★ モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番 ★
今日はモーツァルトだ。
モーツァルト自身はクラヴィーアのヴィルトゥオーソであった訳で、そのクラヴィーア曲は自分が演奏することを前提にしたものが殆どなのだと思う。
だが、ヴァイオリン教則本を執筆した父レオポルトの影響もあって、ヴァイオリン奏者としても一流であり、25歳くらいまでは所謂二足の草鞋状態だった。

このヴァイオリン協奏曲というジャンルは、モーツァルトにしては作品の数が少ない。
ヴァイオリンソナタが40曲以上残されているのに対して、コンチェルトは僅かに5曲である。
これは、ヴァイオリンコンチェルトというジャンルがモーツァルトにとっては自身の為というよりも、誰か他人を想定しての作曲ジャンルであった証左のように感じている。
尚、ヴァイオリン協奏曲には第6番、第7番も存在するが、これは現在では偽作である可能性が高いということだ。

〇 ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216 〇
モーツァルトは、第2番から第5番までのヴァイオリンコンチェルトを1775年の6月~12月の間に一気に書き上げている。
1番、2番ではまだ若干ヴィバルディを思わせる、ソロとトゥッティのやり取りになっており、バロック後期の香りがする。(それはそれで典雅で良いのだが)
ところがあまり時を経ずに作曲されたこの第3番ではかなりの進化を遂げている。
特にオーボエ、フルートといった管楽器の扱いについては、弦楽器とのバランスやその特性を活かして音楽の奥行きを作っているように感じる。

〇 オペラからの転用 〇
この曲の第1楽章第1主題はオペラ『IL RE PASTORE』K.208からの転用を指摘されている。
K.208を聞くと、確かにAmintaのアリアの出だしとそっくりな管弦楽のメロディだ。
モーツァルトの作品群で言うと、ディヴェルティメント風とも言える味付けのこの主題から入って、第2主題はオーボエとホルンに出てくる、そして独奏ヴァイオリンが後を引き受けて、きちんとソナタ形式。

〇 優雅な第2楽章 〇
この楽章はオーボエがフルートに代わって、ミュートしたオケのヴァイオリンと低弦のピチカートが印象的だ。
独奏ヴァイオリンは、その伴奏の上でひたすら甘美なメロディを歌う。
この音の構成、モーツァルトにとって、この後一つのパターンになっている。

オーケストラの編成が小さいため、オーボエがフルートに代わっただけで、音の印象がガラリと変わるのが面白い。

〇 変化の多いロンド形式 〇
第3楽章はロンド形式なのだが、軽快なロンド主題を持つABACADAといったロンド形式になるのだろう、このDに相当する部分が大変ユニークで、さすがモーツァルトである。
突然ト短調に変化して、曲調からして豹変する。

2番~5番のヴァイオリンコンチェルトは、良くギャラント様式だと言われるのだが、確かにバロック的な色彩は影を潜め、より洒脱なフランスの香りもするし繊細な主旋律を持ったホモフォニー音楽だ。
だが、私は上記の様にモーツァルトが第2番よりも楽器の特性を活かした音楽創りを目指し、オーケストラと独奏楽器の音響効果とバランスを考え始めたことに興味を覚える。
2番からの時間経過は、僅か2~3ヶ月のことなのだから・・・。
何があったのか・・、神のみぞ知る、なのか・・。

<今日の一枚>
アルテュール・グリュミオーによる名盤だ。
正に正統派と言えるグリュミオーのヴァイオリンは、叙情的でこの曲にぴったりである。
■モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3&5番/協奏交響曲
 アルテュール・グリュミオー(Vn) サー・コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団

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<推薦盤1>
カラヤン拘りの録音といえるだろう、ムターとの競演だ。
美音を追求するカラヤンらしい演奏で、まだあどけないムターが初々しい!
ムター14歳の時の録音だ。
この純粋な曲に無垢なムターの演奏とカラヤンという組み合わせはアリだ。
■モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3&5番
 アンネ=ゾフィー・ムター(Vn) ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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2013.07.28 Sun l モーツァルト l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ベートーヴェン 劇付随音楽 『エグモント』 ★
今日は、大変久しぶりにベートーヴェンの『エグモント』全曲を聞いた。
これは、大変高い見識と美しい文章・写真のブログを発信していらっしゃる「エストリルのクリスマスローズ」さんの記事に触発されてのことである。
「エストリルのクリスマスローズ」さん

〇 エグモント 〇
ベートーヴェンの劇付随音楽『エグモント』は、ゲーテの戯曲『エグモント』を基に1809年~1810年にかけて作曲されたものである。

エグモント伯ラモラールは実在の歴史上の人物で、スペイン王フェリペ2世による宗教弾圧の中でアルバ公の軍隊に対して果敢に抵抗した英雄だ。
しかし多勢に無勢、アルバ公に捕らえられたエグモント伯は死刑の宣告を受け、1568年6月にグラン・プラスで処刑された。
(「エストリルのクリスマスローズ」さん撮影の写真は、このグラン・プラスなのだと思うが、街の風景は往時の凄惨な事件とはかけ離れた美しさだ。)

ゲーテはこの史実に則って、エグモントを主人公にする戯曲を書き上げたのである。
ゲーテの戯曲では、16世紀のスペインの圧制からの独立運動の指導者としてエグモント伯は描かれていたと記憶する。(多少記憶が曖昧で、申し訳ありません。)


〇 劇付随音楽『エグモント』 〇
演奏会でも、CD等でも有名な序曲のみを取り上げることが多いが、ベートーヴェンが作曲したのはゲーテの戯曲に従って、序曲を含めて以下の10曲になる。

1. 序曲
2. 太鼓は響く(クレールヒェン)
3. 間奏曲1
4. 間奏曲2
5. 喜びに満ち、悲しみに満ち(クレールヒェン)
6. 間奏曲3
7. 間奏曲4
8. おゝ常に変らぬ忠実な眠りよ、年来の友よ(エグモントのモノローグ)クレールヒェンの死
9. すべては過ぎ去った。全巻の終りだ。(エグモントのモノローグ)メロドラマ 甘美な眠りよ、お前は純粋な幸福のように、快くやって来てくれる(エグモント)
10. 冠が消えた(エグモントのモノローグ)勝利の行進曲

ベートーヴェンが『エグモント』を作曲した時期は、丁度第5番のハ短調交響曲『運命』や第6番『田園』を書き上げた2年後くらいであり、非常に充実した創作活動を送っていた頃だ。
この曲も、第5番『運命』や第9番『合唱付き』のように、「苦悩や運命との戦い」から「歓喜」へと昇っていく。
(この曲の場合は、エグモントの死後の賞賛ということになるのだが)


〇 序曲 〇
演奏機会の多い「序曲」は、さすがに重厚でエグモントの悲劇を象徴するドラマティックな音楽になっている。
この序曲はソナタ形式で書かれており、第1主題は大変勇壮で動きの大きい音楽構成で、私はエグモントの「勇気」を暗示するように感じ、第2主題はそれに加えてエグモントの「慈愛」を感じる。

そして、一番印象に残るのは序奏の冒頭、ユニゾンで鳴る一音。
この音は何なのだろう・・。
昔から考えてきたのだが、合理的な結論には至っていない。
只ならぬ雰囲気を醸すことが狙いなのだとしても、何故ユニゾンなのか・・。
全く「濁らない音」が必要だったのか。

エグモント伯の決意を現す純粋な動機、或いは具体的な音(叫びや大砲)をイメージしているか。

〇 ゲートとの邂逅 〇
ベートーヴェンは予てから敬愛していたゲーテと1812年に邂逅している。
ゲーテ63歳、ベートーヴェン42歳の夏に、カールスバートで避暑中だったゲーテがベートーヴェンのもとを訪れるという形で実現したようである。
ゲーテは奥様に手紙でベートーヴェンの人物を伝えるに、「すこぶる強い集中力をもち、精力的且つ内面的な芸術家」という言葉を使っている。
正に、この2人の巨星の邂逅、 「想像するだけで指先が震えるような緊張」を覚えませんか。
(『エストリルのクリスマスローズ』さんから引用)


<今日の一枚>
今日は、この『エグモント(全曲)』を東ドイツ時代の名指揮者ボンガルツの盤で聞こう。
全曲を聞けるCDは稀少で、それだけで価値があるのだが、この演奏は非常に引き締まった、緊張感のあるエグモントだ。
■ベートーヴェン:付随音楽「エグモント」(全曲)
 ハインツ・ボルガンツ指揮 シュターツカペレ・ベルリン

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2013.07.25 Thu l ベートーヴェン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ヴェルディ 歌劇 『アイーダ』 ★
今日はヴェルディの『アイーダ』を楽しもう!
このオペラは1870年~71年にかけてヴェルディが作曲した4幕物のオペラだ。
物語はエチオピア王の娘アイーダとエジプトの若き将軍ラダメスの悲恋を描いたもので、ヴェルディにとってこの時期の集大成的な大作オペラとなった。
苦労を重ねたヴェルディが、イタリアオペラの作曲家として成功し念願だった農場の経営も順調であり、生活面では安定してきた訳だが、ドイツの巨星ワーグナーの音楽を強く意識しつつ、自身のオペラにある意味で限界を感じていたヴェルディは、『アイーダ』の後長い音楽的沈黙に入ることになる。

〇 一大スペクタクル 〇
舞台は古代エジプトであり、壮麗で大掛かりな舞台設定を必要とし、有名な第2幕の凱旋の場では強力な独唱陣に加え、大勢の合唱やバレエまで登場し、舞台上にはエジプト(アイーダ)・トランペットと呼ばれる細長い独特の管を始め、軍楽隊も用意されて、あの有名な行進曲が奏でられる。
この行進曲はサッカーなどのスポーツイベントや中学・高校の吹奏楽などにもよく取り上げれて、非常に馴染み深い曲になっている。

〇 イタリアオペラの最高峰 〇
ヴェルディ自身、この『アイーダ』で当時の伝統的なイタリアオペラは極まったと感じていたのではないだろうか。
この後、約16年間ヴェルディはオペラから遠ざかっている。
この後の作品である、『オテロ』と『ファルスタッフ』は別次元のヴェルディ作品だと思う。
『アイーダ』にはまだNo.オペラの残り香があるし、数々の印象的で美しいアリアが散りばめられている。
内省的な歌唱を必要とする『オテロ』とは違い、イタリアオペラらしい輝かしい歌唱と旋律中心の音楽が展開する。
その中でも、ヴェルディは登場人物の感情の表出や場の情景までを極めて劇的な音楽で表現することに重点を置き、オペラとしての興奮と感動に満ちたグランド・オペラに仕上げて見せた。

〇 前奏曲 〇
まず、『椿姫』で見せたような、弦によるアイーダを表す旋律から始まる。
若干椿姫に似ている、この旋律がとても美しいのだ。
椿姫の場合よりも、極めて対位法に則って音を重ねている。
途中から司祭を表す旋律が加わって、アイーダの運命に強く関わっていくことを表しているかのようだ。
何か悲劇を暗示するかのように、この前奏曲は閉じられる。

〇 第1幕 〇
第1場ではラダメスがエチオピア軍の征討軍を率いる将軍に任命されて、愛するアイーダと結ばれることを望んで歌うアリア(ロマンツァ)「♪清きアイーダ」が聞きどころだ。
このアリア、登場していきなり高音(変ロ)まで伸ばす歌唱を求められる、テノールには腕の見せ処だ。
ここでヘロヘロしてはラダメス歌いとしては失格になる。
デル・モナコもステファーノも素晴らしかった。(聞いたことはないが、カルーソーもすごかったのだろう)

ラダメスをめぐって、アイーダとアムネリスの思いが交錯する2重唱、3重唱も素晴らしく、ラダメスを想うアムネリスの不安や祖国エチオピアとラダメスの軍が戦うことになることを恐れるアイーダの、それぞれの想いが心をかき乱すような旋律に乗って歌われる。

そして、将軍に指名されたラダメスを全員が合唱で勇気付ける。
この行進曲風の合唱もとても有名だ。
ただ、この勇壮な行進曲風の合唱中も一人アイーダだけは短調に聞こえるような歌唱で心情を吐露する。

この場の最後はアイーダの歌うアリア「♪勝ちて帰れ」で締めくくられるが、このアリアはアイーダの魅せどころだ。
自分の父親であるエチオピア王アモナズロと恋人であるラダメスが戦うことになり、どちらの無事も祈りたい板挟みの心を痛切に歌い上げる。

第2場のハープに乗って歌われる異国情緒溢れる歌唱はとても心に残る。
勇壮な場面の多いこのオペラで、ヴェルディが見せる緩急(強弱)の技だ。

〇 第2幕以降 〇
ここは上述の通り、凱旋の場である第2場が有名だ。
ラダメス率いるエジプト軍はアモナズロのエチオピア軍を破って凱旋してくる。
アイーダは、連行される捕虜の中に、父アモナズロの姿を発見する。(曲調も長調の明るいものに変化)
エジプト国王は、アモナズロを人質に残し後の捕虜の釈放に応じるが、この辺りの各人の心情に合わせた音楽作りは巧みで、調性が異なる音楽を慎重に組み合わせている。

第3幕には故郷を想うアイーダが歌うロマンツァ「♪おお我が故郷」がある。
オーボエの美しい牧歌的な旋律に乗って、アイーダが歌うこのロマンツァは、私がこのオペラで一番好きなロマンツァだ。
実に繊細で美しい旋律で、二度と訪れることのないであろう故郷を想ってアイーダが歌う。

第4幕では、上下2層に舞台が分けられ(上演会場の都合で色々な工夫も見られるが)、上層は神殿、下層は地下牢になっている。
ラダメスは地下牢の中に生き埋めの刑に処されることになったのだが、ところがそこには逃げたはずのアイーダが待っていた・・・。
最後の悲劇の場は是非実物の舞台や映像で観て頂きたい。


<本日の一枚>
今日はレヴァインのメトロポリタンで聞こう。
これは1990年録音の名盤で、独唱陣、合唱、オケ、超豪華な面々全てがレヴァインの統率の下に素晴らしい演奏を聞かせてくれる。
■ヴェルディ 歌劇『アイーダ』全曲
アイーダ:アプリーレ・ミッロ(ソプラノ)
ラダメス:プラシド・ドミンゴ(テノール)
アムネリス:ドローラ・ザジック(メゾ・ソプラノ)
アモナズロ:ジェイムズ・モリス(バリトン)
ランフィス:サミュエル・ラミー(バス)
エジプト国王:テリー・クック(バス)
ジェイムズ・レヴァイン指揮 メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団

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<推薦盤1>
カラヤンがテバルディ、シミオナート、ベルゴンツィ、コーネル・マックニールといった往年の名歌手を揃えて録音した名盤がある。
■ヴェルディ:歌劇「アイーダ」
アイーダ…レナータ・テバルディ
ラダメス…カルロ・ベルゴンツィ
アムネリス…ジュリエッタ・シミオナート
ランフィス…アーノルド・ヴァン・ミル
アモナスロ…コーネル・マックニール
エジプトの王…フェルナンド・コレナ
ウィーン楽友協会合唱団
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
録音:1959年9月 ウィーン

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<推薦DVD>
オペラはやはり映像があると無いとでは、全然違う。
今は良いDVDがあって幸せだ。
演奏の質は当然として、入手の容易さや値段も考慮に入れて、メトロポリタンを選ぼう。
■ヴェルディ:歌劇《アイーダ》 [DVD]
アイーダ:アプリーレ・ミッロ(ソプラノ)
ラダメス:プラシド・ドミンゴ(テノール)
アムネリス:ドローラ・ザジック(メゾ・ソプラノ)
アモナズロ:シェリル・ミルンズ(バリトン)
ジェイムズ・レヴァイン指揮 メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団

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2013.07.21 Sun l ヴェルディ l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ シベリウス ヴァイオリン協奏曲 ★
今日は北欧の代表的な作曲家シベリウスでいこう。
ジャン・シベリウス、このスウェーデン系フィンランド人作曲家はかなり多岐に渡った作品を残しているが、協奏曲はこの『ヴァイオリン協奏曲ニ短調 作品47』のみである。
日本でも良く演奏会にかけられる曲目には、交響詩『フィンランディア 作品26』や『交響曲第2番 ニ長調 作品43』などがあるが、このヴァイオリン協奏曲も古今の名曲として演奏機会が多い作品になる。
だが、この曲はパっと聞いたよりも遥かに難曲で、独奏ヴァイオリンにはかなりのテクニックが要求される。
また、この曲はシベリウスの後期作品に見られる様な、より室内楽的な簡潔な作風への過渡的な作品と言えると思うが、私はこのロマン派的な薫りのするコンチェルトは大変お気に入りの曲だ。

〇 印象的な第1楽章 〇
まず、この第1楽章がシベリウスの本領発揮の楽章になる。
形式的には、ソナタ形式風ではあるがカデンツァがソナタ形式で言う展開部辺りに持ってこられていたり、再現部辺りで主題が展開されたりと、かなり自由に書かれている。
シベリウスのオリジナリティが示されながらも、曲想は大変ロマンティックだと私は思う。
この第1楽章、冒頭が極めて印象的だ。
ミュートしたヴァイオリンの細かい旋律に乗って、いきなり独奏ヴァイオリンが美しく、儚いメロディを奏する。
この弦のささやくような伴奏は、凍てつく北欧の朝が感じられるし、独奏ヴァイオリンの美音には白鳥の優雅な飛翔をイメージする。
シベリウス自身は「鷲」を想起させるような事を言ったように聞いたが、私にはもっと柔らかい「白鳥」のイメージだ。
この楽章の後半コーダの辺りの独奏ヴァイオリンのオクターヴのパッセージはすごい。

〇 難曲の第3楽章 〇
第2楽章は木管から入るAdagio di molto。
独奏ヴァイオリンも落ち着いた低音から、朗々と主題を歌い上げる。
そして、第3楽章へとなだれ込んで行くのだが、付点リズムの低弦の音楽に乗って、独奏ヴァイオリンがリズミカルなメロディを奏でる。
3度の重音で昇るパッセージや、忙しなく上下する左手の動きはかなりのテクニックを要する。
この楽章は全体にそうなのだが、情熱的な舞曲風の主題でも重音での難しいパッセージが目立つ。
一気に駆け抜ける様に終曲は結ばれる。

〇 ヴィルトゥオーソとシンフォニック 〇
この曲の特徴を一言で表現するなら、ヴィルトゥオーソとシンフォニックの絶妙なバランスだ。
自身ヴァイオリンニストを目指しただけある独奏ヴァイオリンに求められる華麗で高度なテクニックと、シベリウスならではのスケールの大きな交響的な響きの調和が、北欧の香りたっぷりな憂いを含んだ美しいメロディの上で為されている傑作だと言えるだろう。


<今日の1枚>
さて、今日はこの曲やプロコフィエフの2番を世界に浸透させた功労者とも言えるハイフェッツで聞きたい。
正に圧倒的なテクニックでシベリウスを弾き切っている。
トスカニーニが最高のヴァイオリニストと絶賛を惜しまかったハイフェッツ。
その技術もさることながら、私はこの曲では特に弱音や高音での美しさが冴えわたっていると思う。
そう、この曲は「凍てつく」冴えがどうしても欲しいのだ。
■シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番 グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲

 ヤッシャ・ハイフェッツ(Vn)
 シベリウス:ワルター・ヘンドル指揮 シカゴ交響楽団
 プロコフィエフ: 同指揮 RCAビクター交響楽団
 グラズノフ:シャルル・ミンシュ指揮 ボストン交響楽団

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<推薦盤1>
ハイフェッツの盤は私が推すNo.1だが、この曲はチョン・キョンファもいい。
まだ、10代のキョンファのヴァイオリンが清々しい。
ひたむきな天才少女をプレヴィンが支える。
■チャイコフスキー&シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
 チョン・キョンファ(Vn) アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団

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<推薦盤2>
キョンファとは違い、大人の気品と余裕を感じさせるムターも良い。
偶然だが、こちらもオケを率いるのはプレヴィンだ。
■シベリウス/ヴァイオリン協奏曲ニ短調 他(セレナード、ユーモレスク)
  アンネ=ゾフィー・ムター(Vn.) アンドレ・プレヴィン指揮 ドレスデン国立管弦楽団

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2013.07.20 Sat l シベリウス l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ J.S.バッハ フランス風序曲 ★
J.S.バッハの フランス風序曲(Ouverture nach Französicher Art)ロ短調BWV 831 とは、バッハが編んだ『クラヴィーア練習曲集』第2巻の中の一曲だ。
そして、もう一曲が『イタリア協奏曲』ヘ長調BWV 971。
この『クラヴィーア練習曲集』第2巻の2曲は、まことにバッハらしい対比が為されていて、『イタリア協奏曲』の方は、合奏協奏曲を2段鍵盤に持ってきたものであり、『フランス風序曲』の方は、管弦楽組曲の様式をそのまま2段鍵盤に対応させたものだと言えると思う。
さらには、調性も長調と短調、しかもイ長調とロ短調は減5度の関係にあり最遠隔調、あの手この手でその当時の流行の中でイタリア様式とフランス様式を意図的に対比させようとしている。

〇 フランス風序曲 〇
『フランス風序曲』は以下の8曲から成っている。

1 序曲 Ouverture
2 クーラント Courante
3 ガヴォット Gavotte
4 パスピエ Passepied
5 サラバンド Sarabande
6 ブーレ Bourrée
7 ジーグ Gigue
8 エコー Echo

バッハのこのパルティータは名前の通り、フランス技法に則った序曲であり、ルイ・クープラン、ダングルベールといった17世紀のクラヴサン曲の影響がみられる。
しかし、かなりフランス的とは言いながらも、やはりバッハ、クープランらよりもかっちりと対位法によってドイツ風の味付けが感じられる。
特に、最初の序曲が私は素晴らしいと思う。
堂々としたこの序曲は、荘重なのだが、しかしあまり遅いテンポにならないように軽やかに弾ききって貰いたいというのがCDチョイスの前提になる。

序曲に続く、各舞曲はバッハにしてはちょっと珍しいくらい実際に踊れそうな原典に忠実な形式となっている。

【バッハ ゴルトベルク変奏曲】
ゴルトベルク変奏曲
【バッハ ブランデンブルク協奏曲】
ブランデンブルク協奏曲
【バッハ チェンバロコンチェルト】
チェンバロコンチェルト

<今日の一枚>
今日はこれをグールドのピアノで聞こう!
グールドの演奏がSA-CDハイブリッドで蘇った盤だ。
グールドは序曲をかなり遅く演奏するのだが、それでも引き込まれる魅力から逃れられない・・。
■バッハ:フランス組曲(全曲)&フランス風序曲
 グレン・グールド(P)

SA-CDハイブリッド 2ch音匠仕様レーベルコート CD2枚組
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<推薦盤1>
この曲は、やはり元々チェンバロの為の曲である訳なので、レオンハルトは王道を行っている。
■バッハ:フーガの技法&クラヴィーア練習曲集第2巻
 グスタフ・レオンハルト(Cemb)

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2013.07.14 Sun l バッハ l コメント (1) トラックバック (0) l top
★ メンデルスゾーン 『夏の夜の夢』 ★
このところの暑さに、少々参り気味の私は、メンデルスゾーンを思い出した。
『夏の夜の夢』だ。
この曲は、以前は『真夏の夜の夢』と呼んでいたが、シェークスピアの戯曲の原題である「A Midsummer Night's Dream」の誤訳である為に、最近では『夏の夜の夢』と呼ばれるようになってきている。

〇 序曲から始まった 〇
序曲から始まった、って当たり前だろと言われそうだが、そうではなくて現在演奏される劇付随音楽『夏の夜の夢』の中で、メンデルスゾーンが17歳の時に書いたのは「序曲 作品21」だけで、しかも愛する姉とのピアノ連弾用に書いたものだった。
玉座のロマン主義者と揶揄されたプロイセン王のフリードリヒ・ヴィルヘルム4世がこの序曲をお気に召して、その命によって、序曲を基にシェイクスピアの劇付随音楽「夏の夜の夢 作品61」を完成させることになったという訳だ。(34歳頃)
今では演奏会でもCD録音でも、「作品21」と「作品61」はセットで演奏されることが多い。

〇 『夏の夜の夢』 〇
この曲は、全曲となると以下の様に、序曲を含めて13曲になる。

1. 序曲 作品21
2. 第1番 スケルツォ (以下 作品61)
3. 第2番 メロドラマ<山を飛び、谷を飛び>
4. 第3番<さあ、輪になって踊りなさい> 合唱つきの歌<夜鶯の子守歌>
5. 第4番 メロドラマ<目覚めた瞬間、最初に見た者>
6. 第5番 間奏曲
7. 第7番 夜想曲
8. 第8番 メロドラマ<戻れよ、戻れ、元の妃に>
9. 第9番 結婚行進曲
10. 葬送行進曲
11. 第11番 ベルガモ風道化踊り
12. 第12番 アレグロ・ヴィヴァーチェ
13. フィナーレ<死んでまどろむ暖炉の火で>

演奏会やCD録音では、この中から抜粋したものを組曲的に構成するケースが多い。
演奏会でも、全曲を演奏しようとすると、合唱やソプラノ・メゾソプラノなどが入るため、それなりの用意が必要になる。
抜粋する例としては

1. 序曲 作品21
2. 第1番 スケルツォ (以下 作品61)
6. 第5番 間奏曲
7. 第7番 夜想曲
9. 第9番 結婚行進曲
11. 第11番 ベルガモ風道化踊り

あるいは、以前の巨匠達の録音で多かったのは、上記抜粋例の内、結婚行進曲までの5曲というものも目立ったように思う。


〇 結婚行進曲 〇
作品61-9結婚行進曲はあの有名な「パパパパーン、パパパパーン」だ。
ご自身の結婚式で、ワーグナーのローエングリンからの結婚行進曲とどちらを選択するか迷われた方もいるだろう。
日本では、メンデルスゾーンを選ぶ方が多いと聞いたことがある。
出だしがファンファーレ的で晴れがましいことと、曲調が明るくていかにもメンデルスゾーンだからなのだろう。

〇 「序曲」 〇
まず、序曲で思うことがある。
17歳の青年の作曲した曲とはとても思えない完成度、正にモーツァルトに匹敵する天才振り。
この曲は、そうは聞こえないかも知れないが、かなりきっちりとソナタ形式だ。
メンデルスゾーンという作曲家は、ロマン派の時代に相当異色な古典主義の作曲家だと思う。
ロマン派的な香りに満ちたメロディを書きながら、先鋭的な姿勢や古典主義の音楽の破壊を嫌った、極めてお行儀のよい作曲家と言える。
それは、多分メンデルスゾーンが裕福な銀行家の家柄に生まれたこと、ユダヤ人であったことと無縁ではないだろう。
小さいころから謂れなき差別を受けた、失うべきものを所有した出自。
メンデルスゾーンの音楽は、そうしたある意味で不安定だった環境とバランスをとるかのように、安定した全音階的な明るい音楽になった・・・。
そして、世界大戦までのヨーロッパでは絶大な人気を誇る作曲家になったのだろう。


【メンデルスゾーン 無言歌集】
無言歌集
【メンデルスゾーン ピアノ協奏曲第1番】
ピアノ協奏曲第1番
【メンデルスゾーン ピアノ協奏曲第2番】
ピアノ協奏曲第2番



<今日の一枚>
この曲の場合、私は緊迫感のある管弦楽表現が好きだ。
特に、序曲とスケルツォが重要で、どんな演奏を聞かせてくれるか楽しみな部分だ。
あー、やっぱり今日はトスカニーニでいこう。
この緊張感と疾走感溢れるスケルツォはどうだ。
誰にも達成しえなかった高みがここにはある。
但し、致し方ないのだが、音源が古いので音質は宜しくない。
■メンデルスゾーン:真夏の夜の夢/他 [Limited Edition]
 アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 NBC交響楽団

・メンデルスゾーン
1. 劇音楽「真夏の夜の夢」op.21&61~序曲
2. 劇音楽「真夏の夜の夢」op.21&61~間奏曲
3. 劇音楽「真夏の夜の夢」op.21&61~夜想曲
4. 劇音楽「真夏の夜の夢」op.21&61~スケルツォ
5. 劇音楽「真夏の夜の夢」op.21&61~結婚行進曲
6. 劇音楽「真夏の夜の夢」op.21&61~フィナーレ
・ケルビーニ
7. 交響曲ニ長調
・ウェーバー:
8. 歌劇「オイリアンテ」序曲

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<推薦盤1>
この曲の推薦盤を挙げるなら、まずはレヴァインだろう。
非常に統率のとれたバランスの良い演奏だ。
レヴァインという指揮者の素晴らしさを感じることができる、切れの良い弦と抜群のリズム感で闊達な表現に成功している。
録音状態も良好。
■メンデルスゾーン:真夏の夜の夢 [Limited Edition]
 ジェームズ・レヴァイン指揮 シカゴ交響楽団

1. 劇付随音楽≪真夏の夜の夢≫ 作品61から 序曲 作品21
2. 劇付随音楽≪真夏の夜の夢≫ 作品61から スケルツォ
3. 劇付随音楽≪真夏の夜の夢≫ 作品61から 妖精の合唱「舌先さけたまだら蛇」
4. 劇付随音楽≪真夏の夜の夢≫ 作品61から 間奏曲
5. 劇付随音楽≪真夏の夜の夢≫ 作品61から 夜想曲
6. 劇付随音楽≪真夏の夜の夢≫ 作品61から 結婚行進曲
7. 劇付随音楽≪真夏の夜の夢≫ 作品61から 終曲「ほのかな光」
8. 劇音楽≪ロザムンデ≫ D797から 序曲(≪魔法の竪琴≫D644より転用)
9. 劇音楽≪ロザムンデ≫ D797から 間奏曲 第3番
10. 劇音楽≪ロザムンデ≫ D797から バレエ音楽 第2番

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<推薦盤2>
さらに挙げるとしたら、セルだろう。
こちらも特に弦の繊細な音が素晴らしい。
妖精の姿にも豊かな生命力が与えられているように感じる。
「イタリア」とのカップリングもお得感ありだ。
■メンデルスゾーン : 交響曲第4番「イタリア」&劇音楽「夏の夜の夢」 他
 ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団

1. 交響曲第4番イ長調op.90「イタリア」
2. 劇音楽「真夏の夜の夢」op.61
3. 序曲「フィンガルの洞窟」op.26
(「真夏の夜の夢」は
1. 劇音楽「真夏の夜の夢」op.21&61~序曲
2. 劇音楽「真夏の夜の夢」op.21&61~間奏曲
3. 劇音楽「真夏の夜の夢」op.21&61~夜想曲
4. 劇音楽「真夏の夜の夢」op.21&61~スケルツォ
5. 劇音楽「真夏の夜の夢」op.21&61~結婚行進曲
の5曲)
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2013.07.13 Sat l メンデルスゾーン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★モーツァルト ピアノソナタ第11番『トルコ行進曲付き』★
今日はこのあまりにも有名なピアノソナタと聞こう。
このソナタの第3楽章が所謂モーツァルトの「トルコ行進曲」として、世界中で愛されている曲だ。
ご存知の通り、ベートーヴェンもやはり「トルコ行進曲」と呼ばれる楽曲を作っているが、こちらは元々劇付随音楽『アテネの廃墟』の中の楽曲として管弦楽用に作曲されたもので、ピアノ用にも編曲されており、モーツァルト同様日本でも子供の演奏会用にも広く使用されている。

♪モーツァルト トルコ行進曲
♪ベートーヴェン トルコ行進曲

〇 ピアノソナタ第11番イ長調K.331 〇
さて、この3楽章のソナタだが、実はソナタ形式の楽章は一つも無い。
第1楽章はシンプルな主題による変奏曲で、第2楽章はメヌエット、そして第3楽章はトルコ行進曲でロンド形式で書かれている。
かつての4楽章制での第1楽章が欠落した形式か、等の検証もあるが、そんなことよりもやはり何故トルコ行進曲なのか?の方が面白い。

〇 オスマン帝国 〇
この曲はかつては1778年頃パリで作曲されたのではないかというのが有力な説であったが、現在では1783年頃にウィーン或いはザルツブルクで作曲されたとする説が主流になっている。
14世紀頃に興ったオスマン帝国は、特に15世紀~17世紀にかけて地中海周辺に広大な版図を誇っていた。
そのオスマン帝国がヨーロッパに関わってくる中で、1683年の「第2次ウィーン包囲」という事案があり、ヨーロッパ諸侯連合軍はこれをみごとに打ち破っている。
このソナタが作曲された頃は、丁度それから100周年に当り、ウィーンでは祝勝ムードで盛り上がっていたようだ。
その為、ウィーンではトルコブームが起こっており、流行に敏感なモーツァルトは、この曲にトルコ風のリズムと表現的効果を取り入れたという訳である。
(オスマン帝国は正確にはトルコ民族の国家という訳ではないのだろうが・・・)

〇 子供には易しく、大人には難しい 〇
このシンプルで親しみ易い楽曲は、日本でもピアノ発表会の常連曲目といって良い。
特に第3楽章は、単独で取り上げられることも多い。
だからこそ、この曲はプロのピアニストにとっては「やばい音楽」なのだ。
やばいはお下品なので、ちゃんと言うと「大人には難しい」「プロの演目には至難の曲」ということだ。
隣の~ちゃんでも弾ける曲で、2千人の観客からお金を戴くなんて、考えたら恐ろしいことだ。
万一ヘタクソだったりしたら暴動になるし、通り一遍に弾いたら間違いなくブーイングの嵐だ。

〇 左手の動きにトルコが宿る 〇
ここで言う「トルコ風の音楽」とは、オスマン軍が随行したメフテラーンと呼ばれた独特の軍楽隊が奏でる勇壮なミュージックのことを指している。
これは「ジャン、ジャン、ジャンジャンジャン」といったリズムで、シンバルや太鼓、ラッパを中心とした軍楽隊(メフテル達)が奏する結構喧しい行進曲だ。
この音楽を、モーツァルトは左手の伴奏に活かしている。
(左手だけ聞くと、面白い)

〇 パッセージにも工夫がある 〇
その他の特徴として、3度、6度、オクターヴのパッセージがところどころに使われており、当時のモーツァルトの志向を窺い知ることが出来るように思う。
確かな記憶ではないので申し訳ないが、モーツァルトが父や姉に送った書簡にもそうしたパッセージに対する言及があったように思う。
(第1楽章の、あの短調に転調する素敵な第3変奏とか)

愛らしい中にも、ちゃんと新しい試みが活かされているのだ。


【モーツァルト ピアノソナタ第2番】
ピアノソナタ第2番
【モーツァルト ピアノ協奏曲第20番】
ピアノ協奏曲第20番
【モーツァルト ピアノ協奏曲第9番『ジュノーム』】
ピアノ協奏曲第9番『ジュノーム』



<今日の一枚>
さあて、このプロにはやばいソナタを誰で聞こうか。
所謂、名演と言われる音源は数あるのだが、私はケレン味の無い演奏が好きだ。
これだけ、技術的に易しく、子供でも弾ける曲となると、どうしても色々やりたくなるのだろう。
極端に遅いテンポ(グールド)を取ったり、装飾音で華やかさを演出したり(ファジル・サイ)と個性的な名演奏が存在する。
私自身、そうしたある意味ケレン味のある演奏にはどうしても惹かれてしまう方で、ある時期は嵌るのだが、やはりいつしか基本に戻る。
この曲の私にとっての基本は、ピレシュだ。
ピレシュはモーツァルトのピアノソナタ全集を2度録音しているが、今日は1970年代の若い頃の演奏を聞きたい。
2度目の録音の方が、貫禄というか落ち着きがあるように思うが、若い頃の演奏のほうが素直な印象を抱いている。
■モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集3 (全集からの分売)
 アリア・ジョアン・ピレシュ(P)

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全集全てでもリーズナブルなので、輸入盤なら尚お得感がある。
■Mozart: Complete Piano Sonatas [CD, Box set, Import]
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<推薦盤1>
ちょっと古い録音になるが、やはりギーゼキングは外せない。
ギーゼキングのモーツァルトは、上述のケレンというものが無い。
知的で品格のある演奏は、時を超えて私たちを古典の美しさへと誘ってくれる。
■モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番~第13番
 ワルター・ギーゼキング(P)

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<推薦盤2>
こちらは、気品と優雅さに満ちた格調高いモーツァルトが聞ける、イングリッド・ヘブラーだ。
彼女もまたモーツァルト弾きとして有名であったが、そのにこやかな風貌から感じるような、流れるような淀みのない美しいフレージングが印象的だ。
こちらは選集だが、ピアノソナタ全集もある。
■モーツァルト:ピアノ・ソナタ選集 [K.310/545/331]
 イングリッド・ヘブラー(P)

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2013.07.12 Fri l モーツァルト l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ハイドン 交響曲第101番ニ長調 『時計』 ★
この101番は、先日の103番同様ザロモン交響曲の中の一曲だ。

【弊ブログご参照】
→ハイドン 交響曲第103番『太鼓連打』


この101番は、ザロモン交響曲第2期の3曲目に当たるシンフォニーで、『時計』というニックネームで日本でも親しまれており、ハイドンの中では演奏機会の多い方になる。
ハイドンの場合、ニックネームに捻りが足りないので、とかく軽く見られがちだが、この『時計』も第2楽章だけでなく全てに渡って古典シンフォニーの楽しさを感じさせてくれる素晴らしい音楽だ。

〇 交響曲のニックネーム 〇
ちなみに、ハイドンのシンフォニーのニックネームについてだが、以下の様にそのまんまという感じだ。

交響曲第6番 ニ長調『朝』
交響曲第7番 ハ長調『昼』
交響曲第8番 ト長調『夕』
交響曲第22番 変ホ長調『哲学者』
交響曲第31番 ニ長調『ホルン信号』
交響曲第38番 ハ長調『エコー』
交響曲第44番 ホ短調『悲しみ』
交響曲第55番 変ホ長調『校長先生』
交響曲第59番 イ長調『火事』
交響曲第60番 ハ長調『うかつ者』
交響曲第82番 ハ長調『熊』
交響曲第83番 ト短調『めんどり』
交響曲第88番 ト長調『V字』

わざと、気軽に面白いものだけをピックアップしたが、捻りが足りないのを納得頂けたと思う。
朝昼夕って、おいおいって思いませんか?
逆に「うかつ者」とか「V字」なんて、一体どんなシンフォニーじゃ??と思うのではないか。
機会があれば、このブログでもご紹介したいと思っている。

〇 『時計』 〇
さて、この『時計』だが、ニックネームの由来は第2楽章の「トゥ、トゥ、トゥ、トゥ」という規則正しい時計のようなテンポとリズムからきている。

♪「時計」第2楽章

ただ、この第2楽章のテンポについては、聞く方も実際の時計の1秒ずつ刻むテンポに拘らない方が良いと思う。
古今の名指揮者の演奏を聴いても、実に様々である。
クレンペラーは少し遅めだったし、ドラティは逆に少し速めだ。
アダム・フィッシャーは標準的だろう、時計より少し速いくらいだ。
この辺りも、CDを聞く際のお楽しみになっている。

〇 第1楽章 序奏がミソ 〇
第1楽章の序奏はゆっくりとした音型で、ニ短調で始まる。
この序奏、なかなかミステリアスな雰囲気があって好きだ。
私はもう少し序奏を発展させて貰えたら嬉しいくらいだ。
ちょっとベートーヴェンの第4交響曲を想起させる。
【ベートーヴェン 交響曲第4番】
交響曲第4番

すると、意外なほどすんなりとニ長調の主部に入るのだが、この主部と序奏には音型的に関連がある。
きっちりと序奏がソナタ形式の主部を導いている当たり、さすがシンフォニーの父だ。

〇 第3楽章 典雅でスケール感のあるメヌエット 〇
第2楽章は良く知られた『時計』のメロディによる変奏曲だが、この第3楽章はモーツァルトに匹敵する立派なメヌエットだ。
私はメヌエットと言えば、やはりモーツァルトを思い出すし、モーツァルトこそが古今東西最高のメヌエット作家だと思っているが、このハイドンのメヌエットはそれに負けない。
2部形式のメヌエット部はとても堂々としている。
トリオはオスティナート・バス的な反復音型の上に管楽器が優雅な音楽を乗せる。
バロック調と言えるのだろう、とても典雅な趣だ。

〇 第4楽章 軽快な終曲 〇
終曲は単一主題を展開するようなソナタ形式。
最後に第1主題が強調されるような形で、ロンド・ソナタ形式ともとれるか。
ハイドンはかなり自由に書いているし、対位法的な処理が巧みだ。
第2主題が少しはっきりしない為に、第1主題の印象の強い楽章になっている。

<今日の一枚>
今日は全曲集を録音した先駆者であるドラティに敬意を表して、ドラティでいきたい。
このブタペスト生まれの指揮者は、ストラヴィンスキーやコダーイの演奏で特に名高いが、このフィルハーモニア・フンガリカを率いて録音したハイドン全曲集は歴史的快挙とまで言われている。
今日はその全集からの盤だ。
■ハイドン:交響曲第94番「驚愕」/第100番「軍隊」/第101番「時計」
 アンタル・ドラティ指揮 フィルハーモニア・フンガリカ

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<推薦盤1>
これは、中庸というかあまりアザトイ真似をしていない安心できるハイドンを聞きたい方には絶対お薦めだ。
テイトなのだが、小さ目の編成で落ち着いてハイドンに向かい合った、いつまでも聞ける飽きのこない盤。
94番『驚愕』とのカップリングだ。
■ハイドン:交響曲第94&101
 ジェフリー・テイト指揮 イギリス室内管弦楽団

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2013.07.08 Mon l ハイドン l コメント (4) トラックバック (0) l top
★ 織田晃之祐 STAR CHILD ★
今日は七夕だ。
織姫と彦星の物語は幼いころから聞かされてきたが、この忙しない現代では梅雨から夏への蒸し暑い一日に格下げされてきていると思える。
古来日本では5節句の一つとして、季節の節目に節句料理を供して生活のリズムを作り、季節感を味わってきたのだ。
1月7日の七草粥のように、七夕には素麺が節句料理として食されてきたのをご存じだろうか。
従って、本日は出来ることなら素麺を召し上がって下さいますよう。

さて、星にまつわる音楽も数ある訳だが、本日は私としては異色のシンセで行きたい。

〇 織田晃之祐氏 〇
織田氏について補足しておくと、この方は1939年生まれの音響効果のスペシャリストで元NHK音響効果部署の重鎮だ。
主に同局の番組用効果音楽を作曲・プロデュースされており、メインの仕事に「NHKスペシャル」「日曜美術館」がある。
どなたも、どこかでこの方の音楽に心を満たされた経験をお持ちの筈だ。

〇 星のかけら STAR CHILD 〇
このSTAR CHILDと題されたアルバムは、1998年~2001年「NHKスペシャル」「日曜美術館」「新春・日本名画紀行」などに実際に使われた曲を収録したものだ。
私は本来あまりシンセサイザーの音楽は聞かないのだが、これは所謂「狭義の音楽」というよりも、何らかのビジョン(視覚・心象)を補い、浸透させるサウンドだと思っている。
古井亮太氏がこの音楽を称して『静の音楽』と表現しているが、うまいことを仰ると思う。
近年「癒し」というキーワードが濫用されているが、本当に私たちに寄り添って、凝り固まった「心」を解放してくれるサウンドとはこういう『静の音楽』だと感じている。
正にクールダウン・ミュージック。

〇 星のかけら 〇
タイトルにもなっている、一曲目「星のかけらは」1998年放送の日曜美術館「版画家 斉藤清の世界」で使われた音楽のようだ。
イメージは湧いてくるのだが、私自身はこの放送を実際に視聴した訳ではない。
しかし、テレビの映像を思い浮かべると、例えば作品に向かってカメラがゆっくりとパンしていく際に流れるサウンドとして聞こえてくるような気がする。
あくまでも「静」だ。
この音楽を背景にビジュアル世界が鮮烈に浮かび上がり、画面の作品にストンと心が落ち着いていくのが実感される。



1. 星のかけら
2. すきとおった たべもの
3. 150億年の彼方から
4. 目をつぶって 見えてくるもの
5. 桃いろの朝の光
6. 陽がかげると耳をすます若葉
7. 少年 ジョバンニ
8. 虹と月あかりの おくりもの
9. 色は形にまけない
10. セプテンバーの風
11. 私という現象
12. バラの木に バラの花咲く
13. 絵を描く子供たち
14. すきとおった ほんとうの たべもの

以上の14曲が収録されているが、日曜美術館を視聴されたことがあれば、「ああ!」と納得して頂けるだろう。

<今日の一枚>
今夜はこのシンセサイザー・ミュージックに身を委ねて、幻想的なスター・ウォッチングなど如何ですか?
■星のかけら 織田晃之祐


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2013.07.07 Sun l フェイバリット l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ドボルザーク スラブ舞曲集 ★
このドボルザークのスラブ舞曲集は、ブラームスハンガリー舞曲集が売れたことで大変気をよくしたジムロック社からのオファーでドボルザークが書いている。
第1集(8曲)と第2集(8曲)から成り、全部で16曲の舞曲なのだが、当初はハンガリー舞曲同様4手の為のピアノ連弾曲集として書かれたものだ。
そして、これまたハンガリー舞曲同様、管弦楽曲に編曲されている。
ハンガリー舞曲と大きく異なる点は、全てドボルザークオリジナルのメロディであり、オーケストレーションもドボルザークが自身で行っていることだ。

【弊ブログご参照】
→ブラームス ハンガリー舞曲集

〇 スラブ舞曲 〇
このスラブ舞曲集に現れる民族舞踊には、次のようなチェコ出身の作曲家らしい独特なものがある。

フリアント:ボヘミヤの民族舞踊で2拍子と3拍子が交互に入れ替わる、なかなか熱いダンス
ドゥムカ:元々はウクライナの民族音楽だが、ボヘミヤ地方でも愛された
ポルカ:ポルカは日本でも親しまれている音楽だが、これも元々はボヘミヤ起源の民族舞踊。
ソウセツカー:メヌエットのように3拍子の曲に乗って踊るボヘミヤの民族舞踊
スコチナー:こちらは2拍子のボヘミヤ民族舞踊

ブラームスはハンガリー出身ではなかったので、ハンガリー舞曲は採譜したものが中心になったが、さすがドボルザークは自分の故郷の民族舞踊であるので、特徴を熟知した上で新たにメロディーを作っている。
そして、ブラームスも羨んだメロディメーカーであるドボルザークは、極めて民族色豊かで尚且つ普遍性を持った魅力的な舞曲集に仕上げた。

〇 中でも有名な、第2集第2番 〇
全16曲の中で、日本でも一番愛されているのは何と言っても第2集の2番目(通し番号で第10番と言われることもある)の曲だろう。

第2番 アレグレット・グラツィオーソ ホ短調
我々日本人の大好きな(勿論私も)、短調の哀愁に満ちた美しいメロディが印象的だ。
日本でもテレビのドキュメンタリー番組や映画のバックで使われたりしている。
♪スラブ舞曲第10番

〇 アンコールピース 〇
この愛すべき小品集(全て3分~7分程度)は、アンコール・ピースによく使われる。
先日の大阪フェスティバルホールでのモスクワ・フィル(ユーリ・シモノフ指揮)での演奏会でも、アンコールにスラブ舞曲が演奏された。(第1集第8番と第2集第2番だったかと思う)
ロシアも東スラブ族に含まれる訳で、やはり本場と言っていいのだろう。
演奏している楽団員も活き活きと楽しそうに演奏していたのが印象的だ。
指揮者のシモノフさんも、有名な第10番の指揮の際には、夢見るような表情で、優雅に舞うように指揮していた。


【ドボルザーク 交響曲第8番】
交響曲第8番


<今日の一枚>
ここはやはり本場も本場、チェコ出身のクーベリックで聞きたい。
クーベリックは同郷のドボルザークの舞曲を、耳当たりの良い管弦楽曲にする積もりは毛頭無く、熱く誇りを持ってスラブ舞曲を語っているように聞こえる。
とてもスリリングで、細部まで手を抜かない本物を聞かせてくれる。
■ドヴォルザーク:スラヴ舞曲集(全16曲)
 ラファエル・クーベリック指揮 バイエルン放送交響楽団
 
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<推薦盤1>
こちらは同じくチェコ出身のノイマンだ。
そして、オーケストラもチェコ・フィルハーモニーと純正スラブ音楽だ。
ノイマンは手兵チェコ・フィルの美音を活かして、とても余裕を持って祖国の音楽を楽しんでいるように思う。
しかもこの盤はデジタル録音で音質が極めて良い。
■ドヴォルザーク:スラヴ舞曲集(全曲) [HQCD]
 ヴァーツラフ・ノイマン指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1985年[PCM デジタル録音]

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2013.07.05 Fri l ドヴォルザーク l コメント (2) トラックバック (0) l top