★ ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』 ★
今日は勢いで行く。
久しぶりにベートーヴェンの交響曲を聞き続けていると、改めてこの偉大な作曲家の楽曲に対する緻密な構成力や、主題の扱い方(第1主題と第2主題の関連性・経過句での繋ぎ方、調性の持ち方)などに、う~んこれはすごいと唸らざるを得ない・・・。
このシンフォニーはあまりに有名すぎて、語り尽くされていると思う。
だが、私の思うところをチョコっとだけ書き記しておきたい思う。

〇 『運命』 〇
まず、この曲の場合、この『運命』というニックネームが問題だ。
ここでも、また例のシントラーが出てくる訳だが、この人はとにかく怪しい。

曰く:
シントラーがベートーヴェンに対して、このハ短調シンフォニーの冒頭の4つの音は何を表しているのか?と聞いたところ、「運命はこのように扉を叩くのだ」と答えた。

というものだ。
例の、「ジャジャジャジャーン」(または、「ダダダダーン」)は、運命が扉を叩く音だとベートーヴェン自身が言ったという訳だ。
私も子供の頃からこの逸話を聞かされて、少しも疑うことが無かった。
そのぐらい、この曲からは「運命」と呼ぶに相応しい重みと緊張感を味わった。
しかし、大人の知恵が少しだけ付いてくると、このアントン・シントラー(シンドラー)のイカガワシサが鼻についてくる。
彼の虚言癖や性格の悪さについては、ベートーヴェンも書簡で甥のカールなどに語っているし、後の研究では彼の著書に記された内容の殆どが作り話であり、ベートーヴェンとの筆談ノートすら、自分の著書と折り合いが付かない部分は破棄してしまったことが判明しており、まことにイカガワシイ人物と言うしかない。

そもそも日本では『運命』で通っているが、海外では単に「ハ短調交響曲」が通り相場だ。
(しかし、近年ではドイツですら「Schicksalssymphonie(運命交響曲)」の呼称を使う場合もあるようだ。日本の逆影響なのだろうか・・。)

従って、あまりこの「運命」という呼称に引き摺りまわされない方が良いのだが、だがしかし、山ほどある「ハ短調交響曲」の中でのアイデンティティを確保するよりも、全てのシンフォニーの中での「ただ一つの運命」こそがこの曲に相応しいと思うのだが・・・。

〇 ジャジャジャジャーン 〇
この冒頭の4音、俗に「ジャジャジャジャーン」(または「ダダダダーン」)の鳴らし方が、昔から演奏上では大問題だった。
一頃は、この冒頭の鳴らし方に、指揮者としての技量や見識までが問われるような世情があったほどだ。
このフェルマータ付きの4音X2回を、往年のマエストロはフェルマータを強調して一区切り付ける傾向にあった。
近年では、ここで腰を使わずに素早く鳴らし切る演奏が主流のようだ。
どちらにしても、この序奏なしで提示される第1主題は、旋律なのか?その方が私は気になる。
旋律を和声で装飾していくホモフォニーの概念からすると、これは主題と言えるような音ではないように思える。
にもかかわらず、ベートーヴェンはこの和音をいきなり提示し、展開し、まるでライトモチーフ(正に運命の動機)のようにこの曲中に配置し命を与えているのである。
ここからして新機軸。

だが、ベートーヴェンはこの冒頭だけでも何度も書き直している。
第1楽章を譜面に起こしながら、頭の中で第2楽章を作曲していたという天才モーツァルトと違い、ベートーヴェンは努力の人、このような新機軸を音符にするのにかなりの呻吟を繰り返したのである。
ベートーヴェンの心血が注がれた音楽がこれなのだ。

〇 オーケストラ編成の新機軸 〇
さらに、この曲にはオーケストレーション上も画期的な編成が行われている。
第4楽章に3本のトロンボーンを採用し、ピッコロやコントラファゴットも使用している。
オーケストラでそれらの楽器を使用することは珍しかった訳だが、ベートーヴェン以降そうした編成は、音の華やかさや厚みを求める際に、作曲上も一つの前提になっていくのである。


【ベートーヴェン 交響曲第4番】
交響曲第4番
【ベートーヴェン 交響曲第3番『英雄』】
交響曲第3番『英雄』
【ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第5番『春』 】
ヴァイオリンソナタ第5番『春』



<今日の一枚>
この余りにも有名なシンフォニーには、古今東西数々の名演と言われる演奏が残されている。
フルトヴェングラー、トスカニーニ、クレンペラー、ベーム・・、どれも全て個性的で素晴らしい。
こうした名演の、私はそのほんの一部しか触れたことは無いわけだが、その中でも今日選ぶのはこれだ。
クライバーの名演がSHM-CDで蘇った。音がいい!
クライバーの明快な指揮はウィーン・フィルを力強く牽引しており、鮮烈な音を聞かせてくれる。
■ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第7番 [Limited Edition, SHM-CD]
 カルロス・クライバー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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<推薦盤1>
あまりにも名演が多すぎて、ほんとに推薦盤には迷う。
そこで、最近特にお気に入りの古楽器での運命をお奨めしたいと思う。
フランス・ブリュッヘンだ。
古楽器だけに、音に締りがあって、この曲の緊張感と隙のない構成感を良く表してくれていると思う。
■ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、第5番「運命」
  フランス・ブリュッヘン指揮 18世紀オーケストラ

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2013.06.26 Wed l ベートーヴェン l コメント (0) トラックバック (0) l top

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