★ チャイコフスキー 『四季』 作品37b ★

今日楽しんだのは、先日も登場頂いた「ギャラリー薔薇ねこ館」さんのご提案で、チャイコフスキーのピアノ曲『四季』だ。
漸く暖かくなって春を感じるこの頃だが、太陽の光が生気を帯び、私の部屋から見える何と言うことの無い風景すら、ルノワールの描いたセーヌ河の河畔風景に見える(う~ん、かなり無理があるか・・)から不思議だ。
そんな頃に聴くにはうってつけの季節感溢れる曲集だ。
『ギャラリー薔薇ねこ館』

チャイコフスキーと言うと、真っ先に思い浮かぶのがバレエ音楽(「白鳥の湖」「くるみ割り人形」等)やシンフォニー(特に4番~6番)そして、ピアノとヴァイオリンのコンチェルトなどかも知れない。
だが、ピアノの為の小品も結構な数を遺している。
折に触れて作曲されたピアノ曲を纏めて「6つの小品」というように構成されたものがいくつかあったりするが、現在最も親しまれているチャイコフスキーのピアノ独奏曲はこの『四季』だろう。

〇 「Nouvelist」の企画 〇
1875年にペテルブルクで創刊された音楽雑誌「Nouvelist」で、1月~12月の各月にマッチしたロシアの詩をチョイスして、その詩に合わせた曲を連載するという企画があり、チャイコフスキーに作曲が依頼された。
チャイコフスキーは1875年の12月から1876年の11月にかけて12のピアノ曲を書き上げ、それは後日『四季』として出版されることになった。

〇 『四季』 〇
曲は次の12曲から成る。
全体としては、各曲3部形式で書かれたシンプルな構成で、1月から2月が下属調、3月から4月が平行調、6月から7月及び8月から9月が下属調平行調というように曲間の調性連携も全体の統一感を考えて整えられているのだと感じる。
(春夏秋冬で捉えるのが正しいのかも知れない)

1.1月<炉端で>
(イ長調、3/4拍子)
1月のプーシキンの詩は、こんな感じだった。
穏やかな幸せの一隅
夜は黄昏に包まれたしまった
暖炉の火が少し弱まり
蝋燭の火は燃え尽きてしまった
(Alexander Pushkin, 1799-1837)


ロシアの冬は雪に閉ざされて、家の中で暖をとるひと時が至福の時間でもあるのだろう。
何とはなしに物思いにふける風情の音楽かと思うが、穏やかに始まる曲集の劈頭、単調に陥らない温もりが必要だ。
3部形式の中間部では、転調を繰り返しながらの分散和音で、暖炉の炎のゆらめきとそれが浮かび上がらせる室内の情景を描いているように思える。

そして最後の和音4連打のところで、「蝋燭は燃え尽きた」は表現されていると思うので、ここは余韻を持って「フッ」と消える炎を表現する演奏が好きだ。

2.2月<謝肉祭>
(ニ長調、2/4拍子)
謝肉祭の喧騒と、活き活きとした人々の様子が描かれている。

3.3月<ひばりの歌>
(ト短調、2/4拍子)
当時のロシア暦は陰暦だったと思うので、4月頃のひばりの歌だ。
とても美しいメロディで歌われるフランス的なひばりの歌だと感じる。
しかもト短調だ。

4.4月<松雪草>
(変ロ長調、6/8拍子)
松雪草は雪解けに咲く花だそうだが、チャイコフスキーは春の訪れをシューベルト的な息の長いメロディでメンデルスゾーンのように歌わせている。
それでも私は全体としてはサティっぽい音を感じる。

5.5月<白夜>
(ニ長調、8/9拍子)
安らぎに満ちた白夜が神秘的な旋律で歌われる。
中間部は2/4拍子で少し浮き浮きと初夏らしさが表現されている。

6.6月<舟歌>
(ト短調、4/4拍子)
この曲集の中で、11月のトロイカと並んで単独でもよく演奏される有名な曲だ。
さすがは稀代のメロディメーカーであるチャイコフスキー、大変叙情的なメロディが印象的だ。
舟歌というと、ショパンやフォーレが浮かんでくるが、チャイコフスキーのそれは最もメランコリックで、私には夜のバルカロールだ。

7.7月<刈り入れの歌>
(変ホ長調、4/4拍子)
草刈人の歌とも言われるが、真夏の草刈風景だろう。
7、8月は風景というよりも、喜びに満ちて働く「人」に視線が当たっているように思う。
力感溢れる主部に始まって、舞曲風の中間部にしても力強く働く人々が浮かんでくる。

8.8月<取り入れ>
(ロ短調、6/8拍子)
秋が訪れて、忙しい収穫の歌だ。
何故かロ短調だ、些か取り入れに焦っている感じだろうか。
中間部では収穫時の忙しさの中の束の間の休息だろう、ゆっくりとお茶でもしている風情。

9.9月<狩り>
(ト長調、4/4拍子)
狩りは、大変勇壮で胸を張った狩人が歌われているようだ。
トランペットやホルンといった金管を思わせる響きが、狩りの緊張と獲物へ向かう勇気の鼓舞を良く現している。

10.10月<秋の歌>
(ニ短調、4/4拍子)
センチメンタリズムの王様と言ってもいいチャイコフスキー。
この秋の歌は12曲中最も、そうしたチャイコフスキーの特性が表に出た曲だろう。
最初の一音から美しい、いや美しくたっぷりと弾かなくてはならない、出だしが重要な曲だ。
中間部では、やや立ち直るものの、憂鬱な足取りは消えはしない。

11.11月<トロイカ>
(ホ長調、4/4拍子)
このトロイカも舟歌同様、単独で演奏される機会の多い曲だ。
曲調的には10月までとは一線を画している感があるように思う。

この曲はあのラフマニノフが愛したことでつとに有名だ。
ラフマニノフは10代の頃に音楽教師であるニコライ・ズヴェーレフの自宅に住み込んでいたそうだが、そこをチャイコフスキーが訪れる機会があったようだ。
ズヴェーレフの誕生パーティの際にチャイコフスキーも招かれ、その席上でラフマニノフがこのトロイカを演奏したそうだ。
そうした関係でチャイコフスキーに大変可愛がられた才能溢れる若者は、以来このトロイカを愛奏したという。

1920年のラフマニノフの録音を聴いたことがあるが、ノイズの先から聞こえるそれは、表情をたっぷりつけたとてもロマンティックな演奏だった。
そしていかにもヴィルトゥオーソらしい卓越した演奏だった。(確かに上手い!)

12.12月<クリスマス>
(変イ長調、3/4拍子)
これも美しくメランコリックなワルツだ。
来る年への希望をこめて、少女たちがクリスマスを祝う軽やかなワルツなのだろう。
旋律線の移り変わりがとても印象的なワルツだ。


〇 6人組にはならなかったチャイコフスキー 〇
この『四季』は上述のように、ロシアの自然溢れる情景や農民の暮らしに愛情のこもった視線を当てたピアノ曲だ。
この曲集を聴くといつも思うのは、チャイコフスキーもやっぱりロシアという土地を、そして人を愛していたんだなぁということだ。
チャイコフスキーもロシアの民族音楽から曲調を発想したり、思い切りメランコリックなロシアの香りたっぷりな音楽を書いている。
例の「悲愴」の第2楽章での5拍子などの変拍子も民族音楽に由来するものだ。

だが、当時のバラキレフを中心に活動した所謂「ロシア5人組」とは、やはり本質的に違う音楽だと感じる。
この『四季』でも、チャイコフスキーが志向した音楽は、ロシアの香りを身に纏ったフランス的な音に思えてならない。
そして、私はそんなチャイコフスキーが大好きだ。


<今日の一枚>
以前はよくミハイル・プレトニョフのCDを聴いていたのだが、今日はトロップでいきたい。
ピアノ教師としても有名なウラジーミル・トロップはロシアのピアニストでラフマニノフの研究家でもある。
2010年のショパンコンクールで優勝したユリアンナ・アヴデーエワさんの先生でもある。
そして、このチャイコフスキーの四季は得意のレパートリーだ。
大きなストロークでピアノを鳴らしきるロシアのピアニストの中では、珍しく繊細なピアニズムを有したピアニストといっていいだろう。
この「四季」でも、ロシアの色はちゃんと漂わせながらも繊細なタッチで、そっと囁く様なパッセージを聞かせてくれるのだが、これが随所で嵌っている。

■チャイコフスキー:四季/ラフマニノフ:幻想的小品集 [Blu-spec CD]
 ウラジーミル・トロップ(Pf.)

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2014.03.23 Sun l チャイコフスキー l コメント (2) トラックバック (0) l top
★ チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 ニ長調作品35 ★

今日は、素敵な薔薇と手作りインテリアなどのコンテンツ、そして可愛いジル猫ちゃんがご案内役の「ギャラリー薔薇ねこ館」さんのご提案で、チャイコフスキーの唯一のヴァイオリンコンチェルトであるニ長調作品35を聴こう。
『ギャラリー薔薇ねこ館』

このあまりにも有名なコンチェルトは、私にとって小学生の頃の定番コンチェルトの一つだった。
所謂3大ヴァイオリンコンチェルトや4大ヴァイオリンコンチェルトと言う以上に、あまりにも美しくメランコリックで盛り上げ方の壷を知り尽くしたチャイコフスキーの手練にすっかりやられてしまったのである。
実は同時期にピアノコンチェルトの1番にも嵌り、毎日チャイコフスキーに浸っていた頃があったことを思い出す。

〇 3大(OR4大)ヴァイオリンコンチェルト 〇
ちなみにこの3大あるいは4大コンチェルトについては、

①ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス
②ベートーヴェン、メンデルスゾーン、チャイコフスキー


の2通りの説があった。
そして、
・ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス、チャイコフスキー
で4大コンチェルトとする説は、ほぼ定説になっているようだ。

これに、シベリウスやドヴォルザークなどを加えるべきといった色々な議論があるが、キリが無いのでここは4大に止めておこう。

また、4大コンチェルトの内ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキーはいずれもニ長調で書かれている。
ヴァイオリンの場合、調弦の関係上倍音の響きが豊かになるこのニ長調が好んで使われる。
パガニーニの第1番もニ長調だ。(パガニーニのスコルダトゥーラを用いた演奏が物議を醸したコンチェルトだ)
他にもハチャトゥリアン、シベリウスなどはニ短調で書いている。

〇 二人の女性 〇
この曲が作曲されたのは1878年で、その前年にはチャイコフスキーにとって大変重要な女性二人との出来事があった。
一人はモスクワ音楽院での教え子であるアントニーナ・ミリコーヴァという女性で、1877年5月にミリコーヴァから愛を告白され同年7月にスピード婚を遂げている。
しかし、この結婚は僅か20日程で破局を迎える。(チャイコフスキーが同性愛者であったことは現在では周知の事実となっている。)
もともと本意ではなかったであろうこの結婚生活はチャイコフスキーを精神的に痛めつけ、モスクワ河での自殺未遂へと進んでしまう。

もう一人、運命的な女性とのプラトニックな愛情と、経済的な援助が始まったのもこの頃。
その女性は大富豪のフォン・メック夫人だ。
未亡人だったメック夫人は、ドビュッシーも音楽教師として出入りしていたことがあり、音楽家への理解が深いお金持ちだった。
そのメック夫人がチャイコフスキーの申し出を受け入れ、1877年から彼を経済的に援助するようになった。
この二人は生涯逢うことは無く、プラトニックな関係のままで、その後13年に渡ってチャイコフスキーは年間6000ルーブルもの年金を受け取ることになる。
チャイコフスキーのモスクワ音楽院での月給が50ルーブルほどだったというデータもあるので、この額は相当なものだったに違いない。(詳細は検証していません)

そんな環境の中でも、チャイコフスキーは精力的に代表作を完成させていったのがこの時期でもある。
1876年には交響曲第4番(弊ブログでも御紹介した)、1877年には歌劇『エフゲニ・オネーギン』、バレエ音楽『白鳥の湖』などを仕上げている。
離婚後暫くの間は創作活動もお休み気味になるのは、やはり立ち直るのに時間を要したということなのかもしれない。

〇 献呈者から拒否 〇
私が小学生だった頃の一時期学校から下校すると、家で必ずと言って良いほど聞いていたチャイコフスキーの二つのコンチェルト(ヴァイオリンコンチェルトとピアノコンチェルト第1番)は、どちらも献呈者からは拒否されてしまう。
ピアノコンチェルトはニコライ・ルビンシテインに、ヴァイオリンコンチェルトはレオポルト・アウアーによって演奏不可能とのレッテルを貼られ、ヴァイオリンの方はロシア人のヴァイオリニストで音楽教師であるアドルフ・ブロツキーに献呈されている。
ブロツキーによる初演は失敗に終わるが、彼は懸命に粘り強く演奏活動を続け、やがてアウアーもこの曲を認めるようになり、長い歴史を誇る西洋音楽の中で4大ヴァイオリンコンチェルトとまで言われるようになった訳である。
ブロツキーは正に功労者だ。

〇 親しみ易い 典型的な構成 〇
メンデルスゾーンのホ短調のコンチェルトとカップリングされることの多かった、日本でも非常に人気の高いこのコンチェルトは次の3楽章から成っている。

1.第1楽章(アレグロ・モデラート-モデラート・アッサイ)
ニ長調、ソナタ形式で書かれたこの楽章、まずアレグロ・モデラートの序奏部がとても印象的だ。
第1ヴァイオリンによる導入で管とのやりとりが上手い。
そして、独奏ヴァイオリンが早くもカデンツァ風に入ってきて、主部に移行する。
この序奏部、シンプルなのだが天才メロディメーカーらしいチャイコフスキーの掴みの上手さが既に現れている。
第1主題、独奏ヴァイオリンによる大変叙情的なメロディが奏でられる。
序奏部もそうだが、第1主題提示後ここで一盛り上がりを作って、第2主題も独奏ヴァイオリンに現れる。
こちらは、とても流麗なメロディで、よりメランコリックに聴こえる。
展開部では重音も駆使し、オーケストラも金管が色彩感を増す。
チャイコフスキー自身の作曲によるカデンツァの後、再現部では二つの主題を中心にダイナミックで推進力のある音楽がコーダまで突き進む。
第1楽章だけで、演奏時間は約20分ほどで全体の半分くらいを占める。

2.第2楽章(カンツォネッタ、アンダンテ)
こちらはト短調の3部形式か。
管楽器オンリーの導入に続いて、独奏ヴァイオリンがとてもとても悲しげなメロディを奏でる。
おお!チャイコフスキーだ。
この楽章での独奏ヴァイオリンと管楽器の遣り取りはとても美しい!
独奏者のロマンティシズムが発揮される楽章になる。

3.第3楽章(フィナーレ、アレグロ・ヴィヴァーチッシモ)
主調に戻ってロンド形式。
第2楽章からは、切れ目無く演奏される。
静かな第2楽章からいきなりオーケストラによる躍動的な序奏に入って、それを独奏ヴァイオリンが受けるのだが、ここでのピチカートの使い方もメリハリが利いていて上手い!
ロシア民謡風のロンド主題とそれより少しスローな中間主題が繰り返されながら、次第に激しく盛り上がっていって、最後は独奏ヴァイオリンとオーケストラが絶妙に絡み合って曲を閉じる。



<今日の一枚>
今日は私が子供の頃から愛聴してきたフランチェスカッティで聴こう。
このフランスのヴァイオリニストの美音は、他に類を見ないもので、とてもロマンティックでお酒に合う音色だ。
カップリングのメンデルスゾーンは私の父が最も愛した演奏だったこともあって思い出多い盤になっている。
■メンデルスゾーン & チャイコフスキー : ヴァイオリン協奏曲
 ジノ・フランチェスカッテッィ(Vn.)
 トマス・シッパーズ指揮ニューヨークフィルハーモニック
 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団

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<推薦盤1>
この曲の名盤は数え切れないほど挙げたいところだ。
正直に言って、これはいい!と思った盤は2桁あるのだが、その中でもチョン・キョンファの演奏は素晴らしいと思う。
とても情熱的で心揺さぶる演奏だ。
彼女はチャイコフスキーを得意としていることがうなずける出来だ。
シベリウスとカップリングされた、衝撃のデビュー盤も良いが、ここはメンデルスゾーンとカップリングされたデュトワのサポート盤を挙げておく。
■チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
 チョン・キョンファ(Vn.)
 シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団

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<推薦盤2>
昔から名盤の誉れ高いオイストラッフも勿論一聴の価値があるが、それより少し新しいところでデュメイを挙げたい。
卓越したテクニックと、並外れた表現力、それをベースに正に自由奔放に歌っている。
■チャイコフスキー&メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
 オーギュスタン・デュメイ(Vn.)
 エミール・チャカロフ指揮ロンドン交響楽団

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2014.01.19 Sun l チャイコフスキー l コメント (10) トラックバック (0) l top
★ チャイコフスキー 交響曲第4番 ★
チャイコフスキーを続けよう。
今日は 交響曲第4番ヘ短調作品36 だ。
第5番より遡ること10年余で、チャイコフスキー未だ36歳頃の青年期の作品だ。

〇 メック夫人 〇
チャイコフスキーには大切なパトロンが居たことは有名だが、この交響曲を書いた時期からチャイコフスキーはフォン・メック夫人の多額の援助を受けて、何不自由することなく作品を生み出すことに没頭できた。
この交響曲は、そのメック夫人に献呈されている。

〇 第1楽章はホルン&ファゴット&ペット 〇
この曲も冒頭に印象的な主題が提示される。
ファゴットとホルンそれからトランペットによるファンファーレ風のテーマで、これはこの曲全体を覆っている。
9/8拍子のまるで切羽詰まったかのような第1主題が表れて、続いて管によって気怠い様な3/4拍子の第2主題が奏される。
この辺の3拍子系のリズムに乗ったメランコリックなテーマはさすがチャイコフスキー! というところだ。
一発で心に入り込んでくるメロディーとドラマティックなオーケストレーション、正に面目躍如。

〇 第2楽章はオーボエ 〇
チャイコフスキーのオーボエ使いはまことに巧みだ。
この楽章の冒頭は、オーボエ奏者の見せどころ。
切ないメロディーを、どれくらい哀切の情を持って演奏できるか、チャイコフスキーの中でも昔から大好きなフレーズだ。
しかし、何と素敵なメロディーメーカーなのだろう、チャイコフスキーは。

〇 第3楽章はピチカート 〇
このスケルツォ楽章は変わっている。
弦楽器は徹頭徹尾ピチカートで演奏する。
何かに追われるような、忙しない弦の動きから突然管楽器が曲調を変える。
木管による牧歌的なメロディが出るところは、まるで曇り空から唐突に太陽が顔を出したかのようだ。
金管はまた別の動きをして、弦のピチカートに戻り静かにこの楽章を終わる。
う~ん、実にユニークだ。

〇 第4楽章は爆発だ 〇
岡本太郎氏ではないが、第4楽章は爆発だ。
大変ユニークな楽章の後は、いきなりオーケストラが爆発する。
民謡風の第2主題を交えた後、晴やかな第3主題が奏される。
これらが変奏されながら、徐々に盛り上がっていくのだ。

このように、このシンフォニーはとてもユニークで聴きどころが満載だ。
第5番もそうだが、この曲もライブで聞くと特に興奮すること請け合いだ。


【チャイコフスキー 交響曲第5番】
交響曲第5番
【チャイコフスキー 『白鳥の湖』】
『白鳥の湖』



<今日の一枚>
これはちょっと珍しい盤だ。
バレンボイムがニューヨーク・フィルを振ったもので、もしかすると特異な演奏かもしれないなぁと危惧しつつ購入したのだが、いえいえなかなか正統派。
アメリカのオケを使って、思い切りメランコリックなチャイコフスキーを、尚且つ意外と爽やかに聞かせてくれる。
かなり良いと思うので愛聴しているものだ。
■チャイコフスキー 交響曲第4番ヘ短調作品36
 ダニエル・バレンボイム指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1971年録音

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<推薦盤1>
正統派の推奨盤もご紹介しよう。
何と言ってもドラマティック=カラヤンだ。(勿論、そんな単純なものではないが。)
カラヤン+ベルリン・フィルには66年録音盤もあったが、私はこちらの71年録音盤をとる。
音がいいのだ、ダイナミックレンジも広い感がある。
カラヤン渾身の一枚。 
■ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団//1971録音//

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このCDにはSACD盤もあって、こちらの音の良さは驚異的です。
SACDを聞ける環境を持っている方は、是非こちらをどうぞ!



<推薦盤2>
もう一枚推薦するとしたら、【サー・ゲオルグ・ショルティ+シカゴ交響楽団】を挙げたい。
バレンボイムとはまた違う、もっとパワフルでアーバンなチャイコフスキーを聞ける。

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2013.05.10 Fri l チャイコフスキー l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ チャイコフスキー 交響曲第5番 ★
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、ロシアが生んだ世界的大作曲家だ。
日本でもベートーヴェン同様、恐らく知らない人はいないと言っていいだろう。
ロシアの民族音楽要素と西洋音楽の幸せな合体とも言える、ロマン派を代表する作曲家でもある。
白鳥の湖等のバレエ音楽が特に世界中で有名で愛されているが、今日は交響曲で行こう。

〇 交響曲第5番ホ短調作品64 〇
チャイコフスキーは番号付き交響曲を全部で6曲残している。
最も有名なのは第6番『悲愴』だろう。
しかし、悲愴はあまりに痛切な悲しみを誘発する音楽で、心して聞かなければならない音楽だと思っているので、今日は華麗な第5番。

〇 運命の動機 〇
この曲の第1楽章冒頭のクラリネットが奏する、哀切の籠ったメロディは「運命の動機」と言われている。
この動機が、このシンフォニー全体を支配している。
だから、この冒頭のクラリネットは聞きどころだ。
この長~い序奏の後に、民族色の強い第1主題が管によって奏でられる。
この後が、正にチャイコフスキーの真骨頂、ドラマティックなオーケストレーションでどんどん盛り上がっていく。
旋律の優美さとドラマティックなオーケストレーションでは、私はチャイコフスキーとプッチーニが2代巨頭だと思っている。
う~ん、チャイコフスキーだって感じ。

〇 第2楽章の美しいホルン 〇
第2楽章は3部形式だが、ホルンによる長閑な主題が印象的だ。
その雰囲気をまるで打ち消すかのように「運命の動機」が使われている。
ひと時の平穏な生活にも、必然的に運命はのしかかってくる、というような語りに聞こえる。

〇 第3楽章はワルツ 〇
このシンフォニーの大きな特徴として挙げられるのが、通常置かれているスケルツォ楽章が無く、代わりにメランコリックなワルツが置かれていることだ。
いかにもチャイコフスキーらしい美しくも儚さを感じるワルツ。
この楽章の後半でも、「運命の動機」が顔を見せる。

〇 壮大でエネルギッシュな終曲 〇
第1楽章で提示されたホ短調の「運命の動機」が、第4楽章冒頭では長調に転調されて現れる。
辛く暗い「運命」を克服した人だけが、明るく力強い「運命」に到達する、と言っているかのように感じる。
終曲はそのように、自信に満ちたエネルギッシュな展開を繰り広げる。
壮大な音楽だ。


【チャイコフスキー 交響曲第4番】
交響曲第4番
【チャイコフスキー 『白鳥の湖』】
『白鳥の湖』



<今日の一枚>
バーンスタインと彼の手兵ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏だ。
バーンスタインは作曲家としても一流であるからか、とかく主観的だとか大袈裟だとか言われるが、ことチャイコフスキーのような濃いめの音楽には良い嵌り方をするように思う。
お買い得な廉価版でもあったので購入した盤だ。結構気に入っている。 
■チャイコフスキー 交響曲第5番ホ短調作品64
レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック

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<お奨めのCD>
この曲にはカラヤンがいい!
こういうドラマティックな曲にかけてはカラヤンの右に出る者はいないと言ってもいい。



もう一枚選ぶとするなら、やはりロシアの本家からだろう。
ムラビンスキーとレニングラード・フィルによる名盤がある。
実に格調高く、少し変な表現だが真面目な演奏。
恐らくロシアの人はこれを選ぶだろうという歴史的名盤。
こちらは4番~6番までが収録されていて、お得!


2013.05.08 Wed l チャイコフスキー l コメント (2) トラックバック (0) l top