★ シベリウス ヴァイオリン協奏曲 ★
今日は北欧の代表的な作曲家シベリウスでいこう。
ジャン・シベリウス、このスウェーデン系フィンランド人作曲家はかなり多岐に渡った作品を残しているが、協奏曲はこの『ヴァイオリン協奏曲ニ短調 作品47』のみである。
日本でも良く演奏会にかけられる曲目には、交響詩『フィンランディア 作品26』や『交響曲第2番 ニ長調 作品43』などがあるが、このヴァイオリン協奏曲も古今の名曲として演奏機会が多い作品になる。
だが、この曲はパっと聞いたよりも遥かに難曲で、独奏ヴァイオリンにはかなりのテクニックが要求される。
また、この曲はシベリウスの後期作品に見られる様な、より室内楽的な簡潔な作風への過渡的な作品と言えると思うが、私はこのロマン派的な薫りのするコンチェルトは大変お気に入りの曲だ。

〇 印象的な第1楽章 〇
まず、この第1楽章がシベリウスの本領発揮の楽章になる。
形式的には、ソナタ形式風ではあるがカデンツァがソナタ形式で言う展開部辺りに持ってこられていたり、再現部辺りで主題が展開されたりと、かなり自由に書かれている。
シベリウスのオリジナリティが示されながらも、曲想は大変ロマンティックだと私は思う。
この第1楽章、冒頭が極めて印象的だ。
ミュートしたヴァイオリンの細かい旋律に乗って、いきなり独奏ヴァイオリンが美しく、儚いメロディを奏する。
この弦のささやくような伴奏は、凍てつく北欧の朝が感じられるし、独奏ヴァイオリンの美音には白鳥の優雅な飛翔をイメージする。
シベリウス自身は「鷲」を想起させるような事を言ったように聞いたが、私にはもっと柔らかい「白鳥」のイメージだ。
この楽章の後半コーダの辺りの独奏ヴァイオリンのオクターヴのパッセージはすごい。

〇 難曲の第3楽章 〇
第2楽章は木管から入るAdagio di molto。
独奏ヴァイオリンも落ち着いた低音から、朗々と主題を歌い上げる。
そして、第3楽章へとなだれ込んで行くのだが、付点リズムの低弦の音楽に乗って、独奏ヴァイオリンがリズミカルなメロディを奏でる。
3度の重音で昇るパッセージや、忙しなく上下する左手の動きはかなりのテクニックを要する。
この楽章は全体にそうなのだが、情熱的な舞曲風の主題でも重音での難しいパッセージが目立つ。
一気に駆け抜ける様に終曲は結ばれる。

〇 ヴィルトゥオーソとシンフォニック 〇
この曲の特徴を一言で表現するなら、ヴィルトゥオーソとシンフォニックの絶妙なバランスだ。
自身ヴァイオリンニストを目指しただけある独奏ヴァイオリンに求められる華麗で高度なテクニックと、シベリウスならではのスケールの大きな交響的な響きの調和が、北欧の香りたっぷりな憂いを含んだ美しいメロディの上で為されている傑作だと言えるだろう。


<今日の1枚>
さて、今日はこの曲やプロコフィエフの2番を世界に浸透させた功労者とも言えるハイフェッツで聞きたい。
正に圧倒的なテクニックでシベリウスを弾き切っている。
トスカニーニが最高のヴァイオリニストと絶賛を惜しまかったハイフェッツ。
その技術もさることながら、私はこの曲では特に弱音や高音での美しさが冴えわたっていると思う。
そう、この曲は「凍てつく」冴えがどうしても欲しいのだ。
■シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番 グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲

 ヤッシャ・ハイフェッツ(Vn)
 シベリウス:ワルター・ヘンドル指揮 シカゴ交響楽団
 プロコフィエフ: 同指揮 RCAビクター交響楽団
 グラズノフ:シャルル・ミンシュ指揮 ボストン交響楽団

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<推薦盤1>
ハイフェッツの盤は私が推すNo.1だが、この曲はチョン・キョンファもいい。
まだ、10代のキョンファのヴァイオリンが清々しい。
ひたむきな天才少女をプレヴィンが支える。
■チャイコフスキー&シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
 チョン・キョンファ(Vn) アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団

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<推薦盤2>
キョンファとは違い、大人の気品と余裕を感じさせるムターも良い。
偶然だが、こちらもオケを率いるのはプレヴィンだ。
■シベリウス/ヴァイオリン協奏曲ニ短調 他(セレナード、ユーモレスク)
  アンネ=ゾフィー・ムター(Vn.) アンドレ・プレヴィン指揮 ドレスデン国立管弦楽団

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2013.07.20 Sat l シベリウス l コメント (0) トラックバック (0) l top