★ ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 Op.15 ★うかうかしていたら、もうすぐ梅雨の季節になってきた。
雨の日々が続く前に、せめて音楽は爽やかなものを聴きたい。
おっかない風貌だが、青年期のベートーヴェンの双眸には輝きがあった。
そんな頃の軽やかなピアノコンチェルト。
○ ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 Op.15 ○この曲は、1794年から95年にかけて書かれたと言われており、作曲年代的には続く第2番よりも後に書かれたそうだ。
数年前に書かれた変ホ長調(ピアノパート譜のみ現存)のコンチェルトを入れると実質3番目のコンチェルトということになる。
1.第1楽章(Allegro con brio)ハ長調。4/4拍子の所謂協奏ソナタ形式。
まずとてもシンプルに「ドー、ド、ド、ド」と主音の連打で始まる。
24歳のベートーヴェンは素直で明瞭な主題を提示する。
まるでハイドンのような素直さだ。
独奏ピアノが入って来ても、モーツァルトのごとく極めて優雅なメロディラインだ。
途中、一呼吸おいて変ホ長調に転調する。
この辺はいかにもベートーヴェン、単純なままでは終わらない。
2.第2楽章(Largo)変イ長調 。2/2拍子の三部形式。
いきなり独奏ピアノから入る緩徐楽章。
ほのぼのとした田園風景が浮かんでくるような美しい楽章だ。
おっかない顔の楽聖だって、舐めて貰っては困る。(誰も舐めてはいないと思うが・・・)
こんなに温もりのあるメロディが作れるのである。
3.第3楽章(Rondo Allegro)主調に戻り、2/4拍子のロンド形式。
この楽章もいきなり独奏ピアノがロンド主題を軽やかに歌い出す。
厚いオーケストレーションに彩られて、ピアノがいかにも楽しげに躍動する。
そして、最後は堂々と締めくくられる。
全体でも40分足らずの演奏時間で、実に爽やかなコンチェルトである。
<今日の一枚>今日はグルダでいこう。
グールドやバーンスタインでも良かったのだが、ベートーヴェン初期の傑作をウィーンの正統的な音で聴きたかった。
気儘と評されることもあるグルダだが、このベートーヴェンでは一つ一つのパッセージを緻密に丁寧に積み上げている感がある。
所謂美音に拘る訳では無く、モーツァルト的なベートーヴェンをとても真面目に表現していると思う。
ホルストとウィーンフィルのサポートも完璧だ。
使用ピアノは勿論ベーゼンドルファー。
■ ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番/第2番
フリードリッヒ・グルダ(Pf.)、ホルスト・シュタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<推薦盤>私はグールドには慎重なのだが、このベートーヴェンは実に爽快で後味も良好。
グールド自身あまり協奏曲は好まなかったようだが、ベートーヴェンやバッハは好んで録音も残している。
実に速いテンポで、とてもモーツァルト的なベートーヴェンだ。
(第1番はゴルシュマンの指揮によるコロンビア交響楽団の録音)
■ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集
グレン・グールド(Pf.)
指揮:ゴルシュマン(ウラディミール), バーンスタイン(レナード), ストコフスキー(レオポルド)
オーケストラ:コロンビア交響楽団, ニューヨーク・フィルハーモニック, アメリカ交響楽団