★ ラヴェル 『ボレロ』 ★
この曲はバレリーナ(女優)であるイダ・リヴォヴナ・ルビンシュタインの依頼によって、ラヴェルが書いたバレエ音楽だ。
イダ・リヴォヴナ・ルビンシュタインという人は、ユダヤ系のロシア人で、成人するまでは正統な技術を学ばなかったという異色のバレリーナだ。
彼女は豊富な資金力に物を言わせて、ラヴェルには「ボレロ」、ストラヴィンスキーには「妖精の接吻」などのバレエ音楽の創作を依頼している。
機械的な一定のリズム、スペイン舞曲のボレロ、これには機械技師であった父親とバスク人だった母親の影響をラヴェル自身が認めている。
〇 常識はずれの音楽 〇
さてこの曲は、たった二つの主題を約15分間延々と繰り返し、最後に崩れ落ちる・・・。
その間、展開もしない、転調もしない、全く同じテンポで、あるのは一つのクレッシェンド・・。
最初聞いた時は(中学生の頃)、何だ?これは?しかし、何とエキゾチックでストイックな曲なんだろう、と思ったものだ。
〇 じっと我慢のスネアドラム 〇
曲はスネアドラムの微かな音から始まる。
「チャンチャチャチャ、チャンチャチャチャ、チャチャ」「チャンチャチャチャ、チャンチャチャチャ、チャチャチャチャチャチャ」という3連符を含む一定のリズムを、ず~っとず~っと刻み続ける。
とてもマゾヒスティックな小太鼓さんだ。
そして、フルートにハ長調の主題が現れて、二つの主題がAABB(4回)A(B) のようなパターンで、各楽器を渡り歩く。
楽器も様々だ。
通常の管楽器に加えて、サキソフォン、オーボエ・ダモーレ、コーラングレ、コントラファゴット、ピッコロ・トランペット、チェレスタ、ハープ、スネアドラム、バスドラム、などなど、そして弦楽器。
まだあったかも知れない。
〇 注目のポイント 〇
私の注目ポイントは、何と言っても最後の転調。
我慢に我慢を重ねて、最後の最後になって、漸くハ長調からホ長調に転調する。
この寸前に、ちょっと妙な快感がある。
「ここで転調!」という瞬間を待つ音楽の旅人は、その時にオアシスに出会ったような充足感を味わう。
そして、ラストの崩壊部分。
我慢して我慢して、じっと一定のリズムを刻んできたオーケストラは、最後に一気に崩れる。
艱難辛苦を乗り越えて積み上げてきた積み木が、最後の一積みで崩れ落ちるように・・。
〇 バレエ 〇
この曲は本来バレエ音楽で、その舞台では、酒場(セビリアということになっていたと思う)の一隅で一人のダンサーが秘かにレッスンをしていると、段々興が乗ってきて身振り手振りが大きくなり、最後には無視していた酒場のお客さんまで一緒に踊り出し、ラストではやっぱり舞台に崩れ落ちる、というものだ。
〇 もう一つの聴き所 〇
実は中間部にも、聴き所がある。
ホルンとピッコロ(2)、チェレスタが入る部分だが、ここは禁断の並行音が進行する。
ハ長調のホルンを基音として、ホ長調とト長調のピッコロ、チェレスタもハ長調で倍音関係で重ねられている。
チェレスタは第2、第4倍音の関係になる。
この禁断の手法も、さすがはオーケストラの魔術師と言われたラヴェル、楽器を選ぶことで、違和感というよりも音場の広がりのような効果を出している。
<今日の一枚>
今日は昔から名演の誉れ高いクリュイタンスでいこう。
均整のとれたクリュイタンスのフランス音楽には、インテリジェンスと秘めた情熱があるように思う。
■ラヴェル:ボレロ、他
アンドレ・クリュイタンス指揮 パリ音楽院管弦楽団

<推薦盤1>
この曲は、本当に名演といえる録音が沢山存在して、もう好み以外の何物でもなくなってくる。
それでも、モントゥーは良いと思う。
あまりに機械的に演奏すると面白くないラヴェルを、実に有機的な音楽にしていると思う。
スネアドラムには命の鼓動を感じるし、楽器間の受け渡しが魅力的だ。
■ラヴェル:マ・メール・ロワ 他
ピエール・モントゥー指揮 ロンドン交響楽団

この曲はバレリーナ(女優)であるイダ・リヴォヴナ・ルビンシュタインの依頼によって、ラヴェルが書いたバレエ音楽だ。
イダ・リヴォヴナ・ルビンシュタインという人は、ユダヤ系のロシア人で、成人するまでは正統な技術を学ばなかったという異色のバレリーナだ。
彼女は豊富な資金力に物を言わせて、ラヴェルには「ボレロ」、ストラヴィンスキーには「妖精の接吻」などのバレエ音楽の創作を依頼している。
機械的な一定のリズム、スペイン舞曲のボレロ、これには機械技師であった父親とバスク人だった母親の影響をラヴェル自身が認めている。
〇 常識はずれの音楽 〇
さてこの曲は、たった二つの主題を約15分間延々と繰り返し、最後に崩れ落ちる・・・。
その間、展開もしない、転調もしない、全く同じテンポで、あるのは一つのクレッシェンド・・。
最初聞いた時は(中学生の頃)、何だ?これは?しかし、何とエキゾチックでストイックな曲なんだろう、と思ったものだ。
〇 じっと我慢のスネアドラム 〇
曲はスネアドラムの微かな音から始まる。
「チャンチャチャチャ、チャンチャチャチャ、チャチャ」「チャンチャチャチャ、チャンチャチャチャ、チャチャチャチャチャチャ」という3連符を含む一定のリズムを、ず~っとず~っと刻み続ける。
とてもマゾヒスティックな小太鼓さんだ。
そして、フルートにハ長調の主題が現れて、二つの主題がAABB(4回)A(B) のようなパターンで、各楽器を渡り歩く。
楽器も様々だ。
通常の管楽器に加えて、サキソフォン、オーボエ・ダモーレ、コーラングレ、コントラファゴット、ピッコロ・トランペット、チェレスタ、ハープ、スネアドラム、バスドラム、などなど、そして弦楽器。
まだあったかも知れない。
〇 注目のポイント 〇
私の注目ポイントは、何と言っても最後の転調。
我慢に我慢を重ねて、最後の最後になって、漸くハ長調からホ長調に転調する。
この寸前に、ちょっと妙な快感がある。
「ここで転調!」という瞬間を待つ音楽の旅人は、その時にオアシスに出会ったような充足感を味わう。
そして、ラストの崩壊部分。
我慢して我慢して、じっと一定のリズムを刻んできたオーケストラは、最後に一気に崩れる。
艱難辛苦を乗り越えて積み上げてきた積み木が、最後の一積みで崩れ落ちるように・・。
〇 バレエ 〇
この曲は本来バレエ音楽で、その舞台では、酒場(セビリアということになっていたと思う)の一隅で一人のダンサーが秘かにレッスンをしていると、段々興が乗ってきて身振り手振りが大きくなり、最後には無視していた酒場のお客さんまで一緒に踊り出し、ラストではやっぱり舞台に崩れ落ちる、というものだ。
〇 もう一つの聴き所 〇
実は中間部にも、聴き所がある。
ホルンとピッコロ(2)、チェレスタが入る部分だが、ここは禁断の並行音が進行する。
ハ長調のホルンを基音として、ホ長調とト長調のピッコロ、チェレスタもハ長調で倍音関係で重ねられている。
チェレスタは第2、第4倍音の関係になる。
この禁断の手法も、さすがはオーケストラの魔術師と言われたラヴェル、楽器を選ぶことで、違和感というよりも音場の広がりのような効果を出している。
<今日の一枚>
今日は昔から名演の誉れ高いクリュイタンスでいこう。
均整のとれたクリュイタンスのフランス音楽には、インテリジェンスと秘めた情熱があるように思う。
■ラヴェル:ボレロ、他
アンドレ・クリュイタンス指揮 パリ音楽院管弦楽団

<推薦盤1>
この曲は、本当に名演といえる録音が沢山存在して、もう好み以外の何物でもなくなってくる。
それでも、モントゥーは良いと思う。
あまりに機械的に演奏すると面白くないラヴェルを、実に有機的な音楽にしていると思う。
スネアドラムには命の鼓動を感じるし、楽器間の受け渡しが魅力的だ。
■ラヴェル:マ・メール・ロワ 他
ピエール・モントゥー指揮 ロンドン交響楽団

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