴァイオリンソナタ第5番『春』




<今日の一枚>
今日はこの曲の美しさを教えてくれた名盤、フリードリッヒ・グルダがホルスト・シュタイン+ウィーン・フィルと組んだ盤を聞きたい。
全体に、グルダのピアノがとても詩情に溢れて素敵なのだが、私が一番お気に入りはやはり第1楽章冒頭の入りの部分。
バックハウスが到達しえなかったセンシティブなポエムにグルダが行き着いたのではないだろうか。
それから第2楽章がまた素晴らしい。
記事にも書いた、この曲の持つ精妙な感興を見事に表現していると思う。

■ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番ト長調 作品58
        ピアノ協奏曲第3番ハ短調 作品37
 フリードリッヒ・グルダ(P) ホルスト・シュタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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<推薦盤1>
グルダと同様、ピアノとオーケストラの絶妙な会話を高貴に歌い上げているのがバックハウスだ。
バックハウス本人が、この曲が一番好きだと言っているように、この曲に対する思い入れのすごさが冒頭に聞ける盤だ。
イッセルシュテットの指揮がまたウィーン・フィルの艶やかで美しい特性を良く引き出している。
抜群のハーモニーだ。

■ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番・第5番
 ヴィルヘルム・バックハウス(P)ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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<推薦盤2>
卓越したテクニックと透徹感のあるピアノ、ポリーニのベートーヴェンも素晴らしい。
特にこのベームとの旧盤が私は好きだ。
時に冷たい様な印象も抱くのだが、厳しくリリックに歌う第4番、これは一聴の価値ありだ。
ポリーニが単なるショパン弾きではない証でもある盤。
■ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4&5番《皇帝》
 マウリツィオ・ポリーニ(P)カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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ポリーニが若い!

2013.06.05 Wed l ベートーヴェン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第5番『春』 ★
ドイツが生んだ、というか地球が生んだと言った方が良い程の大作曲家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。
本日は、そのベートーヴェンの「ヴァイオリンソナタ第5番ヘ長調Op.24『春』」を聞いてみよう。

〇 春 〇
この頃、春の音楽を聞いてきたので、やはりパスできないベートーヴェンに手を伸ばした。
言わずと知れた、あの音楽室の後ろに超おっかない顔の写真が貼られていた筈の大作曲家。
あの写真、とにかくおっかなかったですよね。
あんな顔してますが、結構明るい旋律も勿論生み出しています。
この『春』とネーミングされたヴァイオリンソナタもその代表格。
大ベートーヴェンが残した最も美しい音楽は「第九の第3楽章」、あのアダージョだと思っているし、明るさの最大はこのヴァイオリンソナタだと思っている。
特にその第1楽章。

〇 ヴァイオリン・ソナタ 〇
ベートヴェンのヴァイオリンソナタは全部で10曲残されている。
その中で、最も有名な曲は文句なく第9番イ長調「クロイツェル」 Op.47だろう。
私は、クロイツェルソナタが全てのヴァイオリンソナタの最高峰だと思っている。
しかし、一番好きなヴァイオリンソナタは『春』の方だ。

〇 スプリング・ソナタ 〇
この曲のネーミングの由来について確かな記憶はない。
しかし、この第1楽章の冒頭を聞けば、「ああ、なるほど春だ」と思うだろう。
多分、この愛らしい旋律故に誰とはなしに「春」と呼ばれるようになったのではないか?
そうそう、ジュリエッタ・グィチアルディさんへの恋心があるのでは?なんてエピソードも思い出す。
このスプリング・ソナタは1801年頃の作曲と言われているので、あの有名なハイリゲンシュタットの遺書を書いた(1802年頃でしたか)と言われる頃の曲だとは信じられない明るさだ。
ベートーヴェンの聴力は確実に失われつつあった筈なのだ。

〇 長年の愛聴盤 〇
私にはLPレコードの時代から(さすがにSPレコードは持っていなかった)の愛聴盤がある。
ジノ・フランチェスカッティのヴァイオリンにロベール・カザドシュのピアノ、この二人の息の合ったフランス人コンビの演奏だ。
フランチェスカッティのヴァイオリンはとにかく美音だ。
私はチャイコフスキーやメンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルトもこの人のLPを愛聴していたが、この人ほど優雅に美しくヴァイオリンを鳴らす人を知らないくらいだ。
それに、カサドシュのピアノが香り高いのだ。
ベートヴェンのヴァイオリン・ソナタは、それ以前のピアノ伴奏つきソナタとは明らかに質が違う。
ピアノの存在が大きいので、ピアニストの質が問われるのだ。
コルトーとティボーの盤もあったが、残念ながら音が悪すぎたと記憶している。


【ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』】
交響曲第5番『運命』
【ベートーヴェン 交響曲第3番『英雄』】
交響曲第3番『英雄』
【ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番】
ピアノ協奏曲第4番


<今日の一枚>
■ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第5番ヘ長調Op.24『春』
 ヴァイオリンソナタ第9番 イ長調 作品47 『クロイツェル』
 ジノ・フランチェスカッティ(V)
 ロベール・カサドシュ(P)
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<推薦盤>
フランチェスカッティとカサドシュのコンビでは、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全集が出ている。
コストパフォーマンス的にはこちらが遥かに有利だ。
■ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
 ジノ・フランチェスカッティ(V)
 ロベール・カサドシュ(P)

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<新鮮盤>
このソナタの音源となると、やはりベテランのコンビの録音が多く、しかもそうした経験豊かなヴァイオリンとピアノが安心出来るのだが、敢えてもっとフレッシュな盤をという向きには、幼き頃から天才少女でならし、カラヤンによって中央にデビューしたムターでどうぞ!
テクニック的にも十分な技術を備え、指揮者活動から音楽へのアプローチを深めた彼女のベートーヴェンは聞く価値のある素晴らしいものです。
ピアノのオーキスもしっかりと彼女を支えて、長年のコンビの呼吸もぴったりです。
■ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番、第9番
 アンネ・ゾフィー・ムター(V) ランバート・オーキス(P)1998.08.01 ヴィースバーデン(ライヴ・レコーディング

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2013.04.02 Tue l ベートーヴェン l コメント (0) トラックバック (0) l top