★ ドビュッシー 『子供の領分』 ★
今日はクロード・ドビュッシーのピアノ曲『子供の領分』だ。
シューマンの『子供の情景』を思い出す方もいらっしゃると思うが、『子供の情景』は大人のイマジネーションの中での子供の世界、みたいなものを描いていると思う。
この『子供の領分』は、それともちょっと違って、純真であどけない、だけどちょっとイタズラだったりもする子供の様子を、非常にスマートに音楽にした、そんな作品だと思っている。

ドビュッシーのこの姿勢は偏に作曲動機に関わっていると思う。
ドビュッシーはこの曲を1908年に完成させ出版しているが、当時3歳の可愛くて仕方が無かった愛娘クロード・エマの為にこの曲集を書いているのだ。

〇 ちょっとゴシップねた 〇
音楽の本質とは関係ないのだが、この愛娘シュウシュウ(ドビュッシーは40代半ばで出来た子、エマをそう呼んで可愛がった)の母親はエンマ・バルダックで、ドビュッシーとは1908年に結婚している。
エンマ嬢は再婚で、既に最初の夫である銀行家シジスモン・バルダックとの間に2人の子供をもうけていた。(ラウルとエレーヌ)
ややこしいのは、ここにガブリエル・フォーレが絡んでくるのである。
(3大レクイエムの作者のフォーレだ)
フォーレとエンマは1890年頃から親しい関係を持っており、銀行家との間の娘(エレーヌ)はフォーレの子ではないかと言われている。
フォーレのピアノ組曲『ドリー』は、このエレーヌの為に書かれている。
ドリーというのは、エレーヌの愛称だ。
エンマはその後ドビュッシーと結婚し、シュウシュウが生まれている。

ドリーの父親の件は、ドリーが92歳で亡くなるまで伏せられていたそうだ。
フォーレさん、エンマさん、とにかくお騒がせなのだ・・。


〇 英語のタイトル付き 〇
この曲は以下の6曲から成っていて、それぞれに英語のタイトルがついている。

①Doctor Gradus ad Parnassum「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」
パルナッソス山(ギリシャの霊峰)に続く階段(グラドゥス)というタイトルを持つ、クレメンテのピアノ練習曲集。
この高度なテクニックを要する練習曲集を娘がやがては弾きこなすことをイメージしつつ(博士)、途中でほったらかしてしまったりする可愛い我が子を描いている。

②Jimbo's lullaby「象の子守歌」
Jimbo(or Jumbo)というのはシュウシュウが持っていた象の縫いぐるみではとの説もあるし、単にスペル違いという説もある。
ここはドビュッシーらしく、全音音階で書かれており、調性の無い不思議な感覚が新鮮だ。

③Serenade of the doll「人形のセレナード」
シュウシュウが大事にしていた人形へのセレナードであろうか。
ドビュッシーの紡ぎ出す独特の美しい「音」が、ここにもちゃんとある。

④The snow is dancing「雪は踊っている」
雪の舞い落ちる光景と、それを眺める子供の心象が、シンプルな書法で描かれている。

大変幻想的な曲だと思う。

⑤The little shepherd「小さな羊飼い」
穏やかな草原のイメージ。
短くてシンプルな曲だが、私は6曲の中でこの曲が一番好きだ。
強い音は不要、とても繊細なタッチと風にそよぐような音の流れが必須。
24,5小節目の同音型の繰り返しが最も繊細さを要求される。

⑥Golliwogg's cakewalk「ゴリウォッグのケークウォーク」
ゴリウォッグは黒人少年の人形のキャラクターの名前だそうで、ケークウォークというのは現在でも踊られる黒人の軽快なダンス。
ここで特筆すべきは中間部に現れるワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」のモティーフだ。
しかし、すぐにシュウシュウが横に首を振るかのような音で、打ち消される・・。
ドビュッシーは一定のワーグナーの影響を受けつつも、そりが合わなかったことは有名で、これは彼独特のパロディか。


<今日の一枚>
今日はやはりドビュッシーということもあるから、フランスのピアニストで聞こう。
パスカル・ロジェだ。
ロジェのピアノはとても優雅でアーティキュレーションをあまり強く取らないのだが、この曲の場合それがうまく嵌っていると思う。
テクニックは申し分ない。
■ドビュッシー:ピアノ曲集 (2CD)
 パスカル・ロジェ(P)
このCDは2枚組みで、ドビュッシーの名曲がずらりと並んでいる。

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<推薦盤1>
やはりフランソワのドビュッシーはいい。
特にこの曲集のように、愛らしいシュウシュウの為の音楽となると、単なるテクニックでも無く、人生の苦楽を内包するでも無く、杓子定規にならない自由な遊び心までを音に出来るフランソワだろう。
■ドビュッシー:ピアノ集(3)
 サンソン・フランソワ(P)

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2013.08.13 Tue l ドビュッシー l コメント (0) トラックバック (0) l top

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