★ メンデルスゾーン フィンガルの洞窟 ★
この曲はメンデルスゾーンが20歳の頃、スコットランド北西の沖にあるヘブリディーズ諸島内のスタッファ島を訪れた際の感銘を基に作曲された、所謂演奏会用序曲である。
この無人島には海水侵食による見事な洞窟があり、当地の古謡「オシアン」に登場する英雄フィンガルにちなんで「フィンガルの洞窟」と呼ばれているそうだ。

〇 風景画 〇
この曲は、絶海に浮かぶスタッファ島、そしてそこのジュール・ヴェルヌの地底旅行にでも出発できそうな地球の入り口、壮大な洞窟を音楽で表現している。
メンデルスゾーンに激しい敵意を示したワーグナーでさえ、メンデルスゾーンを『第一級の音の風景画家』と評し認めていたのだ。 

ちなみに、ワーグナーの敵意は「最高の教育を受けた才能あるユダヤ人は、我々に一度も深い感動を与えたことも無いのに、最高の栄誉職に就いている」というような言葉に如実に現れている。
これは生まれながらにして裕福な家庭に育ったメンデルスゾーンへのやっかみも半分入っているだろうが、鋭い突っ込みでもあると思う。

「深い感動を与えたことも無い」という箇所は、メンデルスゾーンの音楽性の一面を突いていると思うのだ。
彼は当時のロマン派音楽の趨勢である半音階的な音創りを嫌った。
生まれながらに裕福で、正に当時最高の教育を受け、天賦の才能を幼い頃から磨き上げた神童。
器用で、音楽に於いても高いテクニックを発揮した全音階的な音創りは、宿命的にエモーショナルな側面に欠けていた。

この点で正反対だったのが、やはりワーグナーなのだろう。

〇 抑制的なロマン主義 〇
だが、私はバッハ、モーツァルトを敬愛してやまなかったこの「抑制的なロマン主義者」とも言えるメンデルスゾーンの音楽が好きだ。
端正で、隙が無く、見事な構築美を醸し出す。

この「フィンガルの洞窟」においても、それは言えると思う。
曲はソナタ形式で書かれており、第1主題は絶海の孤島スタッファ島全景を現したかのように思える。
第2主題は大きな波に洗われる不気味な口を開けた洞窟。
私の印象はそのように、絶海という侘しさや人間の叡知を超えたものへの畏敬の念までを含めたメンデルスゾーンの音楽表現に思えている。
以降、リストやリヒャルト・シュトラウスの「交響詩」へと流れが出来ていく。


<今日の一枚>
たまには、管弦楽曲の名曲集のようなものに浸ってみるのもいいものだ。
書き物をしている時などには、ピアノ曲かこうした管弦楽曲が邪魔にならずに良い。
音楽もTPO。
カラヤン+ベルリン・フィルの美音はそんな時には安心できる。

■モルダウ/カラヤン名曲コンサート [Limited Edition]
 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

収録曲は下記のようにバラエティに富んでいる。
スメタナやシベリウスもなかなかの出来だ。
1. 交響詩《モルダウ》
2. 交響詩《前奏曲》
3. ハンガリー狂詩曲 第2番
4. 交響詩《フィンランディア》作品26
5. 舞踏への勧誘 作品65(ベルリオーズ編)
6. シチリアーナ(リュートのための古代舞曲とアリア 第2組曲より)
7. 序曲《フィンガルの洞窟》作品26

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<推薦盤1>
この10分足らずの曲を中心にしたCDはあまり無いと思うが、巨匠クレンペラーの「夏の夜の夢」とカップリングされたCDは入手しやすくてしかも名演と言ってよいだろう。

■メンデルスゾーン:劇付随音楽「真夏の夜の夢」
 オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団

1. 序曲「フィンガルの洞窟」op.26
2. 劇付随音楽「真夏の夜の夢」

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2013.08.29 Thu l メンデルスゾーン l コメント (0) トラックバック (0) l top

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