★ ショパン ピアノ協奏曲第1番 ★
今日はショパンのピアノ曲の中でも、ある意味で異色な存在であるコンチェルトを聞こう。
異色だと言うのは、この極めてポエティックな作曲家は、バラード、ワルツ、ノクターンといった小曲にこそその天才を発揮したが、大曲は向いていないと思っているからだ。
その意味ではソナタの分野もそうで、例えば有名なピアノソナタ第2番『葬送』にしても、各楽章間の関連性は希薄で、曲全体の構築上の完成度は先輩であるモーツァルトベートーヴェンに及ばないと思う。
だが、そうだとしても、ショパンだけが持っている溢れんばかりの「詩情」は、それを補って余りあるのだ。

〇 第1番と第2番 〇
ショパンの番号付きピアノコンチェルトは 第1番ホ短調Op.11 と 第2番ヘ短調Op.21 があるが、作曲順に言うなら逆で、ヘ短調の方が先に作曲されている。
ショパンは1829年~1830年頃に、まずヘ短調のコンチェルトを完成し、ワルシャワで初演している。
その後すぐにホ短調のコンチェルトに着手し、1830年にはウィーンに旅立つ前に完成させワルシャワで初演を成功させている。
それからパリに出ていく訳だが、ショパンはこのホ短調の方で勝負に出ており、1832年のパリでのデビューをこのコンチェルトで飾り、みごとに好評を得たために目出度く出版の運びとなった。
このように出版の順序がホ短調が先だったためにこちらが第1番となった訳だ。

〇 オーケストレーションの謎 〇
このショパンのコンチェルトには大きな謎が残されている。
ピアノパートをショパンが作曲したことは間違いないのだが、オーケストラパートの方が本当にショパンによるものか、その当時の誰かが替わってオーケストレーションしたものなのか判っていない。
私個人の意見では、誰かは分からないが、第1番と第2番は同一人物がオーケストレーションしているように感じている。
オケの編成が独特で、似ているからということと、ピアノパートとの役割分担というかバランスの特徴に共通項があるからだ。
この点については、ヤン・エキエルが主幹を務めるショパン・ナショナル・エディションによれば、ショパンによるオーケストラパート譜は消失したが、各楽器の詳細を記述したピアノ・スコアが残されており、それによればショパンが意図したオーケストラパートは現在のものとは全く異なるものだったということだ。
この辺、まだ世界レベルでのアグリメントが為されていないので、暫くおいておこう。
取り敢えず、現在録音されている音源を楽しもうではないか。

〇 貧弱なオケ? 〇
さて、誰が書いたかは棚上げにしても、この曲の素晴らしさ故にオーケストレーションの貧弱さが取り沙汰されてきた。
ショパン以外の人物が書いたのかも知れないから、それでいいや、という訳にもいかない。
確かにピアノのゴージャスさに比してオーケストラの厚みが足りない。
それは、物理的に鳴っている楽器が少ないという側面があって、それはある意味仕方がないというか当たり前の話だ。
ブラームスベートーヴェンならばファゴットにホルンを被せに行ったり、オーボエの陰からクラリネットが浮かび上がったりと、楽器間の遣り取りがとても有機的なのだ。
しかも旋律も主役たるピアノの旋律に負けない、魅力的なお化粧や主題展開が必ず為されている。

ショパンの場合は、単一楽器が旋律を支えることが多く、特に管楽器の場合顕著に見える。
だが、そうなってしまう一番判りやすい原因は、やはり「ピアノの頑張りすぎ」なのだと思う。
つまり、ピアノが顔を出すと、主役の座は絶対譲らないぞ!みたいに引くことがない。
分厚いオーケストレーションを繰り広げる協奏曲の場合は、独奏楽器とオーケストラが音のバトンタッチを繰り返すところが楽曲の膨らみを増し、奥行きを広げて行く訳だ。
ショパンの協奏曲は、ピアノが登場するとオケは伴奏に徹すると言ってもいい。
この第1番でも、コンサート会場でオーケストラを見ていると、ピアノが弾き始めると弦のピチカートが目立つ。
そのように、オーケストラは和声と下支えに回る印象が強い。
オーケストラだけの時には、結構鳴るのだが・・・。

ここからは、全くの私の想像なのだが、もしかするとショパンは協奏曲などは本当は書きたくなかったのではないか。
ワルシャワからウィーン、バリと楽壇レビューを模索していたショパンにはその為のツールというか、演奏会用のキラーコンテンツが必要だったのかと想像している。
自分が弾くピアノにスポットライトが当たった煌びやかなコンチェルトが。

これ以降、2度とコンチェルトを書くことが無かったのは、パリデビューが成功した後には本来の得意とするピアノ小品に特化できたから。

〇 詩情溢れるピアノ曲 〇
そのように、現在聞かれるオーケストレーションにはピアノパートに比して多少物足りなさはあるのかも知れないが、繰り返しになるが、それを補って余りある詩情溢れるショパンらしいメロディで満ちている。


【ショパン ワルツ集】
ワルツ集


<今日の一枚>
さて、この協奏曲を誰で聴くかだが、今日はアルゲリッチでいきたい。
アルゲリッチは勿論素晴らしいヴィルトゥオーソなのだが、タッチが必要以上に強すぎて、時としてうるさく感じてしまうことがある。
私には、演奏選択上悩ましいピアニストなのだが、この曲ではとても綺麗なタッチを聞かせてくれる。
元々テクニックは抜群なので、どこかクールに取り組んでいる時の彼女は素晴らしいと思う。
■ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番
 マルタ・アルゲリッチ(P)クラウディオ・アバド指揮 ロンドン交響楽団 (第1番)
    ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ指揮 ワシントン・ナショナル交響楽団 (第2番)

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<推薦盤1>
これは異色のショパンだ。
恐らくツィマーマンは、色々な指揮者と共演してきて、どうしても物足らなさが残っていたのだろう。
遂に、自分の想いをこの記念オーケストラと共に叶えたと言える。
オーケストラは「これが本当にショパンのコンチェルトか?」と疑うほどに歌いまくる。
往年の名指揮者メンゲルベルクでもやらなかった程、弦はポルタメントを思い切りかけてくる。
とてもロマンティックな演奏だ。
ショパン好きなら必聴もののCDだ。
■ショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番
 クリスティアン・ツィマーマン ピアノ・指揮  ポーランド祝祭管弦楽団

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2013.06.29 Sat l ショパン l コメント (0) トラックバック (0) l top

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