★ J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ 第2番 ★

このところ、バッハを聴いている。
朝の通勤電車の中でも、バッハを聴くと心落ち着き、しかもこの「ソナタとパルティータ」は何度聴いても飽きるということがない。
底の知れないバッハ、聴き始めると私は引き込まれてしまう。


〇 『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ BWV1001~6』 〇
この独奏ヴァイオリン為の楽曲は、3曲のソナタと3曲のパルティータが交互に配された、1番~3番までの全6曲からなっている。
この曲のバッハによる自筆浄書譜(所蔵:ベルリン国立図書館(プロイセン文化財団))には1720年と記されており、この所謂ケーテン時代のバッハは教会から解放されて、器楽作品を自由に書き上げた時期でもあり、また最愛の妻バルバラとの別れを迎えた時とも一致し、そうしたバッハを取り巻く環境の変化がこの作品に多大な影響を与えていたことは間違いないと思う。

バッハが実際に記した表題は
『Sei Solo. a Violino senza Basso accompagnato. Libro Primo.
da Joh: Seb: Bach. ao 1720.』


「通奏低音伴奏を伴わないヴァイオリンの為の6つの独奏曲。第1巻。1720年ヨハン・セバスチャン・バッハ。」
とでも訳せば良いだろうか。
おや?第1巻。まだあるのか?
そうだ、第2巻というのは、パブロ・カザルスの逸話でも有名な6曲からなる『無伴奏チェロ組曲』のことだ。

この「ソナタとパルティータ」、以下のような構成になっている。
1.ソナタ第1番ト短調 BWV1001
1.Adagio
2.Fuga. Allegro
3.Siciliano
4.Presto

2.パルティータ第1番ロ短調 BWV1002
1.Allemande (Double)
2.Courante (Double. Presto)
3.Sarabande (Double)
4.Tempo di Bourree (Double)

3.ソナタ第2番イ短調 BWV1003
1.Grave
2.Fuga
3.Andante
4.Allegro

4.パルティータ第2番ニ短調 BWV1004
1.Allemande
2.Courante
3.Sarabende
4.Gigue
5.Chaconne

5.ソナタ第3番ハ長調 BWV1005
1.Adagio
2.Fuga alla breve
3.Largo
4.Allegro assai

6.パルティータ第3番ホ長調 BWV1006
1.Preludio
2.Loure
3.Gavotte en Rondeau
4.Menuet I・II
5.Bourree
6.Gigue

全て、聴き応えのある曲集だが、今日は特にこの組曲中ある意味異色の取り扱いでもある、終曲にあの有名なシャコンヌを配する第2番を聴いた。

〇 ソナタ第2番イ短調 BWV1003 〇

1.Grave  イ短調 4/4拍子
2.Fuga イ短調 4/2拍子
3.Andante ハ長調 3/4拍子
4.Allegro  イ短調 2/2拍子


Adagioでは無く、Grave(重々しく・荘重に)から始まる。
第1番のソナタでも言える事だが、この出だしで背筋が伸びる。
装飾音も多く、跳躍的なパッセージもあって、陰鬱なメロディでありながら華々しい。
子供の頃に初めてこの冒頭(シェリングの演奏)を聴いたときには、何かすごいことが始まるような予感がしたものだ。
どこかでシャコンヌを聴いて、是非全曲が聴いてみたいと思って、家にあったシェリング盤を聴き始めたのだが、とにかく重音の迫力と開放弦まで駆使した和声、すごいな!とバッハに目を瞠った。

Fuga は長大だ。
前楽章からの余韻を引き、最初の2小節ほどの主題を300小節近い楽曲に仕立てている。
得意の対位法で積み上げられた音は、実に流麗にして荘厳だ。
息の長い音楽は、ひとたびも途切れることなく、最後まで長大なフーガを編み上げていく。

Andanteは平行調のハ長調で穏やかに書かれており、繰り返しを含む2部形式。
歌謡的なメロディと、まるで韻を踏むように繰り返されるオスティナートが、一挺のヴァイオリンによって織り成されていく。

Allegroは主調に戻って、これまでとは一転して重音は影を潜め、軽快な分散和音のメロディが心地よい。
しかもこの楽章は珍しくバッハ自身によるダイナミクスやボウイングの明確な指示がスコア上に残されており、解釈についても揺れが少ないように私は感じている。
逆に言うと、他の数々の箇所では演奏者による独自の解釈が為されており、この曲集がヴァイオリニストの永遠の目標になり、その演奏を拝聴する側にもはっきりと好みが分かれる要因のひとつになっていると思う。


〇 パルティータ第2番ニ短調 BWV1004 〇
『たった一挺のヴァイオリンでバッハは宇宙を・・・』 良く使われるフレーズだが、私にはこの2番のソナタとパルティータが正にその頂点に思える。
中でも、このパルティータ中の終曲シャコンヌが最高峰に君臨する。

1.Allemande 4/4拍子
2.Courante 3/4拍子
3.Sarabende 3/4拍子
4.Gigue 12/8拍子
5.Chaconne 3/4拍子
(全てニ短調)

定石通りアルマンドから始まって、クーラントではアルマンドの旋律を引き継ぐように独特の付点付きリズムで語られ、サラバンド、ジーグと典型的バロック組曲配列から最後は何故かシャコンヌ。
スペインが起源と言われる、このシャコンヌ、イタリア、フランスとあっと言う間に流行した、歌付きの舞曲であったようだ。
それがドイツに伝わり、我がバッハの手に掛かるとかくも見事な楽曲に仕上がる。

〇 シャコンヌ 〇
Chaconne は形式的に見ると、バッソ・オスティナートを伴う変奏曲と捉えられる。
また、同主調であるニ長調に転調する中間部を持つ3部形式と見ることも出来ると思う。
この曲は全曲を通して3拍子の2拍目からフレーズが始まるのだが、冒頭の付点四分音符と八分音符、この曲調を決定する重要なフレーズの始まりだが、バッハの自筆浄書譜を見ると旋律は単音で書かれている。
しかも和声は2分音符で書かれているので、八分音符を和音で弾くか単音で弾くか解釈が分かれるところだ。
私の愛聴盤であるヘンリック・シェリングは和音で弾いているし、ナタン・ミルシテインなどは単音で弾いている。
また、重音を弾く際のボウイングについても高音から弾くか低音から弾くか、旋律はどこまで弾き切るのかなど、演奏者によって違いがあり、この辺りは重箱の隅では済まない影響を曲調に与えており、じっくり聴いていると面白い。
全てを書き切っていないバッハのスコアをどう読み取るのか、演奏家の矜持を賭けた解釈の部分だ。


<今日の一枚>
今日は子供の頃に初めて聴いて、以来長年の愛聴盤であるヘンリック・シェリングで聴きたい。
シェリングの演奏は、非常に折り目正しい演奏だと思う。
必要以上にアゴーギクやディナーミクを入れることも無く、私的感情に耽溺することもない。
それを少し面白くないと感じる向きもあるかと思うが、とても安定したリズムとピッチの正確さもあって私は大変愛聴している盤だ。
■ バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(全曲)
 ヘンリック・シェリング(Vn.) 1967年録音盤

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<推薦盤1>
シェリングは素晴らしいと思っているが、ミルシテインの演奏には感動する。
ヴァイオリニストにとって重音奏法だとか早いパッセージの神業的な処理などのテクニックが何のためにあるのか、実感させられる演奏になっている。
曰く「テクニックは筋肉のコントロールであってはならず、あくまでも自分が望む演奏を実現するための手段でなければならない」
シェリングよりもロマンティックな演奏だと私は感じる。
■ バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ (全曲)
 ナタン・ミルシテイン(Vn.)

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実は素晴らしい演奏は他にも枚挙に暇が無いくらい存在するし、敬愛するバッハとなると、もっともっと挙げたいところだが、今日はこれくらいに絞った。
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2014.05.17 Sat l バッハ l コメント (6) トラックバック (0) l top

コメント

No title
★赤影★さん、こんばんは~!
いつも、お気遣いうれしく思っています。
本当にありがとうございます♪
2014.05.27 Tue l むぎわら. URL l 編集
Re: No title
むぎわらさん(^^)
忙しい時期なのでしょうが、お身体を大切に!
たまには良い音楽でも聴いてリラックスして下さいね!
頑張れ~~!(^^)
2014.05.27 Tue l ★赤影★. URL l 編集
バッハ
こんばんは。
以前、音楽が全く聞けない時がありました。
しばらく続いて、また聴けるようになったきっかけはバッハの音楽でした。
また、ショパンに憑りつかれた?ことがあり、引き戻してくれたのもバッハでした(^^♪
でも、バッハはあまり弾いていません^^;
聴き手にまわることが多いです(笑)
2014.05.28 Wed l レディピアノ. URL l 編集
Re: バッハ
レディピアノ さま、コメントどうもありがとうございます。

おはようございます。(^^)
そうなんですね・・・。
先日、レディピアノ さまのブログで、そのお話は拝見しましたが、その折にもよっぽどの事があったのだろうなぁ・・、と推察はしておりました。
確か、平均律に救われたとか・・。
ピアニストのバイブルとも言われる「平均律」、バッハには威厳と安らぎが同居していますがこの曲集にはクラヴィーア奏者に寄り添うバッハの想いがありますよね。(^^)

>ショパンに憑りつかれた??
おお!それは事件ですね。
ショパンには確かに魔力がありますから、心とシンクロしている内は帰りたくなくなるかも知れません。

> でも、バッハはあまり弾いていません^^;
ふむふむ、分かる様な気がします。
バッハって無闇に弾くものではないのでしょうね。
特別なのかも・・・。

これからも、愛するピアノで「良い音楽」を弾き続けて下さい。(^^)/
2014.05.29 Thu l ★赤影★. URL l 編集
こんばんは
記事に影響を受けてシェリングの無伴奏(特にソナタ1番あたりを)を聴いていました。67年の録音とは思えないほど、現在でも古臭いところがない。正確な音程や雑なところがない16分音符の処理など、普遍的とでもいうような演奏だと思います。いやぁ、まさにレガシィですねっ。
2014.06.21 Sat l sankichi1689. URL l 編集
Re: こんばんは
おはようございます。(^^)、コメントありがとうございます。

そうですか、シェリングを聴いておられましたか。
ソナタの1番あたり、これもいいですよね。
冒頭のAdagioは、全曲を代表するくらいのイメージがありますし、TV・映画などでも使われることが多いと思います。

>正確な音程や雑なところがない16分音符の処理など、普遍的とでもいうような演奏だと思います。
はい!シェリングのこの演奏、その通りだと思います。
例え少々古い録音だったとしても、良いものは良い!との事で、音楽を愛する仲間として嬉しいです。(^^)

>いやぁ、まさにレガシィですねっ。
あはは、綺麗にまとめて頂きまして恐縮です。(^^;)

2014.06.22 Sun l ★赤影★. URL l 編集

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