★ ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第9番『クロイツェル』 ★
今日は久し振りにベートーヴェンのイ長調 作品47 クロイツェルソナタを聞こう。
ベートーヴェンは全部で10曲のヴァイオリンソナタを書いているが、この曲はその9番目に当たるもので、恐らくあらゆるヴァイオリンソナタの中で最も高みに存在していると思うソナタだ。
この曲が作曲されたのは1803年で、青年ベートーヴェンの勢いが曲に反映されているように思う、シンフォニーで言えば2番やあのエロイカが作曲された頃だ。
かと思えば、一方では有名なハイリゲンシュタットの遺書を認めたりしていた時期でもあり、ベートーヴェンの病状は精神状態も含めて、揺れ動いていた頃でもある訳だ。
この曲は実はイギリスのヴァイオリニストであるジョージ・ブリッジタワーの演奏会用に作曲されたようだが、ブリッジタワーがベートーヴェンの知人女性を侮辱?したという事件の為に、急遽フランス人であるルドルフ・クロイツェルに献呈者が変更された。
しかし、当のクロイツェルは「演奏するには難し過ぎる」「既に初演を終えている」などの理由から、決してこの曲を演奏することは無かったようである。
なかなか、うまくいかないものだが、この曲の素晴らしさは後世が認めることになる。
〇 予感の序奏 〇
この第1楽章冒頭、ヴァイオリンの堂々とした重音から始まるのだが、私はこの序奏を聴くと何か只事ではない事が始まるような慄きを感じる。
主調の重厚な和音から始まる序奏を経て、ソナタ形式で書かれた主部はイ短調に転じる。
3拍子のリズミカル(重めの主題だが)な第1主題が呈示されてヴァイオリンとピアノの応酬を経て、ホ長調に転調して穏やかな第2主題が現れる。
コデッタではピアノのテーマの繰り返しにヴァイオリンのピチカートがとても効果的だ。
この辺り、やはり素晴らしいと思う。
ヴァイオリンとピアノの機能的な音の重ね方が実に巧みだ。(当たり前だが・・)
〇 穏やかな第2楽章 〇
変奏曲形式の穏やかな曲調を持つ第2楽章。
かなり長めの主題をヴァイオリンとピアノで交互に或いは協調して、魅力的な変奏曲を作り上げていく。
こういうゆったりした旋律ラインを合わせるのもかなり難しい、演奏者の息の合ったアンサンブルの聞かせどころだ。
〇 タランテラ 〇
終楽章ではタランテラがお目見えする。
主調に戻ったソナタ形式なのだが、メンデルスゾーンのイタリアでもご紹介した舞曲タランテラのリズムだ。
イ長調の主和音がピアノに出て、直ちにヴァイオリンがタランテラのリズムで第1主題を奏でる。
この楽章ではこの主題が支配的なのだが、コデッタでは緩徐的なフレーズを挿入したり、激しいリズムで単調になることを避けている。
この緩急も見事な楽章だ。
<今日の一枚>
このソナタでは私の愛聴盤はフランチェスカッティとカサドシュの盤になる。
このフランス人のコンビは実に格調高く、しかも慈味溢れる演奏を聞かせてくれる。
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタの場合、ピアノは単なる伴奏ではなく、カサドシュが力強いパッセージを聞かせながらとても上品だ。
フランチェスカッティのヴァイオリンは勿論、持ち味の「美音」に加えて、重音の張りのある堂々とした風格やヴァイオリン独特の哀愁を感じる弱音など、非の打ち所が無いと感じている。
こちらは『春』とのカップリング盤だ。
■ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、第9番「クロイツェル」
ジノ・フランチェスカッティ(Vn.) ロベール・カサドシュ(Pf.)

<推薦盤1>
私のイチオシは上記のフランチェスカッティ&カサドシュ盤だが、さらに挙げるとしたらクレーメル&アルゲリッチだろう。
クレーメルとアルゲリッチの雄弁さが、大変な緊張感の中で、スケール大きくベートーヴェンを語る。
中でもアルゲリッチの存在感の大きさを感じる盤だ。
こちらも『春』とのカップリング。
■ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、第9番「クロイツェル」
ギドン・クレーメル(Vn.) マルタ・アルゲリッチ(Pf.)

今日は久し振りにベートーヴェンのイ長調 作品47 クロイツェルソナタを聞こう。
ベートーヴェンは全部で10曲のヴァイオリンソナタを書いているが、この曲はその9番目に当たるもので、恐らくあらゆるヴァイオリンソナタの中で最も高みに存在していると思うソナタだ。
この曲が作曲されたのは1803年で、青年ベートーヴェンの勢いが曲に反映されているように思う、シンフォニーで言えば2番やあのエロイカが作曲された頃だ。
かと思えば、一方では有名なハイリゲンシュタットの遺書を認めたりしていた時期でもあり、ベートーヴェンの病状は精神状態も含めて、揺れ動いていた頃でもある訳だ。
この曲は実はイギリスのヴァイオリニストであるジョージ・ブリッジタワーの演奏会用に作曲されたようだが、ブリッジタワーがベートーヴェンの知人女性を侮辱?したという事件の為に、急遽フランス人であるルドルフ・クロイツェルに献呈者が変更された。
しかし、当のクロイツェルは「演奏するには難し過ぎる」「既に初演を終えている」などの理由から、決してこの曲を演奏することは無かったようである。
なかなか、うまくいかないものだが、この曲の素晴らしさは後世が認めることになる。
〇 予感の序奏 〇
この第1楽章冒頭、ヴァイオリンの堂々とした重音から始まるのだが、私はこの序奏を聴くと何か只事ではない事が始まるような慄きを感じる。
主調の重厚な和音から始まる序奏を経て、ソナタ形式で書かれた主部はイ短調に転じる。
3拍子のリズミカル(重めの主題だが)な第1主題が呈示されてヴァイオリンとピアノの応酬を経て、ホ長調に転調して穏やかな第2主題が現れる。
コデッタではピアノのテーマの繰り返しにヴァイオリンのピチカートがとても効果的だ。
この辺り、やはり素晴らしいと思う。
ヴァイオリンとピアノの機能的な音の重ね方が実に巧みだ。(当たり前だが・・)
〇 穏やかな第2楽章 〇
変奏曲形式の穏やかな曲調を持つ第2楽章。
かなり長めの主題をヴァイオリンとピアノで交互に或いは協調して、魅力的な変奏曲を作り上げていく。
こういうゆったりした旋律ラインを合わせるのもかなり難しい、演奏者の息の合ったアンサンブルの聞かせどころだ。
〇 タランテラ 〇
終楽章ではタランテラがお目見えする。
主調に戻ったソナタ形式なのだが、メンデルスゾーンのイタリアでもご紹介した舞曲タランテラのリズムだ。
イ長調の主和音がピアノに出て、直ちにヴァイオリンがタランテラのリズムで第1主題を奏でる。
この楽章ではこの主題が支配的なのだが、コデッタでは緩徐的なフレーズを挿入したり、激しいリズムで単調になることを避けている。
この緩急も見事な楽章だ。
<今日の一枚>
このソナタでは私の愛聴盤はフランチェスカッティとカサドシュの盤になる。
このフランス人のコンビは実に格調高く、しかも慈味溢れる演奏を聞かせてくれる。
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタの場合、ピアノは単なる伴奏ではなく、カサドシュが力強いパッセージを聞かせながらとても上品だ。
フランチェスカッティのヴァイオリンは勿論、持ち味の「美音」に加えて、重音の張りのある堂々とした風格やヴァイオリン独特の哀愁を感じる弱音など、非の打ち所が無いと感じている。
こちらは『春』とのカップリング盤だ。
■ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、第9番「クロイツェル」
ジノ・フランチェスカッティ(Vn.) ロベール・カサドシュ(Pf.)

<推薦盤1>
私のイチオシは上記のフランチェスカッティ&カサドシュ盤だが、さらに挙げるとしたらクレーメル&アルゲリッチだろう。
クレーメルとアルゲリッチの雄弁さが、大変な緊張感の中で、スケール大きくベートーヴェンを語る。
中でもアルゲリッチの存在感の大きさを感じる盤だ。
こちらも『春』とのカップリング。
■ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、第9番「クロイツェル」
ギドン・クレーメル(Vn.) マルタ・アルゲリッチ(Pf.)

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クロイツェルソナタ、40分ほどありますがヴァイオリン・ソナタに
不慣れな私でも退屈するところなど全くありません。良い曲ですね。
私は沙矢香&カシオーリの名コンビで聴きました。
瑞々しい、生き生きとした名演奏だと思いました。
コメントありがとうございます。(^^)
そうですね、以前の記事でakifuyu102 さんは、沙矢香&カシオーリさん
のコンビで7番、8番のソナタに触れておられましたよね。
確かに、新鮮で美しいクロイツェルだったと、私も思います。
はい、曲の長さをあまり感じさせない名曲ですね。
聴き始めると中断できない、というのが名曲の証なんだと思います。(^^)
この曲は演奏者によって
違いがはっきり出るところが、
とてもおもしろいと感じています。
日頃はパールマンと庄司さんという
正反対のタイプをその日の気分で
チョイスしています。
コメントありがとうございます。(^^)
なるほど、演奏者、それも組み合わせによって
全く違う演奏になってしまうことってありますね。
その違いを楽しむ、という「聴き方」には賛成です。(^^)
今年は度々のブログ訪問ありがとうございました
楽しく記事を拝見しCDを買うときに大いに参考にさせていただいています
どうぞ良いお年をお迎えください
来年もよろしくお願いします
コメントを頂きまして、ありがとうございます。
こちらこそ、私の小ブログへご訪問頂きましてありとうございます。
水嶋さまは彫刻家でいらっしゃるのですよね。
公開されている、パステル画や水彩画をいつも鑑賞させて頂いています。
私は絵を描けば三歳児並ですし、全く素養を持ち合わせておりませんが
水嶋さまの絵を拝見していると、心穏やかになります。
仕事中にも時々「いいなぁ」と見入っているときがあります。
水嶋さまも、どうぞ良いお年をお迎え下さい。
ありがとうございました、来年も宜しくお願い致します。