★ モーツァルト 歌劇『フィガロの結婚』 ★

今日はモーツァルトの傑作オペラ『フィガロの結婚』を観よう。
今日はCDではなく、DVDを楽しむことにする。
やはり、オペラは総合芸術(演劇、音楽、美術)なので、出来れば映像があった方が圧倒的に楽しめる。

ここで、総合芸術だなどと言ってしまったのに何だが、観る側の私は気楽に楽しめる舞台の一つだ。
私の場合、子供の頃からオペラは好きなジャンルの一つだったのだが、人に話すと必ず変人扱いされた。
実は「変人」は自覚しているのでいいのだが、オペラが好きだからではない。

オペラというと確かに、大きな身体の外国人が意味の解らない言葉で(外国の作品なら当たり前だが)、大仰な身振り手振りを交えながら「好きだ!」「嫌いだ」「呪ってやる」などと力一杯歌う喧しい活劇で、オーケストラやら合唱やらバレエやら、果ては繁華街全部のセットや神々の神殿まで舞台に作ってしまう大層なものだから、日本ではとっつきが悪いのは事実だ。
しかも外国のオペラハウスが日本にやって来て上演するとなると、チケットがべら棒に高い!
今では1ナイト6万円くらいは当たり前だ・・。
大物歌手に百人以上の劇団付きの合唱団・バレエ団とオーケストラ、それに大道具小道具全て運んできたらものすごい費用が掛かるのは分かるので致し方がないのだが・・。

だが、その内容となると、この世界的な傑作オペラ『フィガロの結婚』にしても、平たく言ってしまうと日本のメロドラマと何ら変わらないのである。
詰まりは愛憎劇、愛し合っている二人が結婚しようとすると、そこに嫉妬が生まれ、妙な横槍が入って、すったもんだの挙句、大団円ということだ。(あまりに、実も蓋もない言い様だが・・)


〇 実は『セビリアの理髪師』とは兄弟関係 〇
このフィガロ、原作はフランスの劇作家ボーマルシェの戯曲「狂乱の一日- フィガロの結婚」によるもので、これは、その3年前に書かれた戯曲「セビリアの理髪師」の続編に当たるものだ。
(ボーマルシェはさらに続編である正劇「罪ある母」を書いて3部作としている)
フィガロの30年後に書かれたロッシーニの代表作『セビリアの理髪師』は、フィガロの前作の戯曲によるもので、登場人物もお馴染みのメンバーになっているのである。
詰まり、セビリアの理髪師(街の何でも屋)とはフィガロのことなのだ。

初演は1786年にウィーンのブルク劇場で行われ、その春のシーズンは無事上演され一応の成功を収めるが、その後は人気が薄れていった。
何分にも内容的に貴族社会を風刺する内容であったためにウィーンでは難しかったのだろう。
しかし、その翌年にプラハで上演されたときには熱狂的に迎えられ、モーツァルトはそのあまりの熱狂振りにプラハの国民劇場で38番のシンフォニーまでお披露目する気の入れようとなっていく。
(38番のシンフォニーはその為『プラハ』のニックネームが付いている)

〇 超あらすじ 〇
さて、ボーマルシェの戯曲を基にダ・ポンテが書いた4幕物の台本の超あらすじはこんな感じだ。

時は18世紀、場所は例の通りセビリアに近いアルマヴィーヴァ伯爵の領内。
このアルマヴィーヴァ伯爵、「セビリアの理髪師」ではロジーナ(今では伯爵夫人)に恋して、フィガロの機転でようやく結婚できた癖に、もう浮気心が湧いてきてフィガロの許婚であるスザンナ(伯爵夫人の小間使い)に初夜権を行使しようと画策している。
初夜権とは、こんなものがあったかどうか私は存じ上げないが、領主は領内の花嫁に対して結婚当日に初夜権なるものを行使できるという慣わしがあり、実は伯爵はこれを廃止した筈なのに美しいスザンナに対して復活させようと、けしからん事を画策している。
それを知ったフィガロは当然怒り心頭、スザンナと協力して伯爵夫人や周りの人々を巻き込みながら伯爵の悪巧みを阻止すべく奔走する。
これに、お小姓ケルビーノやドクター・バルトロ、女中頭のマルチェリーナなどの人々が複雑に絡んでくる。
そして、最後は伯爵が自分のふしだらな行為について夫人に許しを請うことになり、庶民の勝利となる。
後半をすっ飛ばしてしまっているが、超あらすじとしてはこんなところだ。

このオペラ、人間関係がちょっと複雑なので、ご覧になるときには少しその点を予習された方が劇の進展に合点がいってベターだと思う。

〇 序曲 〇
『フィガロの結婚』は序曲も大変有名で、よく演奏される。
4,5分の短い曲だが、ちゃんとソナタ形式だ。
まず、弦によってニ長調の第1主題が奏される。
まことにモーツァルトらしい軽快でワクワクする曲調だ。
優美で穏やかな第2主題はヴァイオリンとファゴットに現れる。
短い展開部を経て主題が再現されて、コーダへ。
喜ばしく、舞台の楽しさを思わせて結ぶと幕が開く。
そこにはフィガロとスザンナが居るという段取りだ。

〇 魅力的なアリア、カンツォーナ、重唱の数々 〇
このオペラには本当に天才モーツァルトの紡いだ魅力的なアリアやカンツォーナが散りばめられている。
有名なものだけでも

第1幕「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」(フィガロのアリア)
第2幕「恋とはどんなものかしら」(ケルビーノのカンツォーナ)
第3幕「この抱擁は母のしるし」(スザンナ・フィガロ・マルチェリーナ・バルトロ・伯爵・ドン・クルツィオの6重唱)

などがあるが、登場人物を一律に扱わずに極めて個性的に描いている点では2重唱~6重唱にみるべきものがあるし、ブッファの設定の中にセリア的な語法を導入するのはこの後のオペラでもモーツァルトがよく行ったことだ。
だが、私がこの長いオペラ(カットが無ければ約3時間)で一番好きな歌唱は3分程の短いカンツォーナであるケルビーノの「恋とはどんなものかしら」だ。

〇 恋とはどんなものかしら 〇
このカンツォーナは伯爵のお小姓であるケルビーノが歌う短いカンツォーナだ。
ケルビーノはお小姓だから勿論男だが、このオペラではソプラノが歌う。
可憐で声の繊細なソプラノが歌うこのカンツォーナが、私は子供の頃から大好きだ。
ケルビーノがスザンナと伯爵夫人の前で歌うこの歌の内容は

恋とはどんなものかしら
知っているあなた
ご婦人方みてください
私の心は恋していますか・・・

で始まる。
憧れに満ちたこの感情は、時に火と燃えて、また冷めてしまう、ため息をつき、訳も無く胸が高鳴り・・
と恋心を可憐に歌い上げる。
曲は変ロ長調で始まって、属調のヘ長調に転調し、それから目まぐるしくヘ短調、変イ長調、それからハ短調・・
どんどん転調していく。
独特の転調と半音の動きが、恋に憧れ、翻弄され、夢うつつのうちに過ごす恋心をよく表している。
伴奏は木管と弦のピチカート中心の、とても洒落たカンツォーナ(アリエッタ)なのだが、実に上手いモーツァルトだ。


<今日の一枚>
今日はオペラということでもあり、DVDを観た。
1973年のグラインドボーン音楽祭の映像だ。
特にソプラノ陣の充実が素晴らしい盤だ。
■フィガロの結婚*歌劇 [DVD]
演出: ピーター・ホール 指揮: ジョン・プリッチャード 演奏: グラインドボーン音楽祭合唱団/ロンドンフィルハーモニー管弦楽団
出演: フィガロ:クヌート・スクラム(Bs)
スザンナ:イレアナ・コトルバシュ(S)
 ケルビーノ:フレデリカ・フォン・シュターデ(S)
伯爵夫人:キリ・テ・カナワ(S)
 アルマヴィーヴァ伯爵:ベンジャミン・ラクソン(Bs)
 バルトロ:マリウス・リンツレル(Bs)


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<推薦盤1>
プリッチャードのグラインドボーンのフィガロは私のイチ押しだが、他に挙げるとしたらベームだろう。
日本公演の貴重な映像がある。

■モーツァルト歌劇「フィガロの結婚」K.492 カール・ベーム指揮 ウィーン国立歌劇場日本公演 1980年 [DVD]
指揮:カーム・べーム
演奏:ウィーン国立歌劇場管弦楽団 合唱:ウィーン国立歌劇場合唱団
出演:フィガロ=ヘルマン・プライ/スザンナ=ルチア・ポップ/ケルビーノ=アグネス・バルツァ


 1980年9月30日 東京文化会館にて収録
 
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2013.10.20 Sun l モーツァルト l コメント (4) トラックバック (0) l top

コメント

こんにちは
★赤影★さま
こんにちは
確かにソプラノ陣は分厚い布陣ですね。
コトルバシュは私は椿姫ぐらいしか聴いたことがありませんが、スザンナ、素晴らしいんでしょうね。

オペラを聴くことは少ないです。舞台も何度か、というレベルです。はじめての生オペラはスカラ座でしたが、音楽もさることながら、舞台美術にびっくりしました。こりゃあチケットも高いわけですなあ(^^;)
2013.10.20 Sun l sankichi1689. URL l 編集
DVD鑑賞も良いですね。
★赤影★さん、こんにちは。

大阪は朝から雨です。今もどんより曇っていて今週はこんな感じの天気が続きそうです。ただ、涼しくなったので体は楽ですね。助かります。(^^)

>子供の頃からオペラは好きなジャンルの一つだったのだが、人に話すと必ず変人扱いされた。

好きなことを話しても分かってもらえないのは子供心にも寂しかったことでしょうね。

私の場合はオペラを聴いて面白いなと感じられるようになったのは大人になってからでした。声楽が好きになるにつれて好きになれたって感じです。

『フィガロの結婚』と『セビリアの理髪師』にそんな関係があったとは知りませんでした。関係がわかると面白いもんですね。
2013.10.20 Sun l akifuyu102. URL l 編集
Re: こんにちは
sankichi1689さま、いつもコメントありがとうございます。(^^)

そうですね、まだ若かったソプラノ3人、どの方も素晴らしい出来だとおもいます。
コトルバシュのスザンナは可愛らしくて、魅力的な歌唱です。
お芝居も上手いですね。
椿姫をお持ちですか?
それはクライバーの名盤でしょうか。
私も大切にしているCDです。(^^)

おお!ミラノスカラ座を生でご覧になりましたか?
私も日本公演ではお小遣いを貯めて観にいきました。
そうですねぇ、舞台も素晴らしいですよね。
チケットがえらく高くなるのも仕方が無いですね。
ミラノみたいに立見席を作ってくれたらいいのですが。
2013.10.20 Sun l ★赤影★. URL l 編集
Re: DVD鑑賞も良いですね。
akifuyu102 さま、いつもコメントありがとうございます。(^^)

そうですねぇ、先日まで暑かったのに急に涼しくなりましたので、身体がついていかない感じです。
オペラは子供の頃から親しんできたのですが、確かにそんな子供は周りにいませんでしたから仕方がないと思っています。(^^)

歌は、ポップスでもロックでもシャンソンでも結局は人間の声帯を楽器にして表現する音楽ジャンルですから、聴き始めれば楽しいですよね。
オペラを好きな人は、結構のめりこむ人も多くて、他を切り詰めてでも観にいっておられますね。

フィガロとセビリアの理髪師は兄弟みたいな関係なんです。
兄のほうが30年後に生まれてますが・・。(^^)
2013.10.20 Sun l ★赤影★. URL l 編集

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