★ J.S.バッハ イタリア協奏曲 ヘ長調 ★
今日は、J.S.バッハの 「イタリア協奏曲ヘ長調BWV 971」 だ。
この曲は、先日ご紹介した 「フランス風序曲」 と共に『クラヴィーア練習曲集』第2巻 の中の一曲だ。

原題は、ドイツ語で「Concerto nach Italienischem Gusto」となっており、「イタリア趣味に則った協奏曲」とでも言えば良いのだろうか。

この曲の譜面には、珍しいことに「f(フォルテ)」「p(ピアノ)」の記号が記入されており、これはヴィヴァルディに代表されるイタリア式の合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)でのトゥッティとソロの対比を表しており、2段鍵盤式チェンバロでの鍵盤の切替指示と考えて良いのだと思う。
バッハは若い頃から研究してきたイタリア様式のコンチェルト・グロッソを2段鍵盤のチェンバロで表現しようとしたのだ。

〇 明朗快活なメロディ 〇
曲は3楽章構成で、特に両端の楽章は青く澄んだイタリアの空の如く、軽快で明るい曲調だ。
「明朗快活」などと言うと、出来の悪い履歴書の自己アピールのようで恐縮だが、正にそのような形容がぴったりな明るい曲だ。
これに、演奏家を得ると「高貴」というファクターが加わるから堪らない。
バロック音楽にはバッハを頂点として、明るく聴き心地の良い音楽が数多くあるが、人をして感動せしむる楽曲を書いたのは、アルビノーニの数曲を除けば、バッハ一人だと思っている。

〇 活力溢れる 第1楽章 〇
速度の指定などは無いのだが、アレグロと考えていいと思う。
そういうメロディであり、軽快さが命だ。
この楽章はリトルネッロ形式とはいいながら、最初と最後のリトルネッロ主題以外ははっきりしない。
譜面で言えば、「f」指定がリトルネッロで、「p」指定がエピソードに当たるのだろうが、良く聞いていると一概にそうでもないように思える。
しかし、そうした揺らぎをもちながら、イタリア様式でとてつもなく楽しい曲を、バッハは私たちに遺してくれた。
私は、この曲を聴くととても元気になるのだ。

〇 しっとり美しい 第2楽章 〇
この楽章こそ、最もバッハらしいと私は思う。
アンダンテの指定で、曲はゆったりと流れる。
歩むようなバッソ・オスティナートに乗って、極めて美しい旋律が装飾的に詠われる。
両端楽章との対比が見事であり、このドイツ的な形式美も持ったアンダンテ楽章があるからこそのイタリア様式になっているところが、バッハだ。

〇 軽快の極み 第3楽章 〇
この楽章は、プレスト指定で軽快さの極みだ。
トゥッティとソロのニュアンスを、曲の陰影に心地よく投影しながら突き進む。
各声部の音の重ね方は、バッハ得意の対位法を駆使しており、リトルネッロ主題の展開などはとても面白いし、モーツァルト以降のピアノソナタへの道を示していると感じる。


<今日の一枚>
今日は軽快なピアノで聞きたい気分だ。
シフで行きたい。
まあ、とにかく心地よい演奏なのだ。
これは単に軽快なだけではない、音の粒立ちが良く、しかも滑らかだ。
両端楽章はそのように、春の草原を舞う蝶のように軽やかなバッハで、中間楽章は十分に脱力が出来ている。
このアンダンテは力みがあっては、心のつかえになってしまう。
■イタリア協奏曲/シフ・プレイズ・バッハ
 アンドラーシュ・シフ(Pf)

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<推薦盤1>
元気になりたい時や爽やかな朝にイタリア協奏曲を聞くには、断然シフがお勧めだが、深夜に読書の友にしたり雨の昼下がりに聞くならブレンデルがいい。
軽みと共にブレンデル特有の温もりが母のように優しく包んでくれるバッハだ。
■バッハ:イタリア協奏曲、他
 アルフレッド・ブレンデル(Pf)

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<推薦盤2>
チェンバロから選ぶなら、レオンハルトが総合的にいいと思う。
少しゆったりめのテンポで丁寧に音を紡いでいく、いつものレオンハルトだ。
こちらは2枚組みで、レオンハルトのバッハを堪能できる。
■バッハ:イタリア協奏曲
 グスタフ・レオンハルト(Cmeb.)

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2013.09.09 Mon l バッハ l コメント (6) トラックバック (0) l top

コメント

こんばんは。akifuyu102です。
赤影さん、凄いなぁ!!
楽譜を見ながら聴かれるのですね。
それに時代背景や楽器のことまで実に詳細に
記述されている。すごいです。

私は時代背景や形式など知る努力もせず、
ただ、感動したり心地よい音楽を求めて楽しんで
いるだけです。少しは知識も入れないと。(-_-;)

今、YouTubeで聴いています。チェンバロです。
2楽章、良いですね。こんなの好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=vmVOWilkmOA&list=UUIT2iTfE0U9cNqWn2zHnPaA

あと、記事とは関係ないのですが、チェンバロで楽しい
演奏を今、偶然見つけたのでURLを載せました。
http://www.youtube.com/watch?v=uJvucBDevyw&list=UUIT2iTfE0U9cNqWn2zHnPaA
2013.09.09 Mon l akifuyu102. URL l 編集
Re: こんばんは。akifuyu102です。
akifuyu102さん、こんにちは!
いえいえ、好きで聞いている音楽ですし、楽譜を見るのも
気になったことをそのままにするのが嫌だ、というだけなんです。
私はひねくれ者でして、人に何か勉強しろと言われると意地でも
やらないんですけど、好きなことになると色々と書物を漁ったり
時間を忘れてゴニョゴニョやってます。

akifuyu102さんのサイトこそ、音楽も選曲が素晴らしいですし、
音楽を楽しんでおられる風情が良く伝わってきます。
(弦楽セレナーデや惑星、いいですよね! 良い演奏に出会うと
背筋が寒くなります)

それにオーディオのお話も、凝っていてとても面白いです。

それから、YouTubeのURLありがとうございました。
この方はアメリカのチェンバロ奏者ですよね。
帰宅したら楽しませて頂きます。(^^)

色々、ありがとうございます。
これからも宜しくお願いします!


> 赤影さん、凄いなぁ!!
> 楽譜を見ながら聴かれるのですね。
> それに時代背景や楽器のことまで実に詳細に
> 記述されている。すごいです。
>
> 私は時代背景や形式など知る努力もせず、
> ただ、感動したり心地よい音楽を求めて楽しんで
> いるだけです。少しは知識も入れないと。(-_-;)
>
> 今、YouTubeで聴いています。チェンバロです。
> 2楽章、良いですね。こんなの好きです。
> http://www.youtube.com/watch?v=vmVOWilkmOA&list=UUIT2iTfE0U9cNqWn2zHnPaA
>
> あと、記事とは関係ないのですが、チェンバロで楽しい
> 演奏を今、偶然見つけたのでURLを載せました。
> http://www.youtube.com/watch?v=uJvucBDevyw&list=UUIT2iTfE0U9cNqWn2zHnPaA
2013.09.10 Tue l ★赤影★. URL l 編集
はじめまして★赤影★ さま
バッハの中で1,2を争うくらい大好きなイタリア協奏曲を記事にされていたので、思わずコメントさせていただきました!

ただ、CDは今はグールドのみです。ブレンデルとペライアを持っていましたが、売ってしまいました(後悔)。

ご推薦のシフのバッハは評価高いですね。ぜひ今度聴いてみたいです。この曲なぜかピアノの方がしっくりきますが、レオンハルトのも聴いてみたいと思いました。
2013.09.10 Tue l sankichi1689. URL l 編集
Re: はじめまして★赤影★ さま
はじめまして、sankichi1689様

ああ、あなたもそうですか、「バッハの中で1,2を争うくらいに好き」というのは分かります。
この曲ほど、バッハらしくてしかもモーツァルトらしい曲は無いかも知れません。
グールドですか、良いですよね。
グールドはこの曲を嫌いだったというお話がありますが、信じられないくらい素晴らしい演奏ですよね。
終楽章などはそれはもう猛スピードで、尚且つ一音もなおざりにせずに弾き切っています。
私も大切にしているCDです。(^^)
推薦盤に挙げなかったのは、ヒネクレ者の気紛れくらいにご理解くださいませ。

ブレンデルとペライアは手放してしまわれましたか。
それは勿体無い・・。
私はペライアの弾くイタリア協奏曲は聴いたことが無いのですが、如何でしたか?

私も、この曲はチェンバロよりもピアノの演奏を好みます。
チェンバロですと、両端楽章が少し喧しくなってしまうのと、中間楽章のしっとり感
が出難いのが気になるのです。
しかし、レオンハルトの演奏はなかなかのものです。
機会があったら是非お聞きください。

実は、貴ブログを私は時々拝見しておりました。
写真もあって、綺麗なブログを展開されていますね。
音楽にもお詳しくて、素晴らしいと感じておりました。

これを縁に、これからも宜しくお願い致します。

2013.09.10 Tue l ★赤影★. URL l 編集
こんばんは
拙ブログを見ていただいていたなんて!ありがとうございます。

また先輩ブロガーさんからのお言葉。素直に嬉しいです。

音楽に詳しいなんてとんでもない。感想を書き散らしているだけです。

こちらこそよろしくお願いします。
2013.09.11 Wed l sankichi1689. URL l 編集
Re: こんばんは
sankichi1689様

こんばんは!
いえいえ、先輩ブロガーと言えるほど、ブログ暦は長くないです。
私も、音楽を愛する方からメッセージを頂いたりすると
とても嬉しいです。(^^)

これからも宜しくお願いします!

2013.09.11 Wed l ★赤影★. URL l 編集

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