★ ショパン ノクターン作品9 ★

今日は、浅田真央選手の選んだと言うソチ・オリンピック向けの音楽の内ショートプログラム用のショパンを聞くことにした。
浅田選手の選択したのはショパンのノクターンの中でも、メロディラインが美しく最もポピュラーな第2番だ。

ショパンのノクターンは遺作も入れると全部で21曲残されている。
今日はその中で作品9として出版された3曲を聴くとことにした。

〇 作品9 〇
作品9には以下の3曲が含まれている。

第1番変ロ短調作品9-1
第2番変ホ長調作品9-2
第3番ロ長調作品9-3

作品9は1930~32年頃に作曲された曲で、ショパンはワルシャワ音楽院時代に知ったイギリス(アイルランド)のジョン・フィールドのノクターン(夜想曲)に心をうたれて、このジャンルの曲を作曲し始めたという。
この作品9はショパンが20歳頃の初期の作品になるが、後期のノクターンに比べるとフィールドを思わせるシンプルな構成になっている。
左手の分散和音(アルペッジョ)に乗って、右手が美しい歌を歌うという基本パターンだ。
楽曲の形式も、3部形式かロンド形式に近いものが多い。

〇 第1番変ロ短調 〇
この曲は出だしの右手のメロディが極めて美しく、メランコリックだ。
私はライブの演奏を聴きに行くと、恐らくここで呼吸はしていない。
ピアニストの緊張感が伝わるため、たいていの会場のお客さんも呼吸を止めてピアニストを凝視している。
左手の分散和音が聞こえてきて始めて小さく息を吐き出す、という感じだ。
中間部では変ニ長調に転じて、短い経過部を経てニ長調に転調したり表情を変える。
ラルゲットの主部のアルペッジョは引っ張ったままなので、微妙なハーモニーの変化が対比を作っていると思う。

〇 第2番変ホ長調 〇
これが浅田選手のSP演技を支える曲だ。
この4小節のロンド主題はあまりにも有名だ。
左手はワルツを思わせる同型の伴奏で、右手は副主題が入って、この有名な主題を魅力的な装飾音で変化させながら3回繰り返す。
コーダでは、一瞬盛り上がりを示し、そして静かに曲を閉じる・・。

〇 第3番ロ長調 〇
独特の半音階的な動きが印象的な主部を持つ3部形式。
中間部には激しいアジタートを配置して、主部とのみごとな対比を作っている。
ノクターンにおいてもショパンの曲作りが見えてきた気配がする。


<今日の一枚>
現代のアジアの貴公子で行こう、ユンディ・リだ。
実はルイサダを聴こうと思ったのだが、どこを探してもCDが見つからない・・、ユンディも素晴らしいのだ。
2000年のショパンコンクールで第1位となった彼は、今や単なるショパン弾きではなく、ベートーヴェンなどでも優れた技巧と解釈を見せてくれている。
このショパンは比較的オーソドックスにさらっと弾いているのだが、正確なタッチと虚飾を入れない真摯な曲作りは好感が持てると思う。
これは2枚組みの全曲集だ。(21曲全て)
■ショパン:ノクターン全集(通常盤)
 ユンディ・リ(Pf.)

41CEp2Zy6eL__SL500_AA300_.jpg


<推薦盤1>
このノクターンには巨匠ルービンシュタインの歴史的な全集がある。
ショパンのノクターンは、超絶技巧を必要とする曲でもなく、巨匠の指も余裕を見せている。
なんといっても、絶妙のアゴーギクやノクターンを知り尽くしたレガートの入れ方など、さすが巨匠である。
これは、19番までの全集だ。
■ショパン:夜想曲集(全19曲)
 アルトゥール・ルービンシュタイン(Pf.)

31PGGDwlAuL.jpg

スポンサーサイト
2013.10.09 Wed l ショパン l コメント (4) トラックバック (0) l top
★ ショパン ピアノ協奏曲第1番 ★
今日はショパンのピアノ曲の中でも、ある意味で異色な存在であるコンチェルトを聞こう。
異色だと言うのは、この極めてポエティックな作曲家は、バラード、ワルツ、ノクターンといった小曲にこそその天才を発揮したが、大曲は向いていないと思っているからだ。
その意味ではソナタの分野もそうで、例えば有名なピアノソナタ第2番『葬送』にしても、各楽章間の関連性は希薄で、曲全体の構築上の完成度は先輩であるモーツァルトベートーヴェンに及ばないと思う。
だが、そうだとしても、ショパンだけが持っている溢れんばかりの「詩情」は、それを補って余りあるのだ。

〇 第1番と第2番 〇
ショパンの番号付きピアノコンチェルトは 第1番ホ短調Op.11 と 第2番ヘ短調Op.21 があるが、作曲順に言うなら逆で、ヘ短調の方が先に作曲されている。
ショパンは1829年~1830年頃に、まずヘ短調のコンチェルトを完成し、ワルシャワで初演している。
その後すぐにホ短調のコンチェルトに着手し、1830年にはウィーンに旅立つ前に完成させワルシャワで初演を成功させている。
それからパリに出ていく訳だが、ショパンはこのホ短調の方で勝負に出ており、1832年のパリでのデビューをこのコンチェルトで飾り、みごとに好評を得たために目出度く出版の運びとなった。
このように出版の順序がホ短調が先だったためにこちらが第1番となった訳だ。

〇 オーケストレーションの謎 〇
このショパンのコンチェルトには大きな謎が残されている。
ピアノパートをショパンが作曲したことは間違いないのだが、オーケストラパートの方が本当にショパンによるものか、その当時の誰かが替わってオーケストレーションしたものなのか判っていない。
私個人の意見では、誰かは分からないが、第1番と第2番は同一人物がオーケストレーションしているように感じている。
オケの編成が独特で、似ているからということと、ピアノパートとの役割分担というかバランスの特徴に共通項があるからだ。
この点については、ヤン・エキエルが主幹を務めるショパン・ナショナル・エディションによれば、ショパンによるオーケストラパート譜は消失したが、各楽器の詳細を記述したピアノ・スコアが残されており、それによればショパンが意図したオーケストラパートは現在のものとは全く異なるものだったということだ。
この辺、まだ世界レベルでのアグリメントが為されていないので、暫くおいておこう。
取り敢えず、現在録音されている音源を楽しもうではないか。

〇 貧弱なオケ? 〇
さて、誰が書いたかは棚上げにしても、この曲の素晴らしさ故にオーケストレーションの貧弱さが取り沙汰されてきた。
ショパン以外の人物が書いたのかも知れないから、それでいいや、という訳にもいかない。
確かにピアノのゴージャスさに比してオーケストラの厚みが足りない。
それは、物理的に鳴っている楽器が少ないという側面があって、それはある意味仕方がないというか当たり前の話だ。
ブラームスベートーヴェンならばファゴットにホルンを被せに行ったり、オーボエの陰からクラリネットが浮かび上がったりと、楽器間の遣り取りがとても有機的なのだ。
しかも旋律も主役たるピアノの旋律に負けない、魅力的なお化粧や主題展開が必ず為されている。

ショパンの場合は、単一楽器が旋律を支えることが多く、特に管楽器の場合顕著に見える。
だが、そうなってしまう一番判りやすい原因は、やはり「ピアノの頑張りすぎ」なのだと思う。
つまり、ピアノが顔を出すと、主役の座は絶対譲らないぞ!みたいに引くことがない。
分厚いオーケストレーションを繰り広げる協奏曲の場合は、独奏楽器とオーケストラが音のバトンタッチを繰り返すところが楽曲の膨らみを増し、奥行きを広げて行く訳だ。
ショパンの協奏曲は、ピアノが登場するとオケは伴奏に徹すると言ってもいい。
この第1番でも、コンサート会場でオーケストラを見ていると、ピアノが弾き始めると弦のピチカートが目立つ。
そのように、オーケストラは和声と下支えに回る印象が強い。
オーケストラだけの時には、結構鳴るのだが・・・。

ここからは、全くの私の想像なのだが、もしかするとショパンは協奏曲などは本当は書きたくなかったのではないか。
ワルシャワからウィーン、バリと楽壇レビューを模索していたショパンにはその為のツールというか、演奏会用のキラーコンテンツが必要だったのかと想像している。
自分が弾くピアノにスポットライトが当たった煌びやかなコンチェルトが。

これ以降、2度とコンチェルトを書くことが無かったのは、パリデビューが成功した後には本来の得意とするピアノ小品に特化できたから。

〇 詩情溢れるピアノ曲 〇
そのように、現在聞かれるオーケストレーションにはピアノパートに比して多少物足りなさはあるのかも知れないが、繰り返しになるが、それを補って余りある詩情溢れるショパンらしいメロディで満ちている。


【ショパン ワルツ集】
ワルツ集


<今日の一枚>
さて、この協奏曲を誰で聴くかだが、今日はアルゲリッチでいきたい。
アルゲリッチは勿論素晴らしいヴィルトゥオーソなのだが、タッチが必要以上に強すぎて、時としてうるさく感じてしまうことがある。
私には、演奏選択上悩ましいピアニストなのだが、この曲ではとても綺麗なタッチを聞かせてくれる。
元々テクニックは抜群なので、どこかクールに取り組んでいる時の彼女は素晴らしいと思う。
■ショパン:ピアノ協奏曲第1番&第2番
 マルタ・アルゲリッチ(P)クラウディオ・アバド指揮 ロンドン交響楽団 (第1番)
    ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ指揮 ワシントン・ナショナル交響楽団 (第2番)

41RT2BgDnCL__SL500_AA300_.jpg


<推薦盤1>
これは異色のショパンだ。
恐らくツィマーマンは、色々な指揮者と共演してきて、どうしても物足らなさが残っていたのだろう。
遂に、自分の想いをこの記念オーケストラと共に叶えたと言える。
オーケストラは「これが本当にショパンのコンチェルトか?」と疑うほどに歌いまくる。
往年の名指揮者メンゲルベルクでもやらなかった程、弦はポルタメントを思い切りかけてくる。
とてもロマンティックな演奏だ。
ショパン好きなら必聴もののCDだ。
■ショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番
 クリスティアン・ツィマーマン ピアノ・指揮  ポーランド祝祭管弦楽団

61wjbmSl8sL__SL500_AA300_.jpg


2013.06.29 Sat l ショパン l コメント (0) トラックバック (0) l top
★ ショパンのワルツ集 ★
永らく(恐らく1年くらい)ちゃんと聞いていなかったショパンを取り出した。
フレデリック・フランソワ・ショパン、ポーランドが生んだ偉大にして華麗な「ピアノの詩人」ですね。
生涯においてピアノ曲の創作と演奏に特化した、ある意味ちょっと珍しい作曲家だ。
フランス人の父とポーランド人の母の間に生まれた。
この父親がフランス人ということはショパンがパリで活躍する事に良い影響を与えたようだ。
ジョルジュ・サンドとの恋物語など、色々と思い浮かぶことがあるが、ここは久し振りなのだから何を聞くかに思考を集中しよう。(そんな大袈裟なものではないが・・)

〇 ワルツ集 〇
優雅にワルツ集と決定!
さて、ショパンのワルツは全部で19曲残されている。
その内4曲が所謂遺作と呼ばれるもので、ショパンが存命中に出版を認めていなかった曲だ。
ショパンはそういった未承認の物は全て破棄するように望んでいたというが、残念ながら(我々には幸運にも)後の研究者等によって世に出ることとなった。
(少しややこしいが、ショパン存命中に実際に出版されたワルツは8曲だったと思う。残りの6曲は出版予定だったかどうかは調べていない。悪しからず。)
CDなどを見ると、「ワルツ集」と「ワルツ全集」の2種類あることに疑問を持っておられた方もあるかも知れないが、遺作4曲を含む19曲全て収録されたものが「ワルツ全集」で、14曲のものが「ワルツ集」という訳だ。

〇 『華麗なる大円舞曲』 〇
ショパンのワルツ第1番は、その名も『華麗なる大円舞曲』だ。
実はこの「華麗なる~」と題されたワルツは4曲もある。

第1番変ホ長調 作品18 『華麗なる大円舞曲』
第2番変イ長調 作品34の1 『華麗なる円舞曲』
第3番イ短調  作品34の2 『華麗なる円舞曲』
第4番ヘ長調  作品34の3 『華麗なる円舞曲』

〇 『華麗なる大円舞曲』 の聴き比べ 〇
それでは、この有名なワルツを私が所有しているCDで聴き比べてみようと思う。
CDラックを眺めて、チョイスしてみた。

1.ワルツ全集   ヴラディーミル・アシュケナージ 1970~1985年 DECCA
2.ショパン名曲集 アダム・ハラシェヴィチ 1965年 PHILIPS
3.ワルツ全集   ゾルターン・コチシュ 1982年 PHILIPS デジタル ヘンレ版
4.ショパン名曲集 サンソン・フランソワ 1963年 EMI
5.ワルツ集    ディヌ・リパッティ 1950年 EMI


上記のCDで次々と変ホ長調のワルツを聞いていくと、やはりアシュケナージのタッチは一番ソフトだ。
無難というか、あまり好き嫌いが出にくい演奏に思える。
ハラシェヴィチは、あまり逸らず、かと言って言うべきことは言うぞ、みたいな演奏だ。
上手いのだが、しかしCDを通しで聞くと各曲のニュアンスがあまり出切らず、何か一本調子の印象を受ける。 
ハラシェヴィチと言えば、思い出すのはショパンコンクールだ。
第5回ショパンコンクールでアシュケナージやフー・ツォンを向こうに回して、みごとに優勝した。

 <第5回ショパン・コンクール(余談)>
余談だが、この第5回は波乱があった。
優勝がハラシェヴィチ、第2位がアシュケナージ、第3位がフー・ツォン、そして第10位に日本の田中希代子が入ったのだが、そもそも上位10人は大混戦。
審査委員だったミケランジェリは、なんとハラシェヴィチの優勝に猛反対。
アシュケナージの優勝となんとなんと田中希代子の準優勝を主張して椅子を蹴った。
あくまでも私見だが、私はこのミケランジェリの慧眼に敬服している。
 <余談 終り>

おっと、また逸れてしまったぞ。
リパッティはとても良い、高貴な香りのする奇をてらわない演奏だ。
とても上品、だが古い録音なので仕方がないのだが、音が悪い。
フランソワは洒落ている。
ときおり見せるニュアンスは気が利いていて、とても優雅だ。

さあて、どのCDを聞きたいかと問われたとしたらだが、トータルではフランソワだ。
自由奔放の演奏の中に、フランス人特有の洒脱と気軽さみたいなものが滲み出ていて心地よい。
多少BGM的に全集を聞くのにはアシュケナージが最適だ。
ヘッドホンでは音の歪等が気になってだめなのだが、(超高級でない)スピーカーからの音で(神経質にならずに)聴くならリパッティの高貴で秀逸な演奏を選びたい。
あれ?コチシュの話が無いぞ。
コチシュのCDは音がいい。ちょっと珍しいかも知れない、ヘンレ版です。(あまり聞きこめていないので、また今度)


【ショパン ピアノ協奏曲第1番】
ピアノ協奏曲第1番


<今日の一枚>
■ショパン ワルツ全集 ヴラディーミル・アシュケナージ
 この人の名前は、以前はウラディミールと言っていたような気がするが、気のせいか・・。
41B20ZHS3SL__SL500_AA300_.jpg

51FJdoHkABL__SL500_AA300_.jpg






5154HAHEYYL__SL500_AA300_.jpg



5174W7NYqgL__SL500_AA300_.jpg


2013.03.20 Wed l ショパン l コメント (0) トラックバック (0) l top