★ ドビュッシー 二つのアラベスク ★

今日は軽やかにドビュッシーの小品を聴こう。
ドビュッシーの中では初期のピアノ曲、『二つのアラベスク(Deux Arabesques)』だ。
1888年の作品なので、ドビュッシーが初めてバイロイトに赴いてワーグナーの音楽に接した頃だ。
この『二つのアラベスク』は、ドビュッシーの作品の中では、作風上も和声的な志向に於いてもさほど重要な作品とは位置づけられてはいないが、洒脱なメロディと独特の視覚をイメージするような風情で日本でもとても人気のある曲だ。

この曲は以下の2曲から構成される。

1.Andantino con moto ホ長調
2.Allegretto scherzando ト長調


〇 3連符の ホ長調 〇
3連符の溢れるアルペジオで、アラビア風の唐草模様よろしく繊細なメロディラインを両手で紡いでいく、この第1番はとても有名だ。
テレビの番組や映画などでも色々なところで聞かれる、ドビュッシーの代表的なメロディの一つと言っていい。
3部形式の冒頭はサブドミナントから入る序奏で、この曲のイメージを特徴付けている。
6小節目から、例の主題が始まるのだが、所謂右手3左手2のポリリズムだ。

〇 細かい旋律線 ト長調 〇
第1番では両手の旋律線で織り成していった唐草模様は、第2番では右手に集約されてより細かい模様を作っていく。
第1番よりもかなり躍動的なメロディが可憐だ。
転調を駆使した表情の変化も、模様の微妙な移り変わりを表しているかのようだ。

〇 ポリリズム 〇
第1番でとても印象的なポリリズムだが、ポリリズムというと数年前にヒットしたPerfume の楽曲を思い出す。
今思い出せば、あの曲は基本的には4拍子で3人のシンクロした独特のダンスと中田ヤスタカ氏のソフトウェア音源によるテクノ風のサウンドが斬新だった。
ポリリズムが出てくるのは間奏部に当たる箇所(あれを間奏というと中田氏に怒られる。あの部分も歌なのだ。)で、「ポ・リ・リ・ズ・ム」と繰り返す部分だ。
4拍の基本リズムに「ポ・リ・リ・ズ・ム(ポ・リ・ルー・プ)」の歌唱を5拍で乗せ、ベース部は3拍を刻み、シンセサイザーは倍のリズムを刻んでいた。
ライブの際には、このポリリズムが展開する箇所の後、ノッチが歌いだすまでの間が何故か大盛り上がりになる。
多分これはポリリズム効果だと思う。(変拍子からの解放感みたいなもの)

Perfume ポリリズム (Polyrhythm)

<今日の一枚>
今日はアントルモンでいこう。
コルトーから連綿と受け継がれてきたフランス人のピアノがここにはある。
だが、このアラベスクには少し驚くのだ。
特に第1番なのだが、びっくりするくらいの高速演奏だ。
最初聞いたときにはちょっと違和感を覚えたのだが、聞き込む内に音の粒が天から次から次と舞い落ちてくるようなアラベスクも、引き締まった音像で魅力的に見えてきた。
■ドビュッシー : 月の光、亜麻色の髪の乙女
 フィリップ・アントルモン(Pf.)

41GSUp66ezL__SL500_AA300_.jpg

<推薦盤1>
フランソワのドビュッシーは素晴らしい。
ドイツ音楽を毛嫌いしたきかん坊のフランソワ、愛するドビュッシーではイキイキと演奏しているし、時折見せる独自のエスプリも気が利いていて聞き手を飽きさせない。
■ドビュッシー:ピアノ曲集第2集~映像、他
 サンソン・フランソワ(Pf.)

61dSlyxURBL__SL500_AA300_.jpg
関連記事
スポンサーサイト
2014.01.28 Tue l ドビュッシー l コメント (13) トラックバック (0) l top

コメント

高速演奏、良いですねぇ~。
こんばんは。

ご紹介のCDとは違うもの(アントルモン・ピアノ名曲集)ですがアントルモンが演奏するアラベスク第1番を持っていまして、私もこの高速演奏はとても好きです。アントルモンのピアノは清楚な音色で、アラベスクなどを聴くと綺麗な真珠が零れ落ちるようなイメージを抱いてしまいます。
2014.01.28 Tue l akifuyu102. URL l 編集
No title
印象派モネの「睡蓮」の作品群に類似する音楽は ドビュッシーのピアノ曲だと直感するのですが、その代表曲、代表的演奏をご教示ください。枕頭の音楽とします。
2014.01.28 Tue l 火蛾. URL l 編集
Re: 高速演奏、良いですねぇ~。
こんばんは!
おお、アントルモンのCDをお持ちですか。
アントルモンの高速アラベスク、なかなか味がありますよね。(^^)
なるほど、「綺麗な真珠が零れ落ちるようなイメージ」ですか。
上手い表現をお使いになりますね。
そう、光を内に秘めた真珠は空からの恵みみたいに感じますね。(^^)
いつもコメントありがとうございます。
2014.01.28 Tue l ★赤影★. URL l 編集
Re: No title
火蛾 さま
はじめまして。(^^)
この度は、拙い私の小ブログにコメント頂きまして、ありがとうございます。
実は日頃から貴ブログは訪問させて頂いております。
私は無教養ですので、俳句はとんと解りませんが、
貴ブログの味わい深い俳句と、モノトーンを中心とした写真の
数々は、こんな私でも心動かされるものがあります。

モネの「睡蓮」等の所謂印象派絵画とドビュッシーの音楽につきましては
特に絵画に関して、3歳児の絵しか描けない小生にはハードルが高すぎます。
しかし、マネ、ドガ、セザンヌ、モネ、そして若い頃のルノワールも印象派と捉えた
時の、単なる写実ではない、あの「光」の動きや手触りのようなものを感じさせる
ドビュッシーの音楽、というイメージでパッと浮かびますのは・・・。

例えば、明るい水辺の光のもとで描かれる「睡蓮」でしたら、Images 1(映像 第1集)、
中でも1曲目の『水の反映(Reflets dans l'eau)』。

管弦楽曲ですが、『夜想曲』(Nocturnes)、とりわけ1曲目の『雲 (Nuages)』
にはキラキラした光ではなく、少しぼやけたくすんだような「睡蓮」がかぶります。
この曲には東洋風の5音音階も使われていますし、「睡蓮」の日本風の橋と重なる
ところがあります。

かなりパーソナルな印象になっていますので、お尋ねの代表曲と言えるかどうか
自信はありません。
お許し下さい。

尚、Images 1(映像 第1集)の小生の推薦できる音源は、アラベスクで挙げました
フランソワのものやアントルモンの演奏になります。
私も愛聴しております。
(アントルモンのCDは「ドビュッシー:ピアノ名曲集」というタイトルのものになります)
2014.01.29 Wed l ★赤影★. URL l 編集
こんにちは
10年前ぐらいでしょうか。結婚披露宴で新婦が演奏して出席者から素敵な曲ねと、ため息が・・・。私も昔から好きです。赤影さんの記事は、曲の構成から演奏まで考察が深いですね。なるほどアントルモンは高速演奏なのですねっ。実は名前だけで聴いたことがありません。参考になります。
2014.01.29 Wed l sankichi1689. URL l 編集
Re: こんにちは
こんばんは!
そうですか、披露宴で新婦が演奏ですか、素敵な場面ですね。
この曲を上手に演奏できれば、ため息を誘うことも出来るでしょうね。
素晴らしい腕前の新婦さん、新郎さんも惚れ直したことでしょう。

「考察が深い」などと、お世辞と分かっていても嬉しいです。(^^)
ありがとうございます。
私もsankichi1689 さんの、音楽を愛する気持ちが良く伝わってくる
記事が大好きです。
先日の日フィルの定期演奏会の記事でも、コンサートを楽しんでいる
sankichi1689 さんの心情や、当日の様子、演奏の内容や質までが
ほんとに「音楽愛」を持って伝わってきます。
これからもお願いしますね。

いつもコメントありがとうございます!(^^)
2014.01.29 Wed l ★赤影★. URL l 編集
こんばんは
飛んで火に入る夏の蟲こと火蛾と申します。
昨夜はご挨拶もせずに、お願いばかりをしてしまいました。なにとぞご容赦を。

いろいろとご教示いただき、ありがとうございます。
ピアノ曲『水の反映』。まさしくこの曲が、私が求めていたものです。
邪道ですがYouTubeでアントルモンとフランソワの演奏を聴いてみました。
どちらもすばらしい演奏ですが、アントルモンの方が私の「睡蓮」のイメージに近いです。
http://www.youtube.com/watch?v=Y5sZcMC1B9A
http://www.youtube.com/watch?v=9_OZr09HkDo

アントルモンの「ドビュッシー:ピアノ名曲集」、探してみます。
これからもどうぞご教示ください。
2014.01.30 Thu l 火蛾. URL l 編集
Re: こんばんは
火蛾 さま
早速のコメント、ありがとうございます。(^^)

『水の反映』、確認して頂けたのですね。
しかも、火蛾 さんのイメージする「睡蓮」に連携する
ものがある、ということで嬉しいです。
なるほど、アントルモンの演奏が 火蛾 さんの感性に
マッチするのですね。
私の個人的な思いとしましては、印象派の絵画を愛する
方にはアントルモンやクロスリーのピアノは大切にして
頂けるのではないかと存じます。
(私も解らないながらも、あの時代の絵画は大好きです)

YouTubeで聴けるのですね。
知りませんでした。
良いことを教えて頂きました、ありがとうございます。
アントルモンの音源は、CDでしたらYouTubeのものより
もかなり音質の良い状態で楽しめると思います。(^^)

これからも、どうぞ宜しくお願い致します。
2014.01.30 Thu l ★赤影★. URL l 編集
こんばんは
ドビュッシーのアラベスク一番は明るい海の中の出来事のような感じがします。

序奏から昇りつめて行ったところで一挙に何かキラキラしたものが光と共に降ってくるような、そして揺蕩う。

最後にまた昇って帰って行く。。。と、こんなイメージです。
とても詩的で映像的な曲だと思います。

アレはポリリズムというのですか。
誰かが苦労した記憶がありますw
私的にも思い出深い曲です^_^
2014.01.30 Thu l 薔薇ねこ. URL l 編集
Re: こんばんは
こんばんは!

ああ、なるほど。(^^)
「明るい海の中の出来事のような感じ」ですか。
海の中と捉えると、『キラキラが揺蕩う』という
感覚が解り易くなりますね。
そうですね、とてもイマジネーションを掻き立てられる
曲ですよね。

右手と左手で異なるリズムを刻むというのは、聴いている
方はちょっと新しいリズム感覚で面白いのですが、弾く方
は慣れるまで大変ですよね。
苦労されたのはお子様ですか?(^^)

私はこのような素敵な曲を、スラッとに弾けてしまう方に
憧れます。
2014.01.30 Thu l ★赤影★. URL l 編集
承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
2014.03.04 Tue l . l 編集
ポリリズム
★赤影★さん、こんばんは。
先日、NHK教育の「ムジカ・ピッコリーノ」という番組で、パヒュームのポリリズムを題材に、このリズムについての解説をやっていました。★赤影★さんの解説どおりで、納得したのを、ふと思い出しましたよ。やっと私の頭でも理解できた気がします!
2014.03.24 Mon l sankichi1689. URL l 編集
Re: ポリリズム
こんばんは。
コメントありがとうございます!(^^)
「ムジカ・ピッコリーノ」ですか。
楽しそうな番組ですね。
今度チャンスがあったら観てみたいな、と思います。
なるほど、そこでポリリズムのお話が出ていたんですね。
あの独特のリズム感って、結構癖になりますよね。(笑)
私、かなり変人で通っていまして、「妙」なものって好きみたいです。(^^;)
2014.03.24 Mon l ★赤影★. URL l 編集

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://007mousike.blog.fc2.com/tb.php/103-10d435af
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)