★ ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 ★
今シーズンというかソチ向けのフリー演技の曲として、浅田真央選手が選んだ曲がこれだ。
ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18。
ちなみにショートプログラム用はショパンのノクターン第2番らしい。
さて日本人にも圧倒的な人気を誇る名曲を今更ご紹介するのもおこがましいが、今日は昨晩のフィギュアスケートでの浅田真央選手の素晴らしい演技が脳裏に残っている内に、この名曲をちゃんと聴こうと思った。
〇 ピアノ協奏曲第2番 〇
ラフマニノフは1897年にサンクトペテルベルクで初演された交響曲第1番が大失敗に終わる。
初演の際に5人組の一人ツェーザリ・キュイは「主題の貧困さ、歪んだリズム、凝りすぎた病的な和声法、曲全体を覆う憂鬱さ」(新聞記事より)などと、かなり苛烈な言葉で酷評している。
また機会があれば、この交響曲についても私なりの感想を書かせて頂きたいと思うが、それ程酷いものではなく、むしろラフマニノフの音楽を良く語っている曲だと思っている。(もっとも改訂版の話だが)
とは言え、とにかくこの大失敗によってラフマニノフは徹底的に打ちのめされ、長い大スランプに陥ってしまう。
全く曲を書けない状態からラフマニノフを救ったのはモスクワの精神科医ニコライ・ダール博士だ。
このダール博士は確か自身もチェロを奏する音楽を愛する人だった筈で、ピアニストであり作曲家だったラフマニノフの苦悩を良く理解した。
彼の催眠療法は「あなたは素晴らしい協奏曲が書ける、、作曲はすらすら順調に進む、、書ける・・」という暗示を与えるもので、私には少し危ない感じもするが、とにもかくにもラフマニノフは自信喪失状態から脱し、ついに1901年にこの傑作を生み出すのだ。
〇 第1楽章 〇
この楽章はソナタ形式で、鐘の音を模したと言われる、ピアノ独奏による8小節の荘重な和音で始まる。
続いてピアノのアルペジオの導きで、オーケストラがダイナミックで有名な第1主題を奏する。
ああ、ラフマニノフだ。
鐘の音を模するというのはラフマニノフには何曲かに出てくる。
その後変ホ長調に転じて、ヴィオラの導きで大変叙情的な第2主題がピアノに現れる。
ここまでで完全に聞き手はラフマニノフの術中に落ちてしまう。
久しぶりにこの曲を聴いて、冒頭から最後のフィナーレまで、何と重厚なハーモニーと華麗なピアノが続くことだろうと改めて感嘆してしまった私である。
そして副主題のメランコリックな魅力は筆舌に尽くしがたいものがある。
〇 第2楽章 〇
緩除楽章はホ長調の3部形式。
短い序奏の後、ピアノの3連音に乗って、フルート&クラリネットが大変甘美で切ないメロディを詠う。
これをピアノ独奏が受けて、次第に高揚していく。
中間部ではファゴットとピアノが美しく語り合う。
そして、第3部は独奏ピアノのアルペッジョが効果的に曲を彩り、消えるようにこの楽章を閉じる。
〇 第3楽章 〇
最終楽章はオーケストラのリズミックな序奏に続いて、ピアノが活発に動き、スケルツォ的な主題が呈示される。
引き続いて、例の憂いに満ちた叙情的な主題がヴィオラとオーボエに現れる。
このメロディは恐らくラフマニノフが書いた、最も美しくロマンに溢れたメロディだろう。
これは映画音楽や、ドラマ・ドキュメントなどに使われて、ラフマニノフの代名詞的な旋律だ。
その後、アレグロに戻るとフガート風の展開もみせ、2つの主題を華麗に発展させた後に、ピアノの装飾に彩られながら第2主題を朗々と全奏で歌い上げ、最後はラフマニノフらしく4連打の和音で締め括られる。
<今日の一枚>
このくらいの名曲なると、名演と言えるCDはそれこそ星の数ほど存在し、もう好み以外の何物でもない。
いや、好みで名演奏をチョイスできるなんて、何とも幸せなことで、ここは是非リヒテルで行きたい。
極めてダイナミックでありながら、第2楽章などは心許なくなるほど切ない。
実はこの曲はコンサートホールで演奏を聴く場合、分厚いオーケストラの音に圧倒されてしまいピアノ独奏が聞き取れない、などということがよくあるのだ。
CD録音の場合は、そこをマイクで調整したりするのだが、リヒテルの場合そのような小細工は不必要だったのではあるまいか。
これはチャイコフスキーの1番とカップリングされている。
■チャイコフスキー&ラフマニノフ:ピアノ協奏曲、他
スヴャトスラフ・リヒテル(Pf.) スタニスラフ・ヴィスロツキ指揮 ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団, ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ウィーン交響楽団

<推薦盤1>
リヒテル盤は私の推薦盤だが、アシュケナージも挙げておきたい。
ラフマニノフを得意のレパートリーとしたアシュケナージは、ラフマニノフの憂いに満ちたメロディを最も効果的に演奏出来るピアニストだと感じている。
とてもロマンティックだ。
身長2mに達っする程の大男だったラフマニノフの大きな手(1オクターヴ半(14度)届いたという!)と違って手の小さいアシュケナージが、この難曲を弾きこなすのは人知れぬ工夫と鍛錬が必要だったことだろう。
これは全集になっているので、ラフマニノフのピアノコンチェルトの全てを手に入れられる。
しかも、アシュケナージがまだ若い頃で、エネルギーに満ちており、プレヴィンのサポートも素晴らしい盤だ。
■ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1~4番
ウラディミール・アシュケナージ(Pf.)アンドレ・プレヴィン指揮 ロンドン交響楽団

<参考盤>
この曲は珍しいことに作曲家自演のCDが存在する。
1929年39年の録音なので、さすがに音は悪い。
しかし、重厚でタッチの明瞭なラフマニノフ自身のピアノが聞ける貴重な一枚だ。
意外なほど剛直な演奏に驚くはずだ。
タクトはストコフスキーとオーマンディが振っている。
■ラフマニノフ:自作自演~ピアノ協奏曲第2番&第3番
セルゲイ・ラフマニノフ(Pf.)レオポルド・ストコフスキー、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団

今シーズンというかソチ向けのフリー演技の曲として、浅田真央選手が選んだ曲がこれだ。
ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18。
ちなみにショートプログラム用はショパンのノクターン第2番らしい。
さて日本人にも圧倒的な人気を誇る名曲を今更ご紹介するのもおこがましいが、今日は昨晩のフィギュアスケートでの浅田真央選手の素晴らしい演技が脳裏に残っている内に、この名曲をちゃんと聴こうと思った。
〇 ピアノ協奏曲第2番 〇
ラフマニノフは1897年にサンクトペテルベルクで初演された交響曲第1番が大失敗に終わる。
初演の際に5人組の一人ツェーザリ・キュイは「主題の貧困さ、歪んだリズム、凝りすぎた病的な和声法、曲全体を覆う憂鬱さ」(新聞記事より)などと、かなり苛烈な言葉で酷評している。
また機会があれば、この交響曲についても私なりの感想を書かせて頂きたいと思うが、それ程酷いものではなく、むしろラフマニノフの音楽を良く語っている曲だと思っている。(もっとも改訂版の話だが)
とは言え、とにかくこの大失敗によってラフマニノフは徹底的に打ちのめされ、長い大スランプに陥ってしまう。
全く曲を書けない状態からラフマニノフを救ったのはモスクワの精神科医ニコライ・ダール博士だ。
このダール博士は確か自身もチェロを奏する音楽を愛する人だった筈で、ピアニストであり作曲家だったラフマニノフの苦悩を良く理解した。
彼の催眠療法は「あなたは素晴らしい協奏曲が書ける、、作曲はすらすら順調に進む、、書ける・・」という暗示を与えるもので、私には少し危ない感じもするが、とにもかくにもラフマニノフは自信喪失状態から脱し、ついに1901年にこの傑作を生み出すのだ。
〇 第1楽章 〇
この楽章はソナタ形式で、鐘の音を模したと言われる、ピアノ独奏による8小節の荘重な和音で始まる。
続いてピアノのアルペジオの導きで、オーケストラがダイナミックで有名な第1主題を奏する。
ああ、ラフマニノフだ。
鐘の音を模するというのはラフマニノフには何曲かに出てくる。
その後変ホ長調に転じて、ヴィオラの導きで大変叙情的な第2主題がピアノに現れる。
ここまでで完全に聞き手はラフマニノフの術中に落ちてしまう。
久しぶりにこの曲を聴いて、冒頭から最後のフィナーレまで、何と重厚なハーモニーと華麗なピアノが続くことだろうと改めて感嘆してしまった私である。
そして副主題のメランコリックな魅力は筆舌に尽くしがたいものがある。
〇 第2楽章 〇
緩除楽章はホ長調の3部形式。
短い序奏の後、ピアノの3連音に乗って、フルート&クラリネットが大変甘美で切ないメロディを詠う。
これをピアノ独奏が受けて、次第に高揚していく。
中間部ではファゴットとピアノが美しく語り合う。
そして、第3部は独奏ピアノのアルペッジョが効果的に曲を彩り、消えるようにこの楽章を閉じる。
〇 第3楽章 〇
最終楽章はオーケストラのリズミックな序奏に続いて、ピアノが活発に動き、スケルツォ的な主題が呈示される。
引き続いて、例の憂いに満ちた叙情的な主題がヴィオラとオーボエに現れる。
このメロディは恐らくラフマニノフが書いた、最も美しくロマンに溢れたメロディだろう。
これは映画音楽や、ドラマ・ドキュメントなどに使われて、ラフマニノフの代名詞的な旋律だ。
その後、アレグロに戻るとフガート風の展開もみせ、2つの主題を華麗に発展させた後に、ピアノの装飾に彩られながら第2主題を朗々と全奏で歌い上げ、最後はラフマニノフらしく4連打の和音で締め括られる。
<今日の一枚>
このくらいの名曲なると、名演と言えるCDはそれこそ星の数ほど存在し、もう好み以外の何物でもない。
いや、好みで名演奏をチョイスできるなんて、何とも幸せなことで、ここは是非リヒテルで行きたい。
極めてダイナミックでありながら、第2楽章などは心許なくなるほど切ない。
実はこの曲はコンサートホールで演奏を聴く場合、分厚いオーケストラの音に圧倒されてしまいピアノ独奏が聞き取れない、などということがよくあるのだ。
CD録音の場合は、そこをマイクで調整したりするのだが、リヒテルの場合そのような小細工は不必要だったのではあるまいか。
これはチャイコフスキーの1番とカップリングされている。
■チャイコフスキー&ラフマニノフ:ピアノ協奏曲、他
スヴャトスラフ・リヒテル(Pf.) スタニスラフ・ヴィスロツキ指揮 ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団, ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ウィーン交響楽団

<推薦盤1>
リヒテル盤は私の推薦盤だが、アシュケナージも挙げておきたい。
ラフマニノフを得意のレパートリーとしたアシュケナージは、ラフマニノフの憂いに満ちたメロディを最も効果的に演奏出来るピアニストだと感じている。
とてもロマンティックだ。
身長2mに達っする程の大男だったラフマニノフの大きな手(1オクターヴ半(14度)届いたという!)と違って手の小さいアシュケナージが、この難曲を弾きこなすのは人知れぬ工夫と鍛錬が必要だったことだろう。
これは全集になっているので、ラフマニノフのピアノコンチェルトの全てを手に入れられる。
しかも、アシュケナージがまだ若い頃で、エネルギーに満ちており、プレヴィンのサポートも素晴らしい盤だ。
■ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1~4番
ウラディミール・アシュケナージ(Pf.)アンドレ・プレヴィン指揮 ロンドン交響楽団

<参考盤>
この曲は珍しいことに作曲家自演のCDが存在する。
1929年39年の録音なので、さすがに音は悪い。
しかし、重厚でタッチの明瞭なラフマニノフ自身のピアノが聞ける貴重な一枚だ。
意外なほど剛直な演奏に驚くはずだ。
タクトはストコフスキーとオーマンディが振っている。
■ラフマニノフ:自作自演~ピアノ協奏曲第2番&第3番
セルゲイ・ラフマニノフ(Pf.)レオポルド・ストコフスキー、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団

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