★モーツァルト ピアノソナタ第11番『トルコ行進曲付き』★
今日はこのあまりにも有名なピアノソナタと聞こう。
このソナタの第3楽章が所謂モーツァルトの「トルコ行進曲」として、世界中で愛されている曲だ。
ご存知の通り、ベートーヴェンもやはり「トルコ行進曲」と呼ばれる楽曲を作っているが、こちらは元々劇付随音楽『アテネの廃墟』の中の楽曲として管弦楽用に作曲されたもので、ピアノ用にも編曲されており、モーツァルト同様日本でも子供の演奏会用にも広く使用されている。

♪モーツァルト トルコ行進曲
♪ベートーヴェン トルコ行進曲

〇 ピアノソナタ第11番イ長調K.331 〇
さて、この3楽章のソナタだが、実はソナタ形式の楽章は一つも無い。
第1楽章はシンプルな主題による変奏曲で、第2楽章はメヌエット、そして第3楽章はトルコ行進曲でロンド形式で書かれている。
かつての4楽章制での第1楽章が欠落した形式か、等の検証もあるが、そんなことよりもやはり何故トルコ行進曲なのか?の方が面白い。

〇 オスマン帝国 〇
この曲はかつては1778年頃パリで作曲されたのではないかというのが有力な説であったが、現在では1783年頃にウィーン或いはザルツブルクで作曲されたとする説が主流になっている。
14世紀頃に興ったオスマン帝国は、特に15世紀~17世紀にかけて地中海周辺に広大な版図を誇っていた。
そのオスマン帝国がヨーロッパに関わってくる中で、1683年の「第2次ウィーン包囲」という事案があり、ヨーロッパ諸侯連合軍はこれをみごとに打ち破っている。
このソナタが作曲された頃は、丁度それから100周年に当り、ウィーンでは祝勝ムードで盛り上がっていたようだ。
その為、ウィーンではトルコブームが起こっており、流行に敏感なモーツァルトは、この曲にトルコ風のリズムと表現的効果を取り入れたという訳である。
(オスマン帝国は正確にはトルコ民族の国家という訳ではないのだろうが・・・)

〇 子供には易しく、大人には難しい 〇
このシンプルで親しみ易い楽曲は、日本でもピアノ発表会の常連曲目といって良い。
特に第3楽章は、単独で取り上げられることも多い。
だからこそ、この曲はプロのピアニストにとっては「やばい音楽」なのだ。
やばいはお下品なので、ちゃんと言うと「大人には難しい」「プロの演目には至難の曲」ということだ。
隣の~ちゃんでも弾ける曲で、2千人の観客からお金を戴くなんて、考えたら恐ろしいことだ。
万一ヘタクソだったりしたら暴動になるし、通り一遍に弾いたら間違いなくブーイングの嵐だ。

〇 左手の動きにトルコが宿る 〇
ここで言う「トルコ風の音楽」とは、オスマン軍が随行したメフテラーンと呼ばれた独特の軍楽隊が奏でる勇壮なミュージックのことを指している。
これは「ジャン、ジャン、ジャンジャンジャン」といったリズムで、シンバルや太鼓、ラッパを中心とした軍楽隊(メフテル達)が奏する結構喧しい行進曲だ。
この音楽を、モーツァルトは左手の伴奏に活かしている。
(左手だけ聞くと、面白い)

〇 パッセージにも工夫がある 〇
その他の特徴として、3度、6度、オクターヴのパッセージがところどころに使われており、当時のモーツァルトの志向を窺い知ることが出来るように思う。
確かな記憶ではないので申し訳ないが、モーツァルトが父や姉に送った書簡にもそうしたパッセージに対する言及があったように思う。
(第1楽章の、あの短調に転調する素敵な第3変奏とか)

愛らしい中にも、ちゃんと新しい試みが活かされているのだ。


【モーツァルト ピアノソナタ第2番】
ピアノソナタ第2番
【モーツァルト ピアノ協奏曲第20番】
ピアノ協奏曲第20番
【モーツァルト ピアノ協奏曲第9番『ジュノーム』】
ピアノ協奏曲第9番『ジュノーム』



<今日の一枚>
さあて、このプロにはやばいソナタを誰で聞こうか。
所謂、名演と言われる音源は数あるのだが、私はケレン味の無い演奏が好きだ。
これだけ、技術的に易しく、子供でも弾ける曲となると、どうしても色々やりたくなるのだろう。
極端に遅いテンポ(グールド)を取ったり、装飾音で華やかさを演出したり(ファジル・サイ)と個性的な名演奏が存在する。
私自身、そうしたある意味ケレン味のある演奏にはどうしても惹かれてしまう方で、ある時期は嵌るのだが、やはりいつしか基本に戻る。
この曲の私にとっての基本は、ピレシュだ。
ピレシュはモーツァルトのピアノソナタ全集を2度録音しているが、今日は1970年代の若い頃の演奏を聞きたい。
2度目の録音の方が、貫禄というか落ち着きがあるように思うが、若い頃の演奏のほうが素直な印象を抱いている。
■モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集3 (全集からの分売)
 アリア・ジョアン・ピレシュ(P)

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全集全てでもリーズナブルなので、輸入盤なら尚お得感がある。
■Mozart: Complete Piano Sonatas [CD, Box set, Import]
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<推薦盤1>
ちょっと古い録音になるが、やはりギーゼキングは外せない。
ギーゼキングのモーツァルトは、上述のケレンというものが無い。
知的で品格のある演奏は、時を超えて私たちを古典の美しさへと誘ってくれる。
■モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番~第13番
 ワルター・ギーゼキング(P)

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<推薦盤2>
こちらは、気品と優雅さに満ちた格調高いモーツァルトが聞ける、イングリッド・ヘブラーだ。
彼女もまたモーツァルト弾きとして有名であったが、そのにこやかな風貌から感じるような、流れるような淀みのない美しいフレージングが印象的だ。
こちらは選集だが、ピアノソナタ全集もある。
■モーツァルト:ピアノ・ソナタ選集 [K.310/545/331]
 イングリッド・ヘブラー(P)

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2013.07.12 Fri l モーツァルト l コメント (0) トラックバック (0) l top

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