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★ ショパン ピアノ協奏曲第1番 ★
今日はショパンのピアノ曲の中でも、ある意味で異色な存在であるコンチェルトを聞こう。
異色だと言うのは、この極めてポエティックな作曲家は、バラード、ワルツ、ノクターンといった小曲にこそその天才を発揮したが、大曲は向いていないと思っているからだ。
その意味ではソナタの分野もそうで、例えば有名なピアノソナタ第2番『葬送』にしても、各楽章間の関連性は希薄で、曲全体の構築上の完成度は先輩であるモーツァルトベートーヴェンに及ばないと思う。
だが、そうだとしても、ショパンだけが持っている溢れんばかりの「詩情」は、それを補って余りあるのだ。

〇 第1番と第2番 〇
ショパンの番号付きピアノコンチェルトは 第1番ホ短調Op.11 と 第2番ヘ短調Op.21 があるが、作曲順に言うなら逆で、ヘ短調の方が先に作曲されている。
ショパンは1829年~1830年頃に、まずヘ短調のコンチェルトを完成し、ワルシャワで初演している。
その後すぐにホ短調のコンチェルトに着手し、1830年にはウィーンに旅立つ前に完成させワルシャワで初演を成功させている。
それからパリに出ていく訳だが、ショパンはこのホ短調の方で勝負に出ており、1832年のパリでのデビューをこのコンチェルトで飾り、みごとに好評を得たために目出度く出版の運びとなった。
このように出版の順序がホ短調が先だったためにこちらが第1番となった訳だ。

〇 オーケストレーションの謎 〇
このショパンのコンチェルトには大きな謎が残されている。
ピアノパートをショパンが作曲したことは間違いないのだが、オーケストラパートの方が本当にショパンによるものか、その当時の誰かが替わってオーケストレーションしたものなのか判っていない。
私個人の意見では、誰かは分からないが、第1番と第2番は同一人物がオーケストレーションしているように感じている。
オケの編成が独特で、似ているからということと、ピアノパートとの役割分担というかバランスの特徴に共通項があるからだ。
この点については、ヤン・エキエルが主幹を務めるショパン・ナショナル・エディションによれば、ショパンによるオーケストラパート譜は消失したが、各楽器の詳細を記述したピアノ・スコアが残されており、それによればショパンが意図したオーケストラパートは現在のものとは全く異なるものだったということだ。
この辺、まだ世界レベルでのアグリメントが為されていないので、暫くおいておこう。
取り敢えず、現在録音されている音源を楽しもうではないか。

〇 貧弱なオケ? 〇
さて、誰が書いたかは棚上げにしても、この曲の素晴らしさ故にオーケストレーションの貧弱さが取り沙汰されてきた。
ショパン以外の人物が書いたのかも知れないから、それでいいや、という訳にもいかない。
確かにピアノのゴージャスさに比してオーケストラの厚みが足りない。
それは、物理的に鳴っている楽器が少ないという側面があって、それはある意味仕方がないというか当たり前の話だ。
ブラームスベートーヴェンならばファゴットにホルンを被せに行ったり、オーボエの陰からクラリネットが浮かび上がったりと、楽器間の遣り取りがとても有機的なのだ。
しかも旋律も主役たるピアノの旋律に負けない、魅力的なお化粧や主題展開が必ず為されている。

ショパンの場合は、単一楽器が旋律を支えることが多く、特に管楽器の場合顕著に見える。
だが、そうなってしまう一番判りやすい原因は、やはり「ピアノの頑張りすぎ」なのだと思う。
つまり、ピアノが顔を出すと、主役の座は絶対譲らないぞ!みたいに引くことがない。
分厚いオーケストレーションを繰り広げる協奏曲の場合は、独奏楽器とオーケストラが音のバトンタッチを繰り返すところが楽曲の膨らみを増し、奥行きを広げて行く訳だ。
ショパンの協奏曲は、ピアノが登場するとオケは伴奏に徹すると言ってもいい。
この第1番でも、コンサート会場でオーケストラを見ていると、ピアノが弾き始めると弦のピチカートが目立つ。
そのように、オーケストラは和声と下支えに回る印象が強い。
オーケストラだけの時には、結構鳴るのだが・・・。

ここからは、全くの私の想像なのだが、もしかするとショパンは協奏曲などは本当は書きたくなかったのではないか。
ワルシャワからウィーン、バリと楽壇レビューを模索していたショパンにはその為のツールというか、演奏会用のキラーコンテンツが必要だったのかと想像している。
自分が弾くピアノにスポットライトが当たった煌びやかなコンチェルトが。

これ以降、2度とコンチェルトを書くことが無かったのは、パリデビューが成功した後には本来の得意とするピアノ小品に特化できたから。

〇 詩情溢れるピアノ曲 〇
そのように、現在聞かれるオーケストレーションにはピアノパートに比して多少物足りなさはあるのかも知れないが、繰り返しになるが、それを補って余りある詩情溢れるショパンらしいメロディで満ちている。


【ショパン ワルツ集】
ワルツ集


<今日の一枚>
さて、この協奏曲を誰で聴くかだが、今日はアルゲリッチでいきたい。
アルゲリッチは勿論素晴らしいヴィルトゥオーソなのだが、タッチが必要以上に強すぎて、時としてうるさく感じてしまうことがある。
私には、演奏選択上悩ましいピアニストなのだが、この曲ではとても綺麗なタッチを聞かせてくれる。
元々テクニックは抜群なので、どこかクールに取り組んでいる時の彼女は素晴らしいと思う。
■ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番
 マルタ・アルゲリッチ(P)クラウディオ・アバド指揮 ロンドン交響楽団 (第1番)
    ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ指揮 ワシントン・ナショナル交響楽団 (第2番)

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<推薦盤1>
これは異色のショパンだ。
恐らくツィマーマンは、色々な指揮者と共演してきて、どうしても物足らなさが残っていたのだろう。
遂に、自分の想いをこの記念オーケストラと共に叶えたと言える。
オーケストラは「これが本当にショパンのコンチェルトか?」と疑うほどに歌いまくる。
往年の名指揮者メンゲルベルクでもやらなかった程、弦はポルタメントを思い切りかけてくる。
とてもロマンティックな演奏だ。
ショパン好きなら必聴もののCDだ。
■ショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番
 クリスティアン・ツィマーマン ピアノ・指揮  ポーランド祝祭管弦楽団

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2013.06.29 Sat l ショパン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』 ★
今日は勢いで行く。
久しぶりにベートーヴェンの交響曲を聞き続けていると、改めてこの偉大な作曲家の楽曲に対する緻密な構成力や、主題の扱い方(第1主題と第2主題の関連性・経過句での繋ぎ方、調性の持ち方)などに、う~んこれはすごいと唸らざるを得ない・・・。
このシンフォニーはあまりに有名すぎて、語り尽くされていると思う。
だが、私の思うところをチョコっとだけ書き記しておきたい思う。

〇 『運命』 〇
まず、この曲の場合、この『運命』というニックネームが問題だ。
ここでも、また例のシントラーが出てくる訳だが、この人はとにかく怪しい。

曰く:
シントラーがベートーヴェンに対して、このハ短調シンフォニーの冒頭の4つの音は何を表しているのか?と聞いたところ、「運命はこのように扉を叩くのだ」と答えた。

というものだ。
例の、「ジャジャジャジャーン」(または、「ダダダダーン」)は、運命が扉を叩く音だとベートーヴェン自身が言ったという訳だ。
私も子供の頃からこの逸話を聞かされて、少しも疑うことが無かった。
そのぐらい、この曲からは「運命」と呼ぶに相応しい重みと緊張感を味わった。
しかし、大人の知恵が少しだけ付いてくると、このアントン・シントラー(シンドラー)のイカガワシサが鼻についてくる。
彼の虚言癖や性格の悪さについては、ベートーヴェンも書簡で甥のカールなどに語っているし、後の研究では彼の著書に記された内容の殆どが作り話であり、ベートーヴェンとの筆談ノートすら、自分の著書と折り合いが付かない部分は破棄してしまったことが判明しており、まことにイカガワシイ人物と言うしかない。

そもそも日本では『運命』で通っているが、海外では単に「ハ短調交響曲」が通り相場だ。
(しかし、近年ではドイツですら「Schicksalssymphonie(運命交響曲)」の呼称を使う場合もあるようだ。日本の逆影響なのだろうか・・。)

従って、あまりこの「運命」という呼称に引き摺りまわされない方が良いのだが、だがしかし、山ほどある「ハ短調交響曲」の中でのアイデンティティを確保するよりも、全てのシンフォニーの中での「ただ一つの運命」こそがこの曲に相応しいと思うのだが・・・。

〇 ジャジャジャジャーン 〇
この冒頭の4音、俗に「ジャジャジャジャーン」(または「ダダダダーン」)の鳴らし方が、昔から演奏上では大問題だった。
一頃は、この冒頭の鳴らし方に、指揮者としての技量や見識までが問われるような世情があったほどだ。
このフェルマータ付きの4音X2回を、往年のマエストロはフェルマータを強調して一区切り付ける傾向にあった。
近年では、ここで腰を使わずに素早く鳴らし切る演奏が主流のようだ。
どちらにしても、この序奏なしで提示される第1主題は、旋律なのか?その方が私は気になる。
旋律を和声で装飾していくホモフォニーの概念からすると、これは主題と言えるような音ではないように思える。
にもかかわらず、ベートーヴェンはこの和音をいきなり提示し、展開し、まるでライトモチーフ(正に運命の動機)のようにこの曲中に配置し命を与えているのである。
ここからして新機軸。

だが、ベートーヴェンはこの冒頭だけでも何度も書き直している。
第1楽章を譜面に起こしながら、頭の中で第2楽章を作曲していたという天才モーツァルトと違い、ベートーヴェンは努力の人、このような新機軸を音符にするのにかなりの呻吟を繰り返したのである。
ベートーヴェンの心血が注がれた音楽がこれなのだ。

〇 オーケストラ編成の新機軸 〇
さらに、この曲にはオーケストレーション上も画期的な編成が行われている。
第4楽章に3本のトロンボーンを採用し、ピッコロやコントラファゴットも使用している。
オーケストラでそれらの楽器を使用することは珍しかった訳だが、ベートーヴェン以降そうした編成は、音の華やかさや厚みを求める際に、作曲上も一つの前提になっていくのである。


【ベートーヴェン 交響曲第4番】
交響曲第4番
【ベートーヴェン 交響曲第3番『英雄』】
交響曲第3番『英雄』
【ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第5番『春』 】
ヴァイオリンソナタ第5番『春』



<今日の一枚>
この余りにも有名なシンフォニーには、古今東西数々の名演と言われる演奏が残されている。
フルトヴェングラー、トスカニーニ、クレンペラー、ベーム・・、どれも全て個性的で素晴らしい。
こうした名演の、私はそのほんの一部しか触れたことは無いわけだが、その中でも今日選ぶのはこれだ。
クライバーの名演がSHM-CDで蘇った。音がいい!
クライバーの明快な指揮はウィーン・フィルを力強く牽引しており、鮮烈な音を聞かせてくれる。
■ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第7番 [Limited Edition, SHM-CD]
 カルロス・クライバー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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<推薦盤1>
あまりにも名演が多すぎて、ほんとに推薦盤には迷う。
そこで、最近特にお気に入りの古楽器での運命をお奨めしたいと思う。
フランス・ブリュッヘンだ。
古楽器だけに、音に締りがあって、この曲の緊張感と隙のない構成感を良く表してくれていると思う。
■ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、第5番「運命」
  フランス・ブリュッヘン指揮 18世紀オーケストラ

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2013.06.26 Wed l ベートーヴェン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ベートーヴェン 交響曲第4番 ★
今日は、ベートーヴェンの交響曲の中で、近年一番良く聞く1番、2番、4番の中から4番でいこう!
交響曲第4番変ロ長調 作品60 は、ベートーヴェンの9つの交響曲の中で、オーケストラの規模としては最も小さい(基本2管編成でフルートが一本少ない)のだが、シンプルだからこそベートーヴェンのオーケストレーションの巧みさや、主題の処理の鮮やかさが目立つ傑作だと思っている。

さて、この曲には良く使われるフレーズがある。
曰く:
かのロベルト・シューマンがこの曲を評して『北欧神話の二人の巨人に挟まれたギリシアの乙女』と言った。
二人の巨人とは、第3番「英雄」と第5番(日本では良く「運命」と言われる)のこと。

というものである。
う~ん、なかなか尤もらしい評論だ。
これについて博識な先輩にお伺いをたてたことがあるのだが、その方によるとシューマンがどこでそのような事を言っているのか知らないが、彼の音楽評論集にこの第4番を評して「ギリシャ的」という言葉は見つけたことがあるとのことだった。
そこで、その「ギリシャ的」という解釈について私なりに考えてみたことがある。
ギリシャ的であると言う第一は、やはりこの序奏にあるのではないだろうか。

〇 序奏 〇
第一楽章は変ロ長調なのだが、この長い序奏は変ロ音から始まって、変ニ長調で不気味に進行していくが、今にも変ロ短調に堕ちそうだ。
一歩一歩暗い森の中を手探りで進んでいくような音楽が続く。
調性も不安定で、管の巧みな使い方と弦のピチカートが不安な足取りを表すかのようだ。
その後変イ長調で進むのだが、下属調にも聞こえたりする不安定さは相変わらず残る。
この序奏の部分が、神秘的でいかにも古代ギリシャを思わせないだろうか。
しかも、和音進行は極めて古典的と言っていいドミナント指向なのだ。
私は、シューマンのギリシャ的という指摘の一番嵌る箇所はここだと思っている。
しかも、このシンフォニーの中でこの箇所が一番好きで、色々なCDのこの部分だけを何度も聞いたりするのが大好きだ。
ここは、私としては演奏にも拘りがあって、茫漠とした不安と何が起こるか分からない不確定さがどうしても欲しい。
このシンフォニーの醍醐味が正にこの部分に集約している。

〇 第2楽章はクラリネットの美音 〇
第2楽章Adagio は弦で始まるが、クラリネットが主役で、恐らくハイドンやモーツァルトの時代にはまだ新しかったこの楽器をベートーヴェンは意識的に勉強して活用している。
ここはほんとにどこまで行くのか分からない程終わりのない旋律が続く・・。
これもこの頃では珍しいことだと思う。

〇 指定は無くてもスケルツォ 〇
第3楽章はスケルツォだ。(特に指定はない)
この楽章は速度が速いのであまり気づかないが、モーツァルトも試みた、拍子を敢えて暈す様な曲創りをしていると思う。
舞曲的ではあるが、2拍子っぽかったりもする。

〇 この曲の特徴 止まらない音楽 〇
第3楽章から第4楽章は、勢い付いた音楽は滞ることを知らない。
一気に駆け抜ける爽快さが身上だ。
だから当然、私としては第1楽章で模索していた心象的ターゲットをここで追い詰めて手にするような演奏が欲しいと思うのだ。
ここに迷いがあってはならない。


【ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』】
交響曲第5番『運命』
【ベートーヴェン 交響曲第3番『英雄』】
交響曲第3番『英雄』
【ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番】
ピアノ協奏曲第4番



<今日の一枚>
さて、そのようにベートーヴェンの工夫と創意に溢れたこのシンフォニーを誰で聴くか?
クライバーのライブ盤は素晴らしい!
フルトヴェングラーのやはりライブ盤、も序奏の素晴らしさが特筆ものだ。
しかし、今日はカラヤンで行く。(60年代全集盤)
音がいい! それに2番とカップリングされている(好みというだけ)、ベルリン・フィルがうまい!いかにもドイツの音。若い頃の覇気溢れるカラヤンが蘇る。
■ベートーヴェン:交響曲全集
 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

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<推薦盤1>
この第4シンフォニーの推薦盤ということになると、やはりクライバーのライブ盤を避けることは出来ない。
序奏の神秘性と、それに続く連続性のある音楽での躍動感はクライバーならではのものだと思う。
■ベートーヴェン:交響曲第4番 [Import]
 カルロス・クライバー指揮 バイエルン国立歌劇場管弦楽団

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<推薦盤2>
もう一枚となると迷う。
フルトヴェングラーもいい、ベームもいい・・。
ブルーノ・ワルターが端正な音楽を聞かせてくれる。
モーツァルトでも抜群の解釈を温かい視線で私たちに与えてくれたワルターが、この曲でとても良い。
カップリングがハ短調シンフォニーというのも良い。こちらも必聴ものなのだ。
■ベートーヴェン : 交響曲第4番&第5番 「運命」
 ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団

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2013.06.23 Sun l ベートーヴェン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ベートーヴェン 交響曲第3番 『英雄』 ★
今日は、大ベートーヴェンのシンフォニーの中でも中期の始まりを飾る傑作『英雄』を聞こう。
ベートーヴェンは生涯において、全部で9曲のシンフォニーを完成させているが、全てが素晴らしく独創的なアイディアに満ちている。

〇 英雄 〇
さて、この英雄と言うニックネームだが、これに関する逸話は子供の頃から色々と聞いてきた。
一番有名なお話が、

■--------------------------------■
時はフランス革命後の混迷するヨーロッパでのことであり、ベートーヴェンはナポレオンを『自由の戦士』と尊敬していた。そこでナポレオンに捧げるべくこの雄大なシンフォニーを作曲し表紙にはナポレオンへの献辞を記した。
しかし、ナポレオンが帝位に就くと
「おお!奴も所詮俗人に過ぎなかったか。これから、人々を踏みにじり誰よりも暴君になるであろう!」(という感じ)
と叫んで、既に出来上がっていた第3シンフォニーの表紙を破り捨てた。
■--------------------------------■

というものである。
子供の頃より永らく、私の中ではこれが真実であったが、どうやらこれは怪しい・・。
そもそも、ウィーン学友協会に現存する浄書スコア(自筆譜は紛失)にはちゃんと表紙が付いているし、怒り狂って破り捨てた形跡は無い。
代わりに、「ボナパルト」という献辞が消され、イタリア語で加筆されている。
『 Sinfonia eroica,composta per festeggiare il sovvenire d'un grand'uomo 』
(英雄的な交響曲、ある偉大な人間の思い出に捧げる)

非常に短気で一徹であったベートーヴェンらしい過激な逸話だが、実際には「ボナパルト」の文字はかなり感情的に消された形跡があるが、その程度であり、むしろ彼は生涯に渡ってナポレオンを尊敬していたというお話も聞いたことがある。

〇 作曲の経緯 〇
このシンフォニーが作曲されたのは、1803年~1804年なのだが、ベートーヴェンがナポレオンに捧げるシンフォニーを書こうと思ったきっかけは、1795年頃にウィーン駐在であったフランス公使ベルナドット将軍から『ナポレオンに新作を献呈しては』との薦めによるものだという。
だがしかし、この話は例の悪名高い伝記作家シントラーによるもので、作り話ではないかと言われている。
つまり、良く判っていないのだが、ベートーヴェンがナポレオンをフランス革命の精神を受け継ぐ英雄だと信じていたことは疑いなく、そうした気持ちを彼があらわす方法がこの献辞であったことは間違いないだろう。

〇 第3番『英雄』の特徴 〇
さあ、この曲にはベートーヴェン自身第1番、2番からの飛躍的な変化があるのだが、その目立った特長を私なりに挙げると

・冒頭は終結を思わせるトゥッティ2連発
・第1楽章の異様なほど長い展開部
・第2楽章は葬送行進曲
・スケルツォ楽章の確立(第3楽章)
・第3楽章のトリオでのホルン3重奏
・終曲は展開部とコーダを持った7つの変奏曲

〇 第1楽章(Allegro con brio) 〇
冒頭は少しびっくりする。
この主和音2連発は、この後にもう一つしかるべき和音を鳴らせば目出度く終われるものだ。
その後、チェロに第1主題が現れるが、このシンプルな主題はこの楽章の中で手を変え品を変え様々な貌を見せてくれる。
短い第2主題の提示のあと、コデッタを経て展開部に入る。
この展開部が異様なほど長いのだ。
200小節を優に超える展開部では、提示した主題をどんどん展開して行き、まるで永遠に膨れ上がっていくかのようだ。
コーダも第2展開部と言えるほど長いもので、この楽章全体が雄大な量と質を誇る楽章に仕上がっている。

しかし、私はこの楽章はベートーヴェンの腕力でグイグイ進んでいく印象が強くて、葬送行進曲や全体構成の点からは少し平衡感に欠けるような気がしている。
この異様な長さの展開部も、モーツァルトの後期シンフォニーなどと比べると、楽章間のバランスを崩しているようにも感じるのだ。
だが、この力技こそベートーヴェンがハイドンやモーツァルトの影響からの脱皮や、少し前にハイリゲンシュタットの遺書まで書いて尚生還した己の病苦への宣戦布告など、そうした自分を取り巻く殻を破った原動力なのだろう。

〇 第2楽章(Marcia funebre: Adagio assai) 〇
ここはハ短調の葬送行進曲。
ここが何故葬送行進曲なのか?
ナポレオンへの献辞があったからと言って、これを「英雄の死」=ナポレオンの死 と捉えるのは、全体を標題音楽と考えることに繋がっていくことにもなって、少し違うだろう。
私はもっと観念的な「葬送」のように考えている。
第1楽章が「英雄(思想)」の勇壮な戦いを象徴しているとしたら、第2楽章はその戦いには常に(英雄自身や英雄思想も含めて)「死(崩壊)」があるというような観念的な音楽表現。

〇 第3楽章(Scherzo: Allegro vivace) 〇
通常はメヌエットなどの舞曲が置かれることが多かった第3楽章に、ベートーヴェンは第2番のシンフォニーからスケルツォを置くようになっていた。(実は第1番もメヌエットとはなっているが実質的にはスケルツォ)
スケルツォの原意はイタリア語で冗談やおふざけを意味するそうで、日本語ではよく諧謔曲と呼ばれたりする。
音楽で使われる際には、原意を離れて、第2楽章の緩徐楽章と対照的な「テンポの速い曲」「リズミックな曲」を意味しているように思う。
結果的にメヌエットのように舞曲的であったりもする。
この第3楽章にはトリオで、ちょっと珍しいホルンによる3重奏がある。
この為の3本ホルンのオーケストラ編成になっている。

〇 第4楽章(Finale: Allegro molto) 〇
ここは変奏曲形式で、主題と7つの変奏曲からなっている。
2つの展開部とコーダを変奏に含めれば、10の変奏とみることもできる。
この主題は、バレエ音楽『プロメテウスの創造物』のフィナーレ舞曲からのもので、それをベートーヴェンは大変シンフォニックで巧みな変奏曲に組み上げている。


数々の画期的な試みを含んだ、勇壮な曲想のこのシンフォニーは「ベートーヴェンの」というより、全てのシンフォニーの中でも燦然と輝く正に金字塔となった。


【ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』】
交響曲第5番『運命』
【ベートーヴェン 交響曲第4番】
交響曲第4番
【ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番】
ピアノ協奏曲第4番



<今日の一枚>
英雄のベストは何と言ってもフルトヴェングラーだろう。
葬送行進曲は、弦による重く沈鬱な曲想と、フッと救われる様な木管による対比が見事だ。
第1楽章の特徴もフルトヴェングラーならばこその「腕力」がとても魅力的だ。
1952年の録音の割には音質も良い。(スタジオ録音)
■ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1952年録音盤

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<推薦盤1>
私の第1の推薦盤はフルトヴェングラーだが、バーンスタインがウィーンフィルを振った盤も、ある意味素直な音楽創りでいつもの癖が無くて流麗だ。
大きなスケール感をもって、この曲に立ち向かっている好演だと思う。
これは全集にもなっている、バーンスタインのライブ盤。
■ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、「レオノーレ」序曲第3番
 レナード・バーンスタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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<推薦DVD>
「カラヤンの遺産」と銘打ったDVDがある。
これはベルリン・フィル創立100周年を記念して行われたコンサートの模様を収録したDVDで迫力たっぷりのカラヤン+ベルリン・フィルの熱演が楽しめる。
私はベートーヴェンの交響曲全集もカラヤンのものを良く引っ張り出すが、このDVDもスタイリストのカラヤンが観れる貴重なものなので演奏会気分で音楽に浸りたい時にはこれだ。
■Karajan / Beethoven : Symphony No.3“Eroica” - Jubilee Concert 100 Years 1882-1982 [DVD] [Import]
国内盤は、仲介業者によって値段の吊り上げが行われているため、このインポート盤がお奨めだ。
日本語表示に拘らなければ、こちらが安くてお得だ。

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2013.06.18 Tue l ベートーヴェン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ デューク・エリントン A列車で行こう ★
デューク・エリントン、勿論「デューク」は愛称で、本名は「エドワード・ケネディ・デューク・エリントン(Edward Kennedy "Duke" Ellington)」
ジャズ界ばかりか、世界の音楽シーンで多くのビッグミュージシャンが、公爵(Duke)の影響を公言している。

〇 ビッグ・バンド の本流 〇
彼の死後も尚活躍している「デューク・エリントン・オーケストラ」が活動を開始したのは、1920年代のことだ。
ビッグ・バンドというジャズの形態を確立したのは、フレッチャー・ヘンダーソンであろうが、ニューヨークのハーレムでクラブやボールルームを拠点に、このジャズ・スタイルの流れを作り上げたのは、デューク・エリントンだ。
フランスの夭折したボリス・ヴィアンという作家は自らもジャズ・トランペット奏者だったが、『日々の泡』という作品の中でエリントンに触れている。

「ただ二つのものだけがある。どんな流儀でもいいが恋愛というもの、かわいい少女たちとの恋愛、それとニューオーリンズの、つまりデューク・エリントンの音楽。ほかのものは消え失せたっていい、醜いんだから。」(『日々の泡』ボリス・ヴィアン著、曾根元吉訳、新潮文庫 から)

なかなか粋なことを言っている。

「デューク・エリントン・オーケストラ」は2011年にも来日しているが、その際にメンバーは、宮城県の気仙沼市にある、小・中学生のビッグバンド「スウィング・ドルフィンズ」が先輩から繋いできた伝統が潰えてしまう危機にあることをニュースで知る。
すぐさまメンバーは、コンサート先で募金を開始し、来日記念盤の収益と合わせてスウィング・ドルフィンズに寄付している。
「夢と希望を持って、ジャズの演奏に取り組んでいただけることを望んでおります」との言葉を添えて。

翻れば、1964年の新潟地震の際にも、たまたま来日中だったエリントンは、迷わず次回のハワイコンサートをキャンセルし、東京で震災募金コンサートを行い、収益は新潟市に贈られている。
人間エリントンの精神は、今もその音楽性と共にデューク・エリントン・オーケストラに脈々と受け継がれているのである。

〇 『ザ・ポピュラー』 〇
さて、このアルバムは私の大好きなナンバー『A列車で行こう」』が収録されている、エリントンのベストアルバムで、彼の膨大なレパートリーから彼自身が11曲をチョイスした選りすぐりのアルバムだ。

収録曲は以下の通り

1. A列車で行こう
2. アイ・ガット・イット・バッド
3. パーディド
4. ムード・インディゴ
5. 黒と茶の幻想
6. ザ・トゥイッチ
7. ソリチュード
8. 私が言うまで何もしないで
9. ザ・ムーチ
10. ソフィスティケイテッド・レディ
11. クリオール・ラヴ・コール


ご覧の通り、名曲ばかりが並んでいる。
中でも、やっぱり心が躍るのは「A列車で行こう」だ。
これを聞けば、多少元気がないときでも、何とかなるさ!!みたいな気分になれる。
ノリノリだ。
『黒と茶の幻想』はプランジャー・ミュートという弱音器を付けたトランペットが印象的でムーディな曲だ。
村上春樹さんの「アフターダーク」にも登場した、『ソフィスティケイテッド・レディ 』 、確かにハリー・カーネイの気怠いバスクラリネットが流れ出すと、空間に雰囲気が乗り移る・・・。
数々のエリントンのナンバーが聞ける、お楽しみアルバムだ。


【オスカー・ピーターソン 『We Get Requests』】
『We Get Requests』
【キース・ジャレット 『ザ・メロディ・アット・ナイト・ウィズ・ユー』】
『ザ・メロディ・アット・ナイト・ウィズ・ユー』
【ケニー・ドリュー 『IMPRESSIONS』】
『IMPRESSIONS』


<今日の一枚>
■ザ・ポピュラー・デューク・エリントン [Original recording remastered]
 音質もとても良い。

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デューク・エリントン


2013.06.16 Sun l ジャズ l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ヘンデル 『水上の音楽』 ★
今日はバロックの雄、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルだ。
ヘンデルの生年1685年は、奇しくも大バッハとドメニコ・スカルラッティが生まれた年でもある。
バッハが「音楽の父」なら、ヘンデルは「音楽の母」とどこかで聞いた気がするが、この呼称はあまり一般的ではない。
ヘンデルとバッハ、この二人はニックネーム以外でも比較されることが多いが、ヘンデルがドイツ国内に活動場所を限定せずに、広くヨーロッパを旅し、後半生をイギリスで過ごしたのに対して、バッハは殆どドイツを出ることは無かった。
社交的なヘンデルと内弁慶なバッハ、生前はバッハよりもヘンデルの方が有名で成功した音楽家であったようだ。

音楽的にも、ヘンデルはオペラや劇場用の宗教音楽に重心があるのに対して、バッハは教会音楽や自己の音楽観を追求するような作品を多く残している。
その辺りの差が、後世の西洋音楽への影響度の差異になって現れていると思う。
ヘンデルは当時の富裕層が求める音楽を供給し、バッハはこつこつとポリフォニー音楽の礎を創り、「音楽の父」となったのだろう。

〇 水上の音楽 〇
この「水上の音楽」には、有名な逸話が残されている。

曰く:
当時(1710年から)ヘンデルはドイツのハノーファ選帝侯に仕えていたが、1712年から外遊した先のロンドンに居ついてしまい、母国からの再三の帰国命令を無視していた。
そのままならまだ良かったが、1714年にイギリスのアン王女が亡くなると、何とそのハノーファ選帝侯がジョージ一世としてイギリスに迎え入れられることになってしまった。
そこで一計を案じたヘンデルは、新王の舟遊びの為の音楽を作りご機嫌伺いをしようとした。
1715年のテームズ川での舟遊びの際に、この「水上の音楽」が演奏され、目出度く仲直りが出来た、と。

まことに良く出来たお話だが、最新の研究では1715年の舟遊びの際に、この曲が演奏された事実は無いということである。
しかし、1717年と1736年の舟遊びの際には演奏されたようであり、どうやら王の舟遊びの度に新しい曲が追加され、王族の楽しみに供されたようだ。

〇 構成 〇
この「水上の音楽」の管弦楽版には有名なもので3つある。
レートリッヒ版、クリュザンダー版、ハーティ版の3つで、現在の演奏ではレートリッヒ版(通称ハレ版)が採用されることが多い。

例えば以下のような構成だが、これは演奏する側の判断で第1組曲第3曲~第5曲を一つに扱ったり、色々ある。
CDでもトラックの切り方が様々なので、ある意味面白い点でもある。
第1組曲 ヘ長調
 第1曲:「序曲」 ラルゴ-アレグロ
 第2曲:アダージョ・エ・スタッカート
 第3曲:アレグロ
 第4曲:アンダンテ
 第5曲:アレグロ(ダ・カーポ)
 第6曲:「パスピエ」
 第7曲:「エア」
 第8曲:「メヌエット」
 第9曲:「ブーレ」
 第10曲:「ホーンパイプ」
 第11曲:アレグロ
第2組曲 ニ長調
 第1曲:(序曲)アレグロ
 第2曲:「アラ・ホーンパイプ」
 第3曲:「メヌエット」
 第4曲:「ラントマン」
 第5曲:「ブーレ」
第3組曲 ト長調
 第1曲:(メヌエット)
 第2曲:「リゴードン」
 第3曲:「メヌエット」
 第4曲:「ブーレ」

〇 典雅でスケールの大きい曲想 〇
第1組曲の序曲から、「あ!ヘンデル」だ。
本当にヘンデルの音楽は、小難しい学説のようなものを全て排除して楽しめるものだ。
序曲でヘンデルを堪能していると、すぐに第2曲に移る。(1曲1曲は2分~3分のものでとても短い)
このアダージョでは、木管の美しいメロディが心を癒す。
「あぁ・・、ヘンデル」だ。
第3曲では、金管が大活躍、ホルンの動きに大注目。
「おお!ヘンデル」だ。
第4曲では、木管から弦に流麗な音楽が行きつ戻りつする。
とても美しい。
第7曲のエアは、全曲中でも第2組曲の「アラ・ホーンパイプ」と並んで最も有名だろう。
堂々としたスケール感と優雅な曲想で、いかにも王侯貴族の音楽だ。
王宮を着飾った貴族が闊歩する姿が思い浮かべられるではないか。

この典雅な音楽を、是非あなたの自慢のオーディオか携帯音楽プレイヤーで聴いてほしい。
頭の中で鳴る、携帯プレイヤーで一人で楽しむのも私は好きだ。

<今日の一枚>
今日は、この『水上の音楽』を サー・ネビル・マリナーで聴くことにしよう。
ナイトの称号は伊達ではない。
このイギリスのマエストロは実に幅広いレパートリーを誇り、バロックにも造詣が深い。
■ヘンデル:王宮の花火の音楽 水上の音楽
 サー・ネビル・マリナー指揮 アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ

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<推薦盤1>
古楽での演奏ではこのCDが最もヘンデルらしく、典雅な王侯貴族の香りも漂い、細部に至るまで音楽的な気配りが行き届いていて大変素晴らしい。
■ヘンデル:水上の音楽/王宮の花火の音楽
 ジョン・エリオット・ガーディナー指揮 イギリス・バロック管弦楽団

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<推薦盤2>
ヘンデルの音楽を大編成のオーケストラで現代風にダイナミックに楽しむ。
そんな楽しみ方も勿論ありだ。
このセルの盤はハーティ版で、水上の音楽も美味しい処どりで、楽しいこと請け合いだ。
■ヘンデル:組曲「水上の音楽」 組曲「王宮の花火の音楽」(ハーティ編) 他
 ジョージ・セル指揮 ロンドン交響楽団

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2013.06.15 Sat l ヘンデル l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ハイドン 交響曲第103番 『太鼓連打』 ★
本日はハイドンで行こう。
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン、18世紀古典派を代表する作曲家だ。
バッハが「音楽の父」なら、ハイドンは「交響曲の父」「弦楽四重奏曲の父」などと呼ばれることがある。
確かに、ハイドンが残した104曲の交響曲(他にNo.の付いていない交響曲が4曲ある)と68曲の弦楽四重奏曲(正味の数)は、その数もさることながら、内容が大変独創的で素晴らしい。
ハイドンの77年の生涯全般に渡って創作されている、彼の主要な作曲ジャンルでもある。

〇 ザロモン交響曲 〇
ハイドンはロンドン在住だった音楽興行師であるヨハン・ペーター・ザーロモンの招聘で2回に渡って渡英している。
1度目は1791年から1792年にかけて、2度目は1794年から1795年にかけてで、この渡英の際に作曲した交響曲12曲をザーロモンの名に因んで、「ザロモン交響曲」と呼ばれている。(ザーロモンと伸ばすのが正しいのかも知れない)

2回の渡英に分けて下記のように第1期と第2期に分けて整理されている。
第1期 交響曲第93番~第98番
交響曲第93番ニ長調
交響曲第94番ト長調「驚愕」
交響曲第95番ハ短調
交響曲第96番ニ長調「奇蹟」
交響曲第97番ハ長調
交響曲第98番変ロ長調

第2期 交響曲第99番~第104番
交響曲第99番変ホ長調
交響曲第100番ト長調「軍隊」
交響曲第101番ニ長調「時計」
交響曲第102番変ロ長調
交響曲第103番変ホ長調「太鼓連打」
交響曲第104番ニ長調「ロンドン」

この12曲の「ザロモン交響曲」は、別名「ロンドン交響曲」とも言われている。(それも納得)

〇 ザロモンとジュピター 〇
モーツァルトの最後のシンフォニーは『ジュピター』と呼ばれているが、このネーミングはザロモンによるものだと言われている。
ハイドンはモーツァルトの晩年(と言っても若かったが)にモーツァルトと親交を深めているが、この時代の人間関係のようなものが伺えるエピソードだ。

〇 太鼓連打 〇
この第103番『太鼓連打』はザロモン交響曲(ロンドン交響曲)の最後から二つ目に当り、晩年のハイドンの充実振りが伺える、ハイドン独特の軽みの中にも独創性に富んだ曲で、初演から現在に至るまで人気のあるシンフォニーだ。

〇 何故?『太鼓連打』 〇
この「太鼓連打」というニックネームは、第1楽章の冒頭とコーダの始めに、Wティンパニによる「ドドドド」という正に太鼓の連打があるからだ。
第1楽章を聞けば、冒頭からティンパニで、それはそれで納得はいくのだが、ここでハイドンがやりたかったことが私には良く判らない。
生来のユーモア感覚の為せる業なのか、序奏の新機軸としての発想なのか・・・。
この後続く序奏のメロディは、良く聞くとソナタ形式の主部でも現れる。
ティンパニの連打と少し不気味な色彩を帯びる低弦が奏する序奏、何かを象徴しているのかもしれない。

〇 双子の主題 〇
この曲を聞いて印象に残るのは、各楽章の主題の類似性だ。
第1楽章はソナタ形式だが、その第1主題と第2主題は類似性があり、特に第2主題の後半は第1主題から取られているように思う。
第2楽章はAndanteで変奏曲になっているが、ここでの二つの主題がハ短調とハ長調でとても良く似た和音進行をする。

さらに、主題ではないが、第3楽章のメヌエットでも、トリオの部分が近親調ではなくメヌエットと同じ変ホ長調で、ここでも類似性を持たせた上で、曲調を変えることでメリハリをつけている。

このように、ハイドンはこのシンフォニーの中で、双子の音楽を如何にコントラストをつけて展開するか、というテーマに挑んでいるかのように感じられる。

〇 優雅な宮廷音楽 〇
これはザロモン交響曲全般に言えることだが、ハイドンの時代の音楽が貴族を中心とした富裕層のものであったことから、曲調はあくまで優雅で調性もあまり尖ったものは使われていない。
バロックから続くこの流れをハイドンは色濃く継ぎながらも、独特の感性と独創性のある音楽の構成でシンフォニーを一つの高みに持っていった作曲家だと感じる。


【ハイドン 交響曲第101番『時計』】
交響曲第101番『時計』


<今日の一枚>
私はハイドンのシンフォニーを聞く際に、まずこの全集を引っ張り出す。
殆ど聞く機会の無いハイドンの初期のシンフォニーを含めて、ハイドンの第1人者のアダム・フィッシャーが非常に丁寧に、流麗な音楽を聞かせてくれる。
ハイドンの語るには絶好の全集だと思う。
ちなみに、オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団は1987年にアダム・フィッシャーによって組織されたオーケストラで、本拠地はハイドンゆかりのアイゼンシュタットのエステルハーツィ宮殿内のハイドンザールだ。
オーストリアからのメンバーとは即ちウィーン・フィルのメンバーということだ。

■ハイドン:交響曲全集(33枚組)/Joseph Haydn: Symphonies 1-104 [CD, Import]
 アダム・フィッシャー指揮 オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団
 2001年録音で音質は良好。

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<推薦盤1>
ハイドンはちょっと単調かな、と思っている方にはアーノンクールをお奨めする。
切れ味のあるハイドンが楽しく聞ける。
■ハイドン : 交響曲第101番「時計」,第102番,第103番「太鼓連打」,第104番「ロンドン」
 ニコラウス・アーノンクール指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

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<推薦盤2>
古楽器からも良いCDを推薦したい。
クイケンだ。
このCDは小編成オーケストラの弦楽器などの音色のピュアさを堪能しつつ、しかもなかなかスケール感のある演奏を聞かせてくれるのだ。
ザロモン交響曲12曲全てが収録されている。
■ハイドン:ロンドン(ザロモン)交響曲集
 シギスヴァルト・クイケン指揮 ラ・プティット・バンド

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2013.06.14 Fri l ハイドン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ヴェルディ 歌劇 『椿姫』 ★
今年はイタリアオペラの巨匠ジュゼッペ・ヴェルディの生誕200年にあたる年だ。
また、ドイツオペラ界の重鎮リヒャルト・ワーグナーの生誕200年でもある。
日本国内でも様々なイベントが開催される。

ヴェルディのオペラで調べてみると、
■ミラノ・スカラ座
ハーディングの指揮で「ファルスタッフ」、ドゥダメルの指揮で「リゴレット」を上演。
◆ヴェルディ:「ファルスタッフ」
9/4(水)・6(金)・8(日)・12(木)・14(土) 東京文化会館
◆ヴェルディ:「リゴレット」
9/9(月)・11(水)・13(金)・15(日) NHKホール
◆特別演奏会
9/5(木) 東京文化会館

これは出来ることなら、是非観に行きたい!!
やっぱり想像通りのお値段、S席62,000円 A席55,000円・・・。

■ハンガリー国立歌劇場 ヴェルディの「椿姫」を上演。
6/15(土) 神奈川県民ホール 大ホール
6/16(日) 川口総合文化センター リリア メインホール
6/20(木) 府中の森芸術劇場 どりーむホール
6/21(金)~23(日) 東京文化会館 大ホール
6/24(月) アクトシティ浜松 大ホール
6/26(水) 愛知県芸術劇場 大ホール
6/28(金) 三重県文化会館 大ホール
6/29(土) フェスティバルホール
6/30(日) 神戸文化ホール 大ホール
7/2(火) iichiko グランシアタ
7/3(水) アクロス福岡 福岡シンフォニーホール

こちらはうっかりしている内にSOLD OUT。
本日は、このハンガリー国立歌劇場の演目だったヴェルディの『椿姫』を聞く。

〇 ヴェルディ 〇
19世紀のイタリアオペラを代表する作曲家、ジュゼッペ・フォルトゥニーノ・フランチェスコ・ヴェルディ。
ヴェルディという作曲家は、ワーグナーやプッチーニ同様に、その作品の殆どがオペラだ。
しかし、二人に比して作曲技法は地味で、派手な音響効果を狙ったり、独自の音楽語法を展開するというタイプの作曲家ではなかった。
経済的にも苦しい時代が続いて、作曲依頼に応え続けた結果オペラ作家としてはかなりの多作家となった。
(ワーグナーやプッチーニが10余りなのに対して、ヴェルディは生涯で26のオペラを作曲している。)
その性格は真面目で堅実、数々の不幸に苛まれながらも己のスタイルを失うことは無かった。

〇 ヴェルディの音作り 〇
作曲技法が「地味」というのは私の個人的偏見に近いかも知れないので、言い直すと、シンプル(簡潔)なのだと思う。
劇の進行と、登場人物の心情に密接な音造りであり、和声であって、無用な音をいたずらに重ねるようなことはしなかった。
この『椿姫』の前奏曲にしても、もの哀しい弦の啜り泣きに、私などはいきなり号泣してしまいそうだ、これ以上の音は要らない。

〇 ヴェルディ オペラの主人公 〇
さらに、その主人公達が特徴的だと思う。
ヴィオレッタは娼婦(椿姫)、リゴレットはせむしの道化(リゴレット)、ザモーロはスペインに弾圧されるインディオの酋長(アルツィーラ)、エルナーニは山賊の頭目(エルナーニ)・・など等。
ワーグナーが自身のスタイルから神話や伝説に題材をとったのに対して、ヴェルディは社会の弱者やはぐれ者がどうしようもない「運命の力」(そんなオペラもあった)に翻弄されながらも、己の愛を全うする、といった人間劇を綴った。
そうしたことも、その当時の聴衆の心を掴んだのだろう、ヴェルディは押しも押されもしないイタリアオペラのマエストロとなった。

〇 『椿姫』 〇
これはヴェルディの中期を飾る傑作オペラだ。
直前の作である『イル・トロバトーレ』は復讐劇であったが、こちらの『椿姫』はアレクサンドル・デュマ・フィスの原作に基づく悲恋物語。
台本はフランチェスコ・マリア・ピアーヴェが書いている。
原題は「La traviata(ラ・トラヴィアータ)」、直訳(堕ちた女)すると変だが、娼婦のことを言っているのだと思う。
小デュマが書いた自叙伝的原作は「La Dame aux camelias」、こちらは「椿姫」と言っていいのだろう。

主人公のヴィオレッタはパリの社交界の華、所謂高級娼婦。
そのヴィオレッタが青年貴族アルフレードとの純粋な愛と現実との狭間で翻弄され、最後には肺結核の為に亡くなってしまうという悲恋物語だ。

〇 初演は失敗 〇
初演は1853年にフェニーチェ劇場で行われた。(フェニーチェ歌劇場は今年4月に来日した記憶が新しい)
その初演の際は、主人公が娼婦であるということから当局から問題視されたり、準備期間が短かったため稽古不足であったり、ヴィオレッタ役がとても結核で苦しんでいるようには見えなかったりで、散々だったようだ。
無論今では世界中で上演される人気オペラだが、実は最後のヴィオレッタの元気すぎる件については、私も中学のときに生まれて初めてイタリアオペラを観た際に実感したことがある。
その際の第3幕の演出では、病気で痩せ細ったヴィオレッタをアルフレードが抱きかかえるというシーンがあったのだが、アルフレード役の相当な逞しい腕でも、あまりの重量にワナワナと震えていた。
笑えない違和感に、舞台の難しさみたいな感傷に浸ったものだ。

〇 美しい数々のアリア 〇
このオペラはヴェルディのオペラの中でも、優雅で華麗なアリアに満ちている。
前奏曲:もの哀しい弦のメロディにヴィオレッタの運命が暗示される。
第1幕:
華やかな社交場の場面では、アルフレードとヴィオレッタそれに合唱による有名な「乾杯の歌」が歌われる。
続いて、二人による「ワルツと二重唱」、美しいメロディが愛の歌を奏でる。

アルフレードの真実の愛にヴィオレッタの心は躍る。「ああ、そは彼の人か」(ヴィオレッタ)
いやいや自分は娼婦。「花から花へ」(ヴィオレッタ)
この辺りの歌唱はカラスの絶唱を聞くと鳥肌が立つ。

第2幕第1場:
ここはこのオペラ上、最も大切な転換点だ。
ポイントはアルフレードの父ジェルモンによる懸命な説得、アルフレードを愛するなら別れてくれと。
ジェルモンはヴィオレッタと話すうちに彼女の真実の愛に感動しつつも、心を鬼にして別れを迫る。
ヴィオレッタは自分の娼婦という身の上を考えて、次第に自分を抑える決心に傾いていく。
この辺りの二人のやりとりと、その揺れ動く心を音楽で表現するヴェルディの腕前は見事と言っていい。

そして、このヴィオレッタの自己犠牲とも言える決心は、第3幕の悲劇へと繋がっていく。
このオペラの悲劇性を増幅し、よりドラマティックで感動的な結末へと誘う最大の布石がここにある。

そして、この場の最後にはジェルモンによる有名なアリア「プロヴァンスの海と陸」が歌われる。
父親が息子に故郷の風景を思い出させようと、朗々と歌うのだ。
ここのヴェルディの音楽は、ふくよかで海のように深い。

第3幕:
結核の為に、死を迎えようとしているヴィオレッタのもとに父親から全てを聞かされたアルフレードが駆けつける。
しかし、ヴィオレッタの衰弱は激しくやがてアルフレードとの愛を確認しながら静かに息をひきとる・・。

有名なアリアは前半に集中しているが、全編に渡ってヴェルディの音楽は登場人物の心情を支えて、見事な音楽劇を作り上げている。


【レオンカヴァルロ 『道化師』】
『道化師』
【ロッシーニ 『泥棒かささぎ』】
『泥棒かささぎ』



<今日の一枚>
『椿姫』にはマリア・カラスの歴史的名盤があるのだが、いかんせん音が悪いので、今日はクライバーの躍動的で鮮烈な音と、歌手の感情移入にまで連動していく素晴らしいタクトで聞いてみたい。
長年聞き続けている一番のお気に入りだ。
■ヴェルディ 歌劇『椿姫』全曲
 カルロス・クライバー指揮 バイエルン国立歌劇場管弦楽団・合唱団
 配役:
 ヴィオレッタ:イレアーナ・コトルバシュ
 アルフレード:プラシド・ドミンゴ
 ジェルモン:シェリル・ミルンズ
 フローラステファニア・マラグー、他
 録音:1976&77年(ステレオ)

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<推薦盤1>
クライバー盤は勿論推薦盤だが、イタリアオペラの名指揮者セラフィンの『椿姫』も必聴ものだ。
■ヴェルディ:椿姫 全曲
 トゥリオ・セラフィン指揮 ミラノスカラ座管弦楽団・合唱団
 配役:
 ヴィオレッタ:アントニエッタ・ステルラ
 アルフレード:ジュゼッペ・ディ・ステファーノ
 ジェルモン:ティト・ゴッビ 、他

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<推薦DVD>
オペラは、やはり映像で楽しむのが一番だ。すごいDVDが出た。
2005年のザルツブルグ音楽祭目玉だった、アンナ・ネトレプコの椿姫を家庭で観られるのだ!
当日のプラチナ・チケットは、数十万円で取引されたとか・・。 
何と言ってもネトレプコ、そのエネルギィッシュな歌唱もさることながら、抜群の演技力と美しい容姿。
この椿姫は素晴らしい!
■ヴェルディ:歌劇《椿姫》 [DVD]
 カルロ・リッツィ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 配役:
 ヴィオレッタ:アンナ・ネトレプコ
 アルフレード:ローランド・ビリャソン
 ジェルモン:トーマス・ハンプソン  、他

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この再販のDVDは安くてお買い得だ。(以前は7000円以上していた)
発売は6月19日で 今なら予約して入手できる。



2013.06.11 Tue l ヴェルディ l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ オスカー・ピーターソン We Get Requests ★
今日はジャズが聞きたい。
それも、聞く者を心地良くスウィングさせてくれる名盤。
となれば、私の中ではオスカー・ピーターソンだ。
『鍵盤の皇帝』とか『魔法の指を持つ少年』などと称される、超絶技巧と抜群のスウィング感を持ったジャズ界の巨匠だ。
魔人の如く弾きまくり、しかもミスタッチをしないテクニックと、ナット・キング・コールばりのタイム感覚で、ジャズ好きばかりでなく、あらゆる音楽ファンを魅了した。
かく言う、私もその一人だ。
先日、ベートーヴェンの記事で触れたバックハウス同様、ベーゼンドルファーを愛した一人だ。
私は基本的にはスタインウェイの音が好きだが、バックハウスとピーターソンのベーゼンドルファーの音を聞くと、う~ん、これもいいなぁと、苦も無く降参してしまう。
スタインウェイよりも、よりヒューマンな音かなと思っている。

彼のアルバムの中でも、私が自宅でも、飛行機・新幹線等での移動中のウォークマンでも、カーステでも、一番良く聞くのがこれ、We Get Requests だ。
とってもとっても気持ちの良い、最高の一枚!!(^^)♪

〇 耳に馴染みのスタンダード 〇
コルコヴァード、イパネマの娘、酒とバラの日々 など等、誰の耳にもお馴染みのスタンダードナンバーが並んだ、快適なアルバムだ。
私は、特に出始めの「コルコヴァード」で心がウキウキしてくる。
冒頭からベースとピアノの掛け合いに酔う。
心が自然にスウィングしてくる。とても良い。
2曲目の「酒とバラの日々」、これはヘンリ・マンシーニの作曲によるもので、同名の映画に使われて大ヒットした。
この曲はピーターソンの代名詞的な名曲でもあるが、これがまたいい!

〇 バッハまで登場 〇
3曲目の『マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ 』の最後には、バッハの147番の有名なコラールが登場する。
例の「主よ、人の望みの喜びよ」だ。
ジャズがバロックと親和性が高いのが、こんなところからも判る。

〇 全曲気持ちいいアルバム 〇
このように、声高に叫ぶことなく、心地よいリズムを刻みつつ、歌うところはしっとり歌う、オスカー・ピーターソントリオ。
実に快適で、ジャズに興味のない人でも、読書や仕事のBGMにでも、お酒やお食事のお供にも、オールラウンドに聞けるアルバムでありながら、非常にハイレベルなジャズを聞かせてくれる優れもの。

【 曲目 】
1. コルコヴァード
2. 酒とバラの日々
3. マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ
4. ピープル
5. ジョーンズ嬢に会ったかい?
6. ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー
7. イパネマの娘
8. D.& E.
9. タイム・アンド・アゲイン
10. グッドバイJ.D.


【デューク・エリントン 『ザ・ポピュラー』】
『ザ・ポピュラー』
【キース・ジャレット 『ザ・メロディ・アット・ナイト・ウィズ・ユー』】
『ザ・メロディ・アット・ナイト・ウィズ・ユー』
【ケニー・ドリュー 『IMPRESSIONS』】
『IMPRESSIONS』



<今日の一枚>
■オスカー・ピーターソントリオ 『We Get Requests』

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輸入盤で良ければ、そちらの方が多少安いからお得だ。


 オスカー・ピーターソン 


2013.06.09 Sun l ジャズ l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番 ★
さて、今日は大ベートーヴェンのピアノ協奏曲だ。
それも皇帝ではなく、第4番が聞きたい気分。
交響曲でもそうだが、ベートーヴェンという人は奇数番号と偶数番号で曲調に共通性があるように感じている。
奇数番号の曲はおしなべて豪快・豪華絢爛・偉大というイメージな曲が多いが、偶数番号になるとベートーヴェンのセンシティブな面が強調されている曲が多い。
この第4番のコンチェルトも、厳しく引き締まった中にも、ベートーヴェンの柔らかく繊細な部分が表出した高貴な曲になっていると思う。
出来ることなら、一人で部屋に籠り、しみじみ聞きたい音楽だ。

〇 出だしが重要 〇
どの曲でもそうだと毎回言っているような気がしないでもないが、いや、やっぱり第1楽章の出だしはとても重要だ。
この第4番の場合、形式上の顕著な特徴としても第1楽章の冒頭が独奏楽器から始まるという事が挙げられる。
あの印象的なピアノの同音連打(無論和声付き)で始まる冒頭、私はここがこの曲の中でも一番好きだし、CDを聞く際にも一番緊張し括目して聞く箇所だ。
かのドイツが生んだ名ピアニストであるヴィルヘルム・バックハウスもこの第4番を愛し、冒頭の箇所を何度も何度も練習したと述懐している。
しかも晩年残した言葉では、結局満足いく演奏は一度もできなかったとまで言っている。
単純であるが故に、至極困難な同音連打。
そうなのだ、ヴィルトオーソと言われる人ほどシンプルなメロディに慄く。
少ない音で、万感を表現し、人をして感動せしめる程難しいことはない。

独奏楽器が最初から活躍する例は、モーツァルトの記事でも触れた。
モーツァルト ピアノ協奏曲第9番『ジュノーム』 なのだが、曲の繊細さでも共通項があるように思っている。

ベートーヴェン、このおっかない顔の作曲家がこんなにも華奢な指で私たちの胸をノックする、冒頭の同音連打、心して聞きたい。

そして、このピアノの囁きにオーケストラが応えるのだが、ここがまたいい!
ト長調に対してロ長調に転調しているのだろうか、転調効果抜群である。
ここがこの曲のありようを語り尽くしている。
つまり、独奏ピアノとオーケストラが親密に内省的な会話を全曲に渡って繰り広げるのである。

〇 決然としかも繊細に 第2楽章 〇
ここは弦による決然とした始まりに背筋が伸びる。
それを受けて、ベートーヴェンとしては少し珍しいかもしれない程の繊細で瞑想的な応答をピアノが演じる。
ここはピアニストのロマン性が遺憾なく発揮される箇所だと思う。

 爽やかに 第3楽章 〇
宙を漂っていた魂が己の身体に戻ったかのように、明るいメロディに乗って爽やかな会話が始まる。
しかし、時に密やかに、時には晴やかに、メリハリのある展開でベートーヴェンやはり巧みだ。


【ベートーヴェン 交響曲第5番『運命』】
交響曲第5番『運命』
【ベートーヴェン 交響曲第3番『英雄』】
交響曲第3番『英雄』
【ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第5番『春』 】
ヴァイオリンソナタ第5番『春』




<今日の一枚>
今日はこの曲の美しさを教えてくれた名盤、フリードリッヒ・グルダがホルスト・シュタイン+ウィーン・フィルと組んだ盤を聞きたい。
全体に、グルダのピアノがとても詩情に溢れて素敵なのだが、私が一番お気に入りはやはり第1楽章冒頭の入りの部分。
バックハウスが到達しえなかったセンシティブなポエムにグルダが行き着いたのではないだろうか。
それから第2楽章がまた素晴らしい。
記事にも書いた、この曲の持つ精妙な感興を見事に表現していると思う。

■ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番ト長調 作品58
        ピアノ協奏曲第3番ハ短調 作品37
 フリードリッヒ・グルダ(P) ホルスト・シュタイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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<推薦盤1>
グルダと同様、ピアノとオーケストラの絶妙な会話を高貴に歌い上げているのがバックハウスだ。
バックハウス本人が、この曲が一番好きだと言っているように、この曲に対する思い入れのすごさが冒頭に聞ける盤だ。
イッセルシュテットの指揮がまたウィーン・フィルの艶やかで美しい特性を良く引き出している。
抜群のハーモニーだ。

■ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番・第5番
 ヴィルヘルム・バックハウス(P)ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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<推薦盤2>
卓越したテクニックと透徹感のあるピアノ、ポリーニのベートーヴェンも素晴らしい。
特にこのベームとの旧盤が私は好きだ。
時に冷たい様な印象も抱くのだが、厳しくリリックに歌う第4番、これは一聴の価値ありだ。
ポリーニが単なるショパン弾きではない証でもある盤。
■ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4&5番《皇帝》
 マウリツィオ・ポリーニ(P)カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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ポリーニが若い!

2013.06.05 Wed l ベートーヴェン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ モーツァルト 交響曲第40番 ★
交響曲第40番ト短調 K.550、このシンフォニーは、モーツァルトが残した傑作の中でも最も有名な曲の一つだ。
モーツァルトにとっても、ナンバーの付いたシンフォニーの中で2曲しかない短調のシンフォニーの一つで、特別なものだった筈なのだ。(もう一曲は、同じくト短調の25番)

〇 哀しみ?慰め? 〇
この曲は、調性のこともあってモーツァルトの「悲しみ」や「諦観」といったものを感じる、と聞くことがあるのだが、う~ん、確かにメロディが余りにも美しいので、そのような聞き方にもなるのだろうが、私には「苛立ち」や「焦燥感」「もやもや感」が根底にあるように思える。
あるいは、モーツァルトにとってちょっとした実験的な試みだったのかと考えたこともある。
例の僅か2~3ヶ月の間に作曲された3大シンフォニーの中で、この曲はト短調という調性も異例だが、曲の構造がとても不安定なものになっている。
ジュピターなどは、バッハ流のきっちりとした構築美をもっているのだが・・・。

〇 不安で始まる 第1楽章 〇
まずヴィオラによる短い序奏の後に、あのあまりにも有名な旋律「ラソソ、ラソソ、ラソソーミ(固定ド)」がヴァイオリンに出る。
ここでは序奏が効果的?に聞く者の不安を煽る。
この短い序奏と「ラソソ、ラソソ、ラソソーミ」で、全曲のイメージを語りきっている。
こういうある意味潔いとも言える語り口にモーツァルトの天才たる所以があるのだと思っている。
短いフレーズの中にあらゆる想いを封じ込めてしまう。
だから、それを紐解いて私たちに聞かせる演奏家という職業が成立するし、再生芸術を楽しむ私たちの「酒」や「珈琲」「会話」の味が変わるというものだ。
このメロディは「ため息の動機」とも言われるメロディで、これがこの楽章中同型で現れる。
展開部に入ると、この主題が嬰ヘ短調から順に短調を渡り歩く。
彷徨い歩くと言った方が妥当か。
深い森を宛てもなく彷徨う蝶のように・・・。

〇 何拍子なのだ?第2楽章 〇
この楽章は何とも落ち着かないリズムなのだ。
最初聞いた時には「うん?3拍子かな」と思ったのだが、例の32分音符の「チュラ、チュラ」とヴァイオリンが奏するあたりに来ると「あれ?2拍子だったのかな?」、本当にリズムが判りにくい楽章になっている。
実際にスコアを見ると、これは8分の6拍子。
しかし、2拍子と3拍子の組み合わせみたいな構成になっている。
モーツァルトは意図的に拍子を暈した音楽を作っている。
またまた、聞く者を不安に陥れるモーツァルトのトラップ。

〇 踊れないメヌエット 第3楽章 〇
無論、これは実際に踊るための音楽として作られたものでは無いと思うが、元来メヌエットは2小節又は4小節が一つの単位として作られる音楽だ。(2小節6拍とか、舞曲なのだから)
ところが、このメヌエットは 
(3小節、3小節)+(5小節、3小節) 又は (3小節、3小節)+(4小節、4小節)
という構造になっていて、ものすごく異常な形だ。
この曲では踊れない。
私たちがメロディやハーモニー、リズムを感じるのは、経験則によるスキーマを持っているからだが、このメヌエットではリズムのスキーマが見事に裏切られる。(しかも実に心地良く)
おお!ここにもモーツァルトによる不安トラップが。

〇 転調の嵐 第4楽章 〇
この終楽章は、何者かに突き動かされる様な第1主題で始まるソナタ形式。
展開部がまた異常だ。
提示部の最後から(変ロ長調か?)展開部に入るときにニ短調に動いて、ここから目まぐるしく4度での転調を繰り返してヘ短調まで急降下。
かと思っていると、今度は俄然思い直したように反対方向に転調を始めて、ハ短調、ロ短調、(ホップ・ステップ)嬰ハ短調(ジャンプ)と数十小節の間に変遷を繰り返す。
しかも、限りなく美しいメロディでこれをやられるのだ。
もう、聞いている者の心は千々に乱れる。

このように、このシンフォニーには聞く者の不安を煽るトラップが満載なのだ。

また、このシンフォニーのオーケストラ編成には、ティンパニとトランペットが使われていない。
第1楽章の木管が繋ぎの音楽を奏する陰に隠れて、再現部が忍びの者のように現れるといった趣向と併せて、モーツァルトが「こっそり」演出する数々のトラップに強い音の楽器は省いたのではないだろうか。


【モーツァルト 交響曲第41番『ジュピター』】
交響曲第41番『ジュピター』
【モーツァルト 交響曲第39番】
交響曲第39番
【モーツァルト ピアノ協奏曲第9番『ジュノーム』】
ピアノ協奏曲第9番『ジュノーム』



<今日の一枚>
さて、そのような40番、誰で聴こうか。
やはり愛聴盤に手が伸びる。
ブルーノ・ワルターだ。
ジュピターでは輸入盤を紹介したので、ここでは国内盤の一つを紹介しよう。
40番以外に、アイネクライネナハトムジークなどの魅力的な曲も収録されていてお得感がある。
■モーツァルト 交響曲40番、他
 ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団

【収録曲】
1. 交響曲第40番ト短調K.550
2. アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調K.525
3. 歌劇「劇場支配人」序曲K.486
4. 歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」序曲K.588
5. 歌劇「フィガロの結婚」序曲K.492
6. 歌劇「魔笛」序曲K.620
7. フリーメイソンの葬送音楽K.477

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<推薦盤1>
ワルター盤はとってもロマンティックなモーツァルトだが、もっと冷静に抑制的にこの美しいメロディ(美しいメロディはやはり徹底的に美しく)楽しみたい方にはベーム+ウィーンフィル盤をお奨めする。
ジュピターで紹介したベルリン・フィルも良いが、ウィーンの香りがするこの盤は美しい!
■モーツァルト 交響曲第40番ト短調K.550 、他
 カール・ベーム指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

【収録曲】
1. 交響曲第40番ト短調K.550
2. 交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」
3. フリーメイソンのための葬送音楽ハ短調K.477(479a)

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<推薦盤2>
もう少し最近の録音では、ヴァント盤がいい!
すっきりと、喚かず、この曲の遷ろう心を端正に表現している。
録音も申し分ない。3大交響曲が収録されている。
■モーツァルト 交響曲第40番ト短調K.550 、他
 ギュンター・ヴァント指揮 北ドイツ放送交響楽団

【収録曲】
1. 交響曲 第39番 変ホ長調 K.543
2. 交響曲 第40番 ト短調 K.550
3. 交響曲 第41番 ハ長調 K.551 「ジュピター」
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2013.06.01 Sat l モーツァルト l コメント (0) トラックバック (1) l top
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