★ チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 ニ長調作品35 ★

今日は、素敵な薔薇と手作りインテリアなどのコンテンツ、そして可愛いジル猫ちゃんがご案内役の「ギャラリー薔薇ねこ館」さんのご提案で、チャイコフスキーの唯一のヴァイオリンコンチェルトであるニ長調作品35を聴こう。
『ギャラリー薔薇ねこ館』

このあまりにも有名なコンチェルトは、私にとって小学生の頃の定番コンチェルトの一つだった。
所謂3大ヴァイオリンコンチェルトや4大ヴァイオリンコンチェルトと言う以上に、あまりにも美しくメランコリックで盛り上げ方の壷を知り尽くしたチャイコフスキーの手練にすっかりやられてしまったのである。
実は同時期にピアノコンチェルトの1番にも嵌り、毎日チャイコフスキーに浸っていた頃があったことを思い出す。

〇 3大(OR4大)ヴァイオリンコンチェルト 〇
ちなみにこの3大あるいは4大コンチェルトについては、

①ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス
②ベートーヴェン、メンデルスゾーン、チャイコフスキー


の2通りの説があった。
そして、
・ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス、チャイコフスキー
で4大コンチェルトとする説は、ほぼ定説になっているようだ。

これに、シベリウスやドヴォルザークなどを加えるべきといった色々な議論があるが、キリが無いのでここは4大に止めておこう。

また、4大コンチェルトの内ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキーはいずれもニ長調で書かれている。
ヴァイオリンの場合、調弦の関係上倍音の響きが豊かになるこのニ長調が好んで使われる。
パガニーニの第1番もニ長調だ。(パガニーニのスコルダトゥーラを用いた演奏が物議を醸したコンチェルトだ)
他にもハチャトゥリアン、シベリウスなどはニ短調で書いている。

〇 二人の女性 〇
この曲が作曲されたのは1878年で、その前年にはチャイコフスキーにとって大変重要な女性二人との出来事があった。
一人はモスクワ音楽院での教え子であるアントニーナ・ミリコーヴァという女性で、1877年5月にミリコーヴァから愛を告白され同年7月にスピード婚を遂げている。
しかし、この結婚は僅か20日程で破局を迎える。(チャイコフスキーが同性愛者であったことは現在では周知の事実となっている。)
もともと本意ではなかったであろうこの結婚生活はチャイコフスキーを精神的に痛めつけ、モスクワ河での自殺未遂へと進んでしまう。

もう一人、運命的な女性とのプラトニックな愛情と、経済的な援助が始まったのもこの頃。
その女性は大富豪のフォン・メック夫人だ。
未亡人だったメック夫人は、ドビュッシーも音楽教師として出入りしていたことがあり、音楽家への理解が深いお金持ちだった。
そのメック夫人がチャイコフスキーの申し出を受け入れ、1877年から彼を経済的に援助するようになった。
この二人は生涯逢うことは無く、プラトニックな関係のままで、その後13年に渡ってチャイコフスキーは年間6000ルーブルもの年金を受け取ることになる。
チャイコフスキーのモスクワ音楽院での月給が50ルーブルほどだったというデータもあるので、この額は相当なものだったに違いない。(詳細は検証していません)

そんな環境の中でも、チャイコフスキーは精力的に代表作を完成させていったのがこの時期でもある。
1876年には交響曲第4番(弊ブログでも御紹介した)、1877年には歌劇『エフゲニ・オネーギン』、バレエ音楽『白鳥の湖』などを仕上げている。
離婚後暫くの間は創作活動もお休み気味になるのは、やはり立ち直るのに時間を要したということなのかもしれない。

〇 献呈者から拒否 〇
私が小学生だった頃の一時期学校から下校すると、家で必ずと言って良いほど聞いていたチャイコフスキーの二つのコンチェルト(ヴァイオリンコンチェルトとピアノコンチェルト第1番)は、どちらも献呈者からは拒否されてしまう。
ピアノコンチェルトはニコライ・ルビンシテインに、ヴァイオリンコンチェルトはレオポルト・アウアーによって演奏不可能とのレッテルを貼られ、ヴァイオリンの方はロシア人のヴァイオリニストで音楽教師であるアドルフ・ブロツキーに献呈されている。
ブロツキーによる初演は失敗に終わるが、彼は懸命に粘り強く演奏活動を続け、やがてアウアーもこの曲を認めるようになり、長い歴史を誇る西洋音楽の中で4大ヴァイオリンコンチェルトとまで言われるようになった訳である。
ブロツキーは正に功労者だ。

〇 親しみ易い 典型的な構成 〇
メンデルスゾーンのホ短調のコンチェルトとカップリングされることの多かった、日本でも非常に人気の高いこのコンチェルトは次の3楽章から成っている。

1.第1楽章(アレグロ・モデラート-モデラート・アッサイ)
ニ長調、ソナタ形式で書かれたこの楽章、まずアレグロ・モデラートの序奏部がとても印象的だ。
第1ヴァイオリンによる導入で管とのやりとりが上手い。
そして、独奏ヴァイオリンが早くもカデンツァ風に入ってきて、主部に移行する。
この序奏部、シンプルなのだが天才メロディメーカーらしいチャイコフスキーの掴みの上手さが既に現れている。
第1主題、独奏ヴァイオリンによる大変叙情的なメロディが奏でられる。
序奏部もそうだが、第1主題提示後ここで一盛り上がりを作って、第2主題も独奏ヴァイオリンに現れる。
こちらは、とても流麗なメロディで、よりメランコリックに聴こえる。
展開部では重音も駆使し、オーケストラも金管が色彩感を増す。
チャイコフスキー自身の作曲によるカデンツァの後、再現部では二つの主題を中心にダイナミックで推進力のある音楽がコーダまで突き進む。
第1楽章だけで、演奏時間は約20分ほどで全体の半分くらいを占める。

2.第2楽章(カンツォネッタ、アンダンテ)
こちらはト短調の3部形式か。
管楽器オンリーの導入に続いて、独奏ヴァイオリンがとてもとても悲しげなメロディを奏でる。
おお!チャイコフスキーだ。
この楽章での独奏ヴァイオリンと管楽器の遣り取りはとても美しい!
独奏者のロマンティシズムが発揮される楽章になる。

3.第3楽章(フィナーレ、アレグロ・ヴィヴァーチッシモ)
主調に戻ってロンド形式。
第2楽章からは、切れ目無く演奏される。
静かな第2楽章からいきなりオーケストラによる躍動的な序奏に入って、それを独奏ヴァイオリンが受けるのだが、ここでのピチカートの使い方もメリハリが利いていて上手い!
ロシア民謡風のロンド主題とそれより少しスローな中間主題が繰り返されながら、次第に激しく盛り上がっていって、最後は独奏ヴァイオリンとオーケストラが絶妙に絡み合って曲を閉じる。



<今日の一枚>
今日は私が子供の頃から愛聴してきたフランチェスカッティで聴こう。
このフランスのヴァイオリニストの美音は、他に類を見ないもので、とてもロマンティックでお酒に合う音色だ。
カップリングのメンデルスゾーンは私の父が最も愛した演奏だったこともあって思い出多い盤になっている。
■メンデルスゾーン & チャイコフスキー : ヴァイオリン協奏曲
 ジノ・フランチェスカッテッィ(Vn.)
 トマス・シッパーズ指揮ニューヨークフィルハーモニック
 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団

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<推薦盤1>
この曲の名盤は数え切れないほど挙げたいところだ。
正直に言って、これはいい!と思った盤は2桁あるのだが、その中でもチョン・キョンファの演奏は素晴らしいと思う。
とても情熱的で心揺さぶる演奏だ。
彼女はチャイコフスキーを得意としていることがうなずける出来だ。
シベリウスとカップリングされた、衝撃のデビュー盤も良いが、ここはメンデルスゾーンとカップリングされたデュトワのサポート盤を挙げておく。
■チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
 チョン・キョンファ(Vn.)
 シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団

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<推薦盤2>
昔から名盤の誉れ高いオイストラッフも勿論一聴の価値があるが、それより少し新しいところでデュメイを挙げたい。
卓越したテクニックと、並外れた表現力、それをベースに正に自由奔放に歌っている。
■チャイコフスキー&メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
 オーギュスタン・デュメイ(Vn.)
 エミール・チャカロフ指揮ロンドン交響楽団

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2014.01.19 Sun l チャイコフスキー l コメント (10) トラックバック (0) l top

コメント

こんにちは
生で聴いたときの華やいだ雰囲気、盛り上がりが素晴らしいですね。仰るように『盛り上げ方の壷を知り尽くした』ですね。ブラームスも好きですが、生で聴くとオケに埋没して、これがイマイチ盛り上がらない。

私は、第二楽章のあの独墺系とは一線を画す独特の情感の表出が好きですね。
2014.01.19 Sun l sankichi1689. URL l 編集
Re: こんにちは
こんばんは!
そうですね、LIVEで聞くとチャイコフスキーはさらに価値が増しますね。
ここぞという時の盛り上げ方は、憎らしいほど上手いですから。(^^)
なるほど、ブラームスの場合はオケが分厚いので独奏ヴァイオリンが負けて
しまうことがありますね。

第2楽章、あれはベートーヴェンやブラームスには書けないメロディですね。
私も、ヨーロッパに最も近いけれど、ロシア人特有の情緒的な音楽って好きです。
これは多分日本人が好きな「音」なんでしょうね。
2014.01.19 Sun l ★赤影★. URL l 編集
No title
さっそくベタなリクエストにお答えくださりありがとうございます。でもチャイコフスキーといえば やはりこれですよね(*^_^*)

一楽章でのカデンツアでうっとりして、ゆったりしてたら、二楽章でこれぞロシア~って響きが聴こえてきて、続いてなんだか知らないうちに三楽章の華やかなフィナーレでソロとオケの協奏(競争?)のうちに、アレヨアレヨという間に終曲するんですよね。

何だかミモフタモナイ言い方ですみませんw
でも、この何とも言えない華やかさがこれぞチャイコフスキーっていう感じです。
演奏は千住真理子さんのVnが好みです。
おすすめのフランチェスカッティ、セル クリーブランド盤はぜひ聴きたいです。。
2014.01.19 Sun l 薔薇ねこ. URL l 編集
コメントありがとうございます
薔薇ねこ さま

コメントありがとうございます。
チャイコフスキーと言えば、これですか、アハハそうですね。(^^)

千住さんの盤は一度だけ聞いたことがあります。
タクトはヴァーレックさんでしたっけ?
千住さんの「音」は、私も大好きです。
艶やかで心の琴線に響いてきます。
CDを持っていませんので、聞き込めていませんから
ボーナスがドーンと出たら是非入手したいと思います。(^^)
2014.01.20 Mon l ★赤影★. URL l 編集
六大協奏曲・・・
ヴァイオリン協奏曲というと、やはりメンデルスゾーン・チャイコ・ブラームス・ベートーヴェンが定番だと思いますが、個人的には、シベリウスとブルッフを是非入れて「六大協奏曲」として欲しいものです・・・(笑) ま、キリがありませんけどね・・
メック夫人の事なのですけど、二人の間には膨大な往復書簡が残され、生涯一度も会わなかったというのは、何か現代ではありえない話というか、すごい太っ腹のパトロンに巡り会ったものですよね。
メック夫人がチャイコへの年金を打ち切ったのは、
「チャイコのホモ疑惑の証拠を掴んだから」なんて言う人もいますけど真相はどうなんでしょうね・・
でもチャイコのヴァイオリン協奏曲は、永遠不滅の名曲ですよね。私も大好きです。
一つ難を言うと第一楽章が長すぎるかな・・
だけど第一楽章のカデンツァが終わった後の牧歌的な木管がいいのですよね・・・
でも圧巻は第三楽章ですね・・
あのスピード感は堪らないものがあります。
ホント、ヴァイオリンソロとオケの格闘戦みたいな雰囲気もありますし、迫力満点ですね。
生で聴いた限りでは、ヴィクトリア=ムローヴァと
戸田弥生のソロが極めて印象的です。
前者は、闘争本能むき出しの野獣みたいな演奏なのに対して、後者はレガート奏法的な優雅な雰囲気でした。
ホント極めて対照的な解釈なのですけどね・・
CDで聴く場合は、個人的な意見なのですけど
少し妙なところをお勧めしたいと思います。
ナクソスレーベルから出ている
西崎崇子/スロヴァーク管弦楽団が
なぜか私のストライクゾーンに入っています・・
これ素晴らしい演奏だと思うのですけど、評論家の先生からは完璧無視されているのですよね・・
2014.01.20 Mon l ぬくぬく先生 . URL l 編集
何度聴いても良いですね(^^)
★赤影★さん、こんばんは。

今、★赤影★さんの記事を読みながら神尾真由子さんの演奏に浸っているところです。
作品が生まれた背景など大変面白く読ませて頂きました。

この曲だけはどんな時に聴いても本当に聴き入ってしまいます。私も大のお気に入りです。
ヴァイオリンも然ることながら第1楽章でのトランペットの伴奏も大好きなのです。(^^)

チョン・キョンファとシャルル・デュトワ盤がどんな演奏を聴かせてくれるのかとても気になります。是非、聴いて見たいです。
2014.01.20 Mon l akifuyu102. URL l 編集
Re: 六大協奏曲・・・
こんばんは!
シベリウスにブルッフを入れて6大協奏曲ですか?(^^)
そうでしょ?4じゃ足りないんですよね。(^^)

メック夫人とのプラトニック・ラヴは、現代ではまずあり得ないでしょうね。
いくらなんでも道楽が過ぎるというか、ある意味無責任というか・・・。
年金が打ち切られた理由は分かりませんが、メック夫人の子供たちが止めさせた
というような話を聞いたことがあります。
真相は闇の中なのでしょうね。

あはは、確かに第1楽章が長いですね。
全体の半分を占めていますから。
ピアノコンチェルト1番も第1楽章が半分以上の時間を占める頭でっかち構造ですね。
ムローヴァさんはソ連時代に亡命した人ですね。
小澤征爾とのコンビで録音した盤は聞いたことがありますが、生で聞いたことは
ありません。
戸田弥生さんもイザイやバッハは聞いたことがあるのですが、チャイコは聞いたことが
ありません。
ムローヴァさんが気合が入ると野獣みたい・・というのは分かるような気がします。
西崎崇子さんというと、ナクソスの社長さん??のご夫人でしたっけ?
ああ、そういえば戸田さんも西崎さんも桐朋学園の出身でしたよね。
西崎さんの演奏は、ヴィヴァルディくらいしか聞いたことがないのですが
チャイコフスキーのコンチェルトも録音しているのですね。
今度聞いてみたいと思います。(^^)

長いコメントありがとうございました。
2014.01.20 Mon l ★赤影★. URL l 編集
Re: 何度聴いても良いですね(^^)
こんばんは!
コメントありがとうございます。(^^)

akifuyu102 さん、早速神尾真由子さんの美しい音色に全身浸っている
のですね。(^^)

さすがにakifuyu102 さんですね。
金管のトランペットの華やかな音に心が惹かれる訳ですね。
ホルンを吹きたくなってしまうのではありませんか??
お上手だったのでしょうね。(^^)

2014.01.20 Mon l ★赤影★. URL l 編集
フランチェスカッティ聴きました
フランチェスカッティ 取り寄せて聴いてみました。
確かにうっとりする美音ですね(*^_^*)
甘い歌声のようなまろやかな音でうっとりしてしまいました。
古い収録なのに 録音もすごく良くててびっくりです。

そして、チャイコフスキーはもちろんですが、
メンデルスゾーンがオケの音とマッチして秀逸だと思います。
ご紹介ありがとうございました。
2014.01.26 Sun l 薔薇ねこ. URL l 編集
Re: フランチェスカッティ聴きました
こんばんは!
フランチェスカッティをわざわざ入手して聞いて頂けたのですか。
おお!ありがとうございます。
ご紹介した甲斐があるというものです。
このヴァイオリニストの奏でる音は高貴な美音とでもいいますか
とても甘いのですが、決して下品に堕ちることがありません。
そうそう、古い録音なのですがそれを感じさせません。

そして、仰るとおり、チャイコフスキーもいいのですが、メンデルスゾーンが
素晴らしいのです。
セルのタクトは少し速めのテンポで、フランチェスカッティの美音を程よく引き締めて
緊迫感のあるメンデルスゾーンを作り上げています。
正に「協奏曲」なのですよね。(^^)
2014.01.26 Sun l ★赤影★. URL l 編集

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